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2015年の金融市場を振り返って/先週の動きと今週の予想=久保田博幸

2015年の金融市場では、ギリシャ債務問題、中国の人民元切り下げ、米国の利上げなど様々なイベントがありました。中でも大きな注目材料は、日米欧の金融政策の方向性の違いではなかったでしょうか?『牛熊ウイークリー』を配信する金融アナリストの久保田博幸氏が解説します。

日米欧の金融政策の違いが鮮明に~2015年の金融市場振り返り

ギリシャ、中国、ECB、FRB、そして日銀――

2015年の金融市場を振り返ってみたい。

2015年の金融市場を巡る大きな注目材料となったのは日米欧の金融政策の方向性の違いではなかったろうか。ECBは1月22日の理事会で量的緩和の導入を決定した。このECBの追加緩和期待により1月20日に5年債利回りは一時マイナスとなり、10年債は0.195%まで低下した。

その後、ギリシャの債務問題を巡る警戒感が強まり、一時ギリシャのデフォルト懸念が強まった。

しかし、7月にギリシャ議会は金融支援の条件となる財政改革法案を賛成多数で可決したことなどから、デフォルトの懸念は次第に後退した。市場の視線はギリシャから今度は中国に向けられた。

8月11日に中国人民銀行は人民元取引の目安となる基準値の算出方法を変更し、事実上の人民元の切り下げを行った。中国経済の減速が意識されて市場は再びリスクオフの動きを強めた。これは人民元ショックとも称された。中国経済の減速は原油需要の後退も意識され、原油価格の下落基調も強まった。

そんななかにあって、もうひとつの市場の焦点がFRBの正常化、つまり利上げの時期となった。9月のFOMCでの利上げ観測があったものの、人民元ショックにより先送りされたとの見方も強かった。

しかし、かなり時間を掛けることで、FRBは9月ではなく12月に標準を合わせていた可能性がある。

10月にはECBのドラギ総裁が年内の追加緩和を示唆し、中国人民銀行が政策金利と預金準備率の引き下げを発表した。あらためて12月に向けて日米欧を中心とした金融政策に焦点が集まった。

日銀に関しても4月や10月の決定会合などを中心に一部に追加緩和期待も出ていたが日銀に動きはなかった

FOMCの前にECBは追加の緩和策を決定し、預金金利をマイナス0.3%とし債券購入の期間を2017年3月まで延長する方針を示した。ところが市場はこれを受けて期待外れとして株も債券も下落した。

12月16日のFOMCでは予想通りに0.25%の利上げを決定したが、市場はほぼ織り込み済みとなり影響は限定的となった。さらに日銀は18日の決定会合で異次元緩和の補完措置を決定したが、これを受けて東京株式市場は乱高下した。

12月の日米欧の金融政策の変更もしくは微調整による市場の反応を見ると、追加緩和に期待するだけのような市場から変化が現れているようにも思えた。

原油価格は下落基調を続け、WTI先物は12月に入り35ドルを割り込んだ。原油価格の下落とそれによる新興国経済への影響なども懸念材料となった。

Next: 先週の動きと今週の予想/国内投資家の外債購入はピークアウトの可能性も



国内投資家の外債購入はピークアウトの可能性も

■先週の動き

18日の米国株式市場は原油安などから大幅続落となり、ダウ平均は367ドルもの下げとなった。

米債やドイツ国債は買われていたが、21日の債券先物は上値が重く、149円割れに。

債券先物の引けは8銭安の148円98銭、ただし、超長期債は買われ、20年債は一時1月27日以来の1%割れとなった。

21日のWTI先物は一時34ドル割れとなったが、ダウ平均は123ドル高としっかり。22日の2年国債入札では落札利回りは過去最低を更新。この日の債券先物は上値が重く、引けは1銭安の148円97銭となった。

22日から23日にかけて、原油先物は上昇し、ダウ平均も大幅続伸。米債券は原油高や株高が意識されて下落し、米10年債利回りは23日に2.26%に上昇した。24日の債券先物は5銭安の148円92銭で寄り付いたが、方向感に乏しい展開となり、引けも148円92銭。

この日に来年度予算案が閣議決定されたことで、来年度の国債発行計画も発表された。内容はほぼ予想されたものとなり、市場への影響は限定的となった。東京株式市場は買いが先行し、日経平均は19000円台を一時回復した。

25日の朝方発表された11月のコアCPIは前年同月比0.1%上昇と5か月ぶりのプラスとなった。しかし、市場への影響は限定的。25日の東京市場はクリスマスということもあり、債券・株ともに閑散小動きとなり、債券先物の引けは1銭高の148円93銭となった。

■今週の予想

28日から、大納会となる30日にかけては大きなイベントもなく、東京市場は年末モードを強めることが予想される。経済指標としては28日に11月鉱工業生産速報値の発表が予定されている。

日本が年末年始の間の海外市場の動向と新年を迎えてからの相場が注目される。ここにきてドル円の上値が重くなっている。日銀とFRBの金融政策の方向性よりも、国内投資家の外債購入がピークアウトした可能性もあり、日本の経常収支の黒字も意識されて、円高ドル安がさらに進む可能性がある。年末年始は為替の振れが大きくなることもあり、注意したい。

2016年の金融市場動向を見る上で注目すべきは、市場の金融政策に対する感応度の変化である。

日銀やECBの追加緩和に対して手詰まり感が出ていることもあり、FRBの正常化が今後も順調に行くとなれば、日銀やECBの極端な緩和政策からの出口政策も意識される可能性がある。

日銀は2016年度の長期国債発行額の100%近くを買い上げる予定であるが、債券市場の流動性低下などによるリスクも意識しておく必要がある。

国債入札は1月5日の10年国債、7日の30年国債が予定され、その結果も確認したい。

1月8日に初めて発表される12月の日銀金融政策決定会合の「主な意見」も確認しておきたい。

特に補完措置に反対した3名の意見にも注目したい。

■主な予定

12月28日 (月)
11月鉱工業生産速報値

12月29日(火)
10月米S&P/ケース・シラー住宅価格指数
12月米消費者信頼感指数

12月30日(水)
日銀、基調的なインフレ率を捕捉するための指標

12月31日(木)
米新規失業保険申請件数
12月米シカゴ購買部協会景気指数

1月4日 (月)
12月ISM製造業景況指数
11月米建設支出
12月ドイツの消費者物価指数
12月ユーロ圏製造業購買担当者景気指数

1月5日(火)
10年利付国債入札
12月マネタリーベース
ユーロ圏12月消費者物価指数

1月6日(水)
12月ADP雇用統計
12月ISM非製造業景況指数
11月製造業新規受注
FOMC議事要旨

1月7日(木)
30年利付国債入札
国庫短期証券(3か月物)入札
12月ユーロ圏消費者信頼感
米新規失業保険申請件数

1月8日(金)
日銀12月の決定会合「主な意見」
国庫短期証券(6か月物)入札
11月毎月勤労統計調査-現金給与総額
11月景気動向指数
11月ドイツ鉱工業生産
12月米雇用統計
11月米消費者信用残高

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牛熊ウイークリー』(2015年12月25日号)より一部抜粋
※見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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