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高橋洋一氏「日本の借金1000兆円はやっぱりウソでした」論は本当か?=吉田繁治

昨年末に読者の方からメールで、「『日本の借金1000兆円』はやっぱりウソでした~それどころか…なんと2016年、財政再建は実質完了してしまう! この国のバランスシートを徹底分析」という元財務省の高橋洋一氏(以下T氏)の記事がツイッターで回ってきて、それを読むと反論が難しそうですが、これは本当のことですか」という問い合わせが10通くらい来ました。

背後には、その100倍(つまり1000人余)の方が、同時に、同じ疑問を持たれていると推察しています。

リフレ派のエコノミストは、T氏と同じようなことを言うので、実際はもっと多くの人が同じ疑問をもっていて、「何かが違うような気がするが(直観)、反論ができない(論理)」という思いをされているに違いない。この変だなと思う直観は、実は正しい。しかし、どこがおかしいかを論理的に示すには、経済学的なイマジネーションが必要です。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

T氏の「2016年、財政再建は実質完了する」が偽説である理由

1.政府の資産は、どれくらい利用できるのか

■質問

財務省が2014年3月時点として集計した「国の貸借対照表(B/S)」では、確かに、中央政府の総負債は1143兆円です。資産は652兆円とされています。つまり純債務(資産の引き当てがない債務超過)は491兆円です。日本政府には、他国より大きな資産があります。
平成25年度「国の財務書類」の貸借対照表の概要 – 財務省

491兆円と言えば、GDP(500兆円:15.08)の98%です。これなら、他国に比べ突出して多い(GDPの2倍以上)とは言えません。日本政府の負債は資産も多いので問題がないという人がT氏を筆頭におられますが、この点についてはいかがでしょうか。

■答え

債務超過を問題にするときの前提

ここで問題にしているのは、

ということでしょう。

【有効な資産という観点】
土地や不動産などの固定資産や出資金が相当にあっても、換金できないもの、あるいは換金すれば価値が大きく減るものが多ければ、資金繰りには有効ではなく、破産しやすい債務超過ということになります。資産は売る時の時価で見なければならないのです。

【事例】
事例で言います。ある会社が、主な資産として100億円で買った土地をもつとします。負債は、土地を買った時に借りた70億円です。B/S(貸借対照表)では「資産100億円─負債70億円=30億円のプラス」です。ところがその土地を売れば、20億円でしか買う人はいな
いとします。実質では50億円の債務超過です。銀行の担保評価も、時価の20億円でしかない。バブル期にこうした会社が多く出ました。

この会社は、簿価上の資産はプラスでも破産するかのかどうか。B/Sでは、(売れる資産価格の)実質では50億円の債務超過で、破産しています。

しかし、破産しない場合もあります。会社が例えば、インターネット事業で年間に10億円の利益を出し、これからも同じ利益を出すと見込まれているときです。

こうした場合、将来の利益を信用して、借入金の返済に必要な資金(年間10億円)を追い貸しする銀行が出ますから、破産しない。

もしその会社の事業が赤字か、利益が少ないなら、銀行は50億円の債務超過に不安を感じるため、どこも約定返済(例えば年間10億円)の借り替えには応じず、返済資金が足りなくなって破産します。

【重要な点はここ】
以上のような事例から、政府のB/S(貸借対照表)で重要になるのは2点と言えます。

  1. 資産の中で、売ることができるものの金額はいくらか
  2. 政府の財政赤字(35~40兆円/年)は将来縮小するのか、維持されるのか、拡大し続けるのか

政府が、将来、破産するかどうかで重要なのは、B/Sの債務超過より、財政赤字の今後の見通しです。以上のような前提を念頭に置き、以下を読んください。

まず、政府の負債1143兆円

政府の負債1143兆円は、すべてが換金性の返済と利払いが必要な負債です。以下の内容です(15.03.31:財務省)。
平成25年度「国の財務書類」のポイント – 財務省主計局[PDF]

政府短期証券 102兆円(財務省が外貨を買ったときの負債)
公債 856兆円(財政赤字で増えてきた国債の残高)
借入金 28兆円(政府の短期借入金)
年金預り金 112兆円(国民年金と厚生年金の預り金)
未払い金等 11兆円(経過勘定)
その他負債 34兆円
政府負債計 1143兆円(2014年3月31日時点)

