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From 首相官邸ホームページ

安倍政権は早くも参院選モード~最後の切り札は日銀サプライズ緩和か?

安倍政権はいよいよ来年7月の参議院選挙をにらんだ政策展開を始めました。政策の選択基準は、経済成果よりも、選挙での与党勝利につながるかどうかが最優先されます。このところの一連の動きは、まさにその基準で評価できるものばかりです。(『マンさんの経済あらかると』)

始まった参院選モード。日銀のサプライズ緩和期待が再燃

すべては選挙のために

まず、消費税引き上げ時の軽減税率です。財務省(谷垣幹事長)の抑制案対、公明党の広範な軽減策との対立構図だったのですが、最後は官邸が公明党、創価学会の選挙協力を優先して、公明党案をとりました。

軽減税率による税収の減少は1兆円前後に拡大しますが、場合によっては赤字国債の発行も視野に入っているようです。

この問題、当初は財務省主導で、「金食い虫」の公明党を切り、その穴を橋下氏の大阪維新の会で埋める構想もありました。

これは、野党連合の動きを警戒して維新を分裂させる意図と、橋下グループの利用との一石二鳥で、同時に民主党に対しても岡田執行部と前原氏らの対立をあおり、民主党も分解しようと画策していました。

ひところ、谷垣氏の口から、衆参ダブル選挙の可能性も排除せず、との発言があり、ダブル選挙の思惑が高まりましたが、この裏には、ダブル選挙を嫌がる公明党への揺さぶり、軽減税率での妥協への期待がありました。

結局、官邸が選挙では公明党の協力が必要との判断で、谷垣・財務省連合は敗れました。もっとも、ダブル選挙の可能性はゼロになったわけではありません。

沖縄にディズニー誘致/企業を優遇しつつ、低所得者にも好い顔

次に、沖縄宜野湾にディズニーランドの誘致を進める話が急浮上しました。年明けの沖縄での選挙もあり、自民党への逆風を少しでも和らげようとの、痛々しいまでの努力で、これも選挙対策以外の何物でもありません。

また、法人税減税、最低賃金引き上げ、低所得年金受給者への3万円給付なども選挙を意識したものです。

安倍政権になってから企業利益は最高益を更新していますが、家計の取り分はむしろ縮小しています。このため、引き続き企業を優遇しつつ、低所得者にも好い顔をして票をとりたい、ということのようです。

実際、安倍政権になって以降、企業は利益を拡大しましたが、その結果は、利益剰余金(内部留保)が12年10-12月の274兆円から今年7-9月の341兆円に67兆円も増えたのに対し、人件費は当時の44兆円から今年7-9月には42兆円に減っています。

このアンバランスを穴埋めしようと、弱者への再配分で得点しようとしています。

Next: 自民党の「再配分」がウラ目に?/最後の手段は日銀追加緩和か



ウラ目に出るかもしれない自民党の「再配分」政策

しかし、これらには副作用もあり、必ずしも自民党の得票に結びつくかわかりません。例えば、法人税減税の財源確保のために、赤字企業からも税金をとる外形標準課税の強化を考えています。

このメリットを受ける企業は納税している企業で、全体の3分の1にすぎず、逆に7割の赤字企業は増税になり、自民党に反発します。

さらに、最低賃金を今の時給800円弱から毎年3%引き上げ1000円にしたいと言いますが、低賃金労働者には朗報であっても、最低賃金でしか雇えない中小零細企業には死活問題です。

外形標準課税でとられ、最低賃金を引き上げられれば、赤字で辛うじて生き延びる企業は廃業を余儀なくされます。彼らの多くは自民党支持でした。

日銀のサプライズ緩和期待が再燃

先週、日銀の黒田総裁はパリに出張し、あわせて通貨マフィアの会合ともいわれるG30にも出席したようです。ここでしばしば金融政策への要請がくるのですが、一部にここで追加緩和の要請があったとの見方があります。

FRBの利上げに対する後始末かもしれませんが、選挙前に株価を上げておきたい政府も、円安に目をつむる可能性があります。

これまでワシントン、永田町ともにドル高、円安を嫌がって日銀の動きを封印していた面があり、市場の期待もしぼんできました。ところが、G30が動き、官邸も参院選を前に株を上げておきたいとすれば、近いうちに日銀がサプライズの追加緩和を打ち出す可能性が浮上したことになります。

その場合、短期的には円安株高となる可能性があります。

もっとも、選挙を意識して後先を考えずに動けば、その反作用、副作用がいずれ出てきます。選挙前に無理をすれば、選挙後の相場反落が大きくなります。なんでも先取りする時代ゆえに、これらのタイミングがより前倒しになって表れる可能性もあります。

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マンさんの経済あらかると』(2015年12月14日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

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