この1143兆円の政府負債は、年間平均で31兆円の増加傾向と判断しておいていいものです。2009年1019兆円、2010年1013兆円、2011年1088兆円、2012年1117兆円、2013年1143兆円と推移しています。

以上の負債は、全部、時期が来れば支払う必要がある負債です。

政府短期証券の102兆円は、財務省が、銀行から外貨(主は米ドル、2番目がユーロ)を買いあげたときの、日銀と銀行への借入金です。財務省はこれを「外貨準備」にしています。
(※注)資産では、「有価省証券129兆円」に該当します

公的年金の預り金(112兆円)は、国民年金(基礎年金と言う)と、基礎年金に対して2階部分になる厚生年金(個人と会社が50%ずつ保険料を負担)の保険料として、国民が払ってきた、月々の掛け金からの預り金です。
(※注)資産では、運用預託金の138兆円に該当します

Next: 政府の資産653兆円(14.03.31時点)を換金性で評価すると?



次は、資産653兆円(14.03.31時点)を換金性で評価する
現金・預金 19兆円(換金性あり)
有価証券 129兆円(外貨準備:換金性あり)
貸付金 138兆円(独立行政法人等:若干の換金性)
運用預託金 105兆円(年金基金の運用:換金性あり)
出資金 66兆円(独立行政法人等:換金性あり)
有形固定資産 178兆円(換金性はほとんどない)
その他資産 17兆円(換金性あり)
政府管理の資産計 653兆円
換金性資産 475兆円(固定資産を除いた換金性の資産)
換金性負債 1143兆円(ほぼ全部の負債が換金性あり)
債務超過 668兆円(換金性で見た債務超過額)

政府や公団が管理している有形固定資産は、河川工事、道路、橋、トンネルが多く、ほとんどのものに換金性がありません。

河川工事に公共事業費が使われていても、その利根川や信濃川を買って事業に使う企業はない。道路や山林も同じで、有料化して民営にするのは無理です。省庁の建物や公共施設も同じでしょう。

以上から、いざというとき換金できる政府の資産は、475兆円です。満期には払う必要がある負債は1143兆円です。ここから、換金性の観点での政府の債務超過は、668兆円と見積もられます。
(注)財務省が作ったB/Sの債務超過は490兆円(14.03.31)とされています。ここでの計算では、換金性ない有形固定資産の分(178兆円)が膨らんで、債務超過は668兆円です。GDP(500兆円)分の1.33倍です。

GDPの1.33年分の債務超過668兆円と言っても、それが将来の財政破産という観点で意味を持つものではありません。肝心なことは、この純債務が今後大きく膨らむのか、減少するのか、です。

2009年から2013年度までのこの純債務の増加は124兆円(1019兆円→1143兆円)です。年間の純債務の増加は、年平均で31兆円です。

【分岐点】
(1)財政破産が起こらないとき
純債務の増加年31兆円が、25兆円、20兆円、15兆円、10兆円……年5兆円(GDPの1%程度)と減って行くか、それ以上の傾向で減って行くと認識されれば、国債の金利高騰からの財政破産は起こらないでしょう。

現在の債務超過の金額は、国債を買う金融市場に受け入れられた結果です。その金額が多いかどうか。世界一多くても、国債の金利高騰がなく、乗り越えられています。

問題になるのは過去ではない。将来の純債務の増え方です。

(2)財政破産になるとき
年間純債務31兆円が同じか、5兆円ずつ増えるというように金融市場で認識されると、国債リスクの観点から、国債の金利が上がって行き、いずれ国債の金利高騰が起こる時が来て、財政破産します。

この時期はいつか? 次に述べる将来のインフレ率と関係します。インフレ率は、人々が債券に要求する期待金利を上げるからです。
(※注)結論を言うと、2018年ころからは危なくなるでしょう

【注記事項】
・普通の時期の国債の理論金利=実質GDPの期待成長率+期待インフレ率
・財政危機が認識されたときの国債の理論金利=実質GDPの期待成長率+期待インフレ率+リスク率

リスク率は、回収を保証する保険(CDS)の料率に相当するものです。2010年のギリシア危機のとき、ギリシア債にかかったCDSは最大70%、スペイン債では7%、ポルトガル債7%、イタリア債7%に高騰しました。2015年12月現在、ギリシア債のCDSは10.8%くらいです。

Next: 2.日銀が国債を買えば、その分、政府の債務は減るのか?



2.日銀が国債を買えば、その分、政府の債務は減るのか

■質問

T氏は、15年12月28日の記事で、日銀が国債を買った分、政府の債務は減ると言っています。他のリフレ派のエコノミストにも、H氏などを代表に、同じことを言う人が多い。

日銀が国債を買えば、その分、政府の債務は減ったと見ていいのでしょうか?ここが分からない。常識で言えば変ですが、著名なエコノミストも言っています。

もしそれが正しいなら、1000兆円の国債を日銀が買ってしまえば、政府の債務はゼロになります。政府は税金を全廃でき、代わりに国債を発行して日銀に買ってもらえばいいことにもなるでしょう。日本も世界も無税国家になりえます。これはすごいことになりますけれど?

■答え

日銀が国債を買うことによって、国債残高が減ると言うのは、日銀と政府を連結で見た「統合政府」を想定したときです。

マクロ経済学の教科書にもあるのがこの統合政府という考え方です。日銀を政府の子会社として考えると、統合政府になります。

【政府の、国債発行に関するB/S】

借方(資産) 貸方(負債)
累積財政赤字 1000兆円 国債発行残高 1000兆円

これが、政府の累積財政赤字に該当する部分の、政府B/Sです。

【日銀の国債保有は328兆円です(15.12.22)】

借方(資産) 貸方(負債)
国債保有 328兆円 発行銀行券 96兆円
当座預金 247兆円

これが、日銀の、国債保有に関する部分のB/Sです。国債だけに関するB/Sでは、若干の、資産・負債の差異が出ます。
営業毎旬報告(平成27年12月20日現在) – 日本銀行

発行銀行券(96兆円)は、日銀が発行した96億枚の1万円札です。当座預金(247兆円)は、国債を買った日銀が、それを売った銀行が日銀にもつ当座預金に代金を振り込んだものの合計です。

2008年のリーマン危機以降の日銀は、FRBをまねて、この当座預金に0.1%の特別金利をつけて、預かっています。

【統合政府:政府の国債に関するB/Sと、日銀のB/Sの連結】

借方(資産) 貸方(負債)
財政赤字 1000兆円 発行銀行券 96兆円
当座預金 247兆円
国債発行 657兆円

政府と日銀を連結にすると、日銀がもつ政府負債の国債343兆円(実際は328兆円)は、日銀がもつ日銀資産の国債333兆円と相殺されると見ることができます。

日銀がもつ国債は343兆円あるのですが、統合政府として見れば、この343兆円は部門間の貸し借りの内部取引になって、相殺されます。

この結果、発行銀行券の96兆円、当座預金247兆円、そして日銀以外の金融機関がもつ国債657兆円(海外は100兆円)になるのです。

343兆円の国債は、「統合政府」では、発行銀行券の96兆円、当座預金247兆円に代わっています。このため、343兆円の国債がなくなって、償還と利払いの要らない現金と当座預金(普通は金利ゼロ)になったように見えるのです。

T氏は、以上のことを

  1. 日銀が国債を買えば、その分、国債は減る。日銀が買った国債は、現金と当座預金に振り替わるが、現金と当座預金は利払いも返済も要らない負債である
  2. 日銀が買った国債分は、「国債が減った」と見なしていい

といっています。これは、この通りです。しかし、以下で重要なことを言います。

インフレにならない限りは、T氏の立論は正しい

インフレならない限り、日銀は、毎年80兆円の国債を買い増す異次元緩和を続けると言っています。インフレ率が2%以下の状態が2018年まで続いたとすれば、統合政府のB/Sは、以下になるでしょう。
(※注)政府の国債の新規増発が35兆円/年、日銀が買いとるのを年80兆円とします。これから3年分は、この3倍です。現金需要の増加は少ないので、現在の96兆円と同じとします。

【2018年末の、統合政府のB/S(想定)】

借方(資産) 貸方(負債)
国債発行 1105兆円 発行銀行券 96兆円
当座預金 487兆円
国債発行 522兆円

日銀がもつ国債は、327兆円から567兆円(発行高の51%)に増えます。このため、金融機関が預ける当座預金の残高が487兆円と、2015年12月22日より、240兆円(80兆円×23年分)膨らみます。

日銀以外の金融機関がもつ国債は522兆円になって、現在(657兆円)より、135兆円も減ります。日銀が1年に80兆円買って、金融機関がもっていた国債を「買い剥(は)がした」からです。

このときは、国債の金利は、10年ものものも、マイナスになっているでしょう。国債の金利がマイナスとは、発行額面100万円の新規債を、日銀が(例えば)、101万円で買うということです。このとき、政府から100万円の発行価格で買った銀行は、右から左に日銀に売れば、1万円の利益が1日で出ます。

わが国が2%のインフレにならない限り、日銀が国債の買いを増やすと、その分政府の発行国債は減って、現金と当座預金に振り替わります。

以上のように、「当座預金に振り替わる」という意味では、T氏が言った「日銀が国債を買い増せば、政府の借金は減ったようになる」というのは正しい。

このため、財政破産はありえないと言うのが、T氏とリフレ派です。ところが日銀が国債を買い増しても、政府の財政破産はあり得るのです。それは、異次元緩和の目的であるインフレになったときです。

2%から3%くらいのインフレになると、日銀が買って金利ゼロの当座預金になっていた国債は、再び、金利のつく国債に戻らねばならなくなるからです。といっても、分かりにくいでしょう。以下で説明します。

今のところ、こうした論評は見当たりません。このためT氏が、「偽説を言いまくっている」ように思えます。反論する人がいないからです。当方がここで反論します。

Next: 3.異次元緩和から5年後の2018年、インフレ率が2%を超え3%に上がったら?



3.異次元緩和から5年後の2018年、インフレ率が2%を超え3%に上がったとする

■質問

T氏は、日銀が国債を買えば、その分政府の負債は減るから、財政破産はあり得ないと言っています。これは正しいでしょうか?

■答え

端的に言って誤りです。T氏の偽説は、異次元緩和が消費者物価を2%上げるという目標を、2年遅れくらいで達成したとき、誰の目にも明らかになります。

消費者物価の上昇が2%になることが定着してくると、人々の期待インフレ率が2%に上がってきます。

期待インフレ率は、期待金利を上げるように働くのです。「理論的な期待金利=期待実質GDP上昇率+期待物価上昇率」です。

人々の予想が、

という予想に変わっていくと、理論的な期待金利が、「1%+2%=3%付近」に上がってきます。

例えば米国では、インフレ率は2010年が1.6%、2011年3.1%、2013年が1.5%、2014年が1.6%でした(年平均)。2015年は、原油価格のの下落から、0.09%に下がっています(10月時点)。
アメリカのインフレ率の推移 – 世界経済のネタ帳

それに対応する長期金利(10年債の利回り)は、2010年平均3%、2011年2%、2013年3%、2014年2%付近です。長期金利と期待インフレ率は、ほぼ比例しています。期待物価上昇率は、長期金利の原因になるものです。
(※注)現在の日本では、消費者物価上昇も0%、長期金利0.27%です(15年12月)。消費税の増税後(14年4月~)の物価の上昇率の低下ともに期待物価上昇率も下がり、同時に長期金利も0.50%(15年6月)から0.27%に下がっています。日本の物価も、インフレ目標を達成して2%や3%上がるようになると、期待金利も2%には上がります

2018年度末時点では、0.1%しか利回りがない日銀の当座預金に487兆円も置いている金融機関は、期待金利が2%に上がった時、このまま置いておくことはできません。日銀から国債を買って、自行が預けている当座預金を減らす必要が出てくるのです。銀行が預かる預金金利も上がり、資金需要が増えて貸出の金利も上がるからです。

期待物価上昇が2%になると、日本も「流動性の罠」から脱出して、米国のように「貨幣数量説」が復活します。
(※注)貨幣数量説とは、〔M(マネーサプライ量)×V(流通速度)=P(物価水準)×T(実質GDP)〕です。インフレになって金利が、ゼロを脱すると、このように、マネーサプライの増加が、物価とGDPを上げるようになります。これが貨幣数量説の復活です

このとき日銀は、

いずれかをを迫られます。つまり日銀は量的緩和を停止し、出口政策に向かわねばならない時期に至るのです。

日銀が国債を売ると、国債は下落し利回りは上がります。そのときの期待物価上昇率が2%付近なら、国債の利回りも2%近傍になるように上がるのです。この時は、日銀が金融機関に国債を売りますから、以下の、日銀が100兆円の国債を売ったときの取引が行われます。

Next: 4.日銀が、保有国債を100兆円金融機関に売ったときのB/Sは?



4.日銀が、保有国債を100兆円金融機関に売ったときのB/S

借方(資産) 貸方(負債)
当座預金減少 100兆円 国債売却 100兆円

日銀が買ってきた国債を金融機関に100兆円売って、金融機関が所有する当座預金から100兆円のマネーを吸収する取引です。

これは、マネタリーベースを減らすマネー量の引き締めになります。このため利上げをしたかのように、金利が上がります。国債の流通価格は下がります。金利を下げて、国債価格を上げてきた量的緩和の逆です。

【金融機関がもつ国債が減っていた時】
日銀が異次元緩和で1年に80兆円も金融機関から国債を買いあげているときは、政府の新規国債の発行は35兆円/年くらいなので、金融機関がもつ国債は、日銀が買いあげた分減ったように見えていました。金融機関の保有国債は、1年に45兆円の割合で減っていたからです。

以上が、T氏が「日銀が国債を買いあげると、政府の国債発行は、日銀と連結した『統合政府』で見れば減ったようになる」と言っていることの正体です。
(※注)実際には、政府の国債発行は減っていません。政府部門と見ることができる日銀の保有が増えて、金融機関の保有が減っていただけです

【金融機関がもつ国債が再び増えるとき】
物価が上がり、期待金利が上がってくると、日銀は、出口政策をとらねばならなくなります。出口政策をとらないと、インフレが昂進し、ますます市場の期待金利は上がり、円も下落し、国債の流通価格が下落するからです。

出口政策とは、上記の振替伝票(日銀が国債を売るときのB/S)で示したように、日銀が金融機関から買いあげてきた国債を売って、当座預金を減らすことになります。

このとき、日銀が金融機関に国債を売った分、金融機関の保有国債は増えます。国債という政府負債は、日銀の増加保有で減っていたわけではなかった。

日銀が売らねばならなくなったときは、金融機関の保有になって、減っていた分がまた増えるのです。日銀の、この保有国債の売りとともに、期待金利は一層上がり、国債の流通価格は大きく下がるでしょう。
(※注)これが財政破産の引き金を引くことにもなります

T氏が言う、「日銀が国債を買いあげれば、国債は減る」ということは、正確には「日銀が国債を買いあげれば、日銀以外がもつ国債は減る」ということです。

日銀による、低い金利の国債を高い価格での買いあげることが増えるから、金融機関の国債保有が減るのです。政府の発行国債が、実際に減っていたわけではありません。

T氏は、日銀が出口政策では、国債を売らねばならないことを無視して、「日銀が国債を買い上げれば、国債は減る」という偽説を言っています。T氏から偽説を言われて、反論できないエコニミストは、情けなく思えますね。

5.宿題:インフレ目標を達成しても、日銀が出口政策をとらないとどうどうなるか

■質問

日銀が、国債を売る「出口政策」をとると、金利が上がって国債価格が下がるなら、「永久に」日銀が国債を買い続ける異次元緩和を続ければいいのではないでしょうか。日銀が政府の国債の全部を買いあげると、どうなるのでしょう。

■答え

この答えは、あなたも考えてみてください。一旦、ここで送ります。次号を送るまえに、どんな答えが準備されているでしょうか。

【関連】誰が売って誰が買うのか?2016年日本株「下落と上昇の要素」6つ=吉田繁治

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