内外の株式市場が再び力強い上昇気流に乗るのは、4月以降か?あるいは、今年後半あたりか?それまで、内外の株式市場は、激しく乱高下しながらも、総じて、春先まで、あるいは半年後あたりまで、「弱含む」可能性が高くなりました。しかしながら、春先から今年後半には、TOPIX(日本株)でも、TOK(先進国株)でも、VWO(新興国株)でも、「絶好の買い増し時」が訪れることでしょう。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)
2016年は、なにもかも「絶好の買い増し時」がやってくる
「ドラギ効果」は早晩剥落、期待は金融緩和から財政出動へ
日本株、乱高下激しいですね。日経ボラティリティーは、40ポイントを超えたまま。日経株価平均の乱高下は、まだまだ続くことでしょう。
昨日1月21日、日本時間で夜遅く、ドラーギECBが金融政策決定を発表しました。この日のECBは現行の金融緩和政策を継続、3月には「追加の金融緩和策」を示唆しました。
これを受けて、21日の欧米の株式市場は、とりあえずポジティブで好意的に反応しました。今回1月21日の「マーケットの好意的な反応」は、12月の政策決定と同じように、再び時間経過とともに剥落(はくらく)してゆくことでしょう。
マーケット関係者がドラーギECBに求めているのは、「マネーの実弾を伴うバズーカ砲の量的な拡大」です。
ところが、今のユーロ圏の国債や社債のマーケットには、ECBの買い支えの対象となるような国債や債券はたいして残っていません。
今のECBが実行できる「緩和策」は、「緩和の継続」と、せいぜい「マイナス金利の拡張」くらいでしょう、「実弾(バズーカ砲)の増加(=拡張)」は無理でしょう。
こういった状況(=中銀が買い支えられる国債が残り少なくなっている状況)は、黒田日銀とて同じです。黒田日銀の「追加の金融緩和策」も、残された手段は、もはや「マイナス金利の導入」くらいでしょう。
こういった状況は、実体経済においては、「超の付く低金利策の継続」を意味します。これは気長に継続すれば時間はかかりますが、実体経済には有効です。ですから、「中銀に実弾が無くなりつつあること(=買い支えられる国債が少なくなっていること)」は、実体経済から見たら、さほど悲観することはないのです。
が、速攻で「株高」を望む「せっかちなマーケット関係者」「投機筋」には、「実弾が残り少なくなっていること」に対する不満は、とても強いです。
ドラーギECBの1月21日の「3月の追加の緩和策への示唆」は、結局はその中身は「マイナス金利の拡張の示唆」です。今回1月21日の「マーケットの好意的な反応」は、12月の政策決定と同じように、再び時間経過とともに剥落(はくらく)してゆくことでしょう。
2016年の日欧の政策手段の重要度は、中銀(金融緩和)から財務省(財政出動)へとシフトしています。すなわち、「量的金融緩和策」から「拡張的な財政出動」へとシフトしています。日欧の中銀に残された「追加の金融緩和策」は、マイナス金利の導入か拡張くらいなのです。
マイナス金利が導入されたり拡張されれば、「実弾を伴うバズーカ砲」ほどには威力は無いものの、為替にも作用して自国通貨安を演出できます、気長に継続すれば実体経済は必ず上向きます。
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サブプライム危機クラスの危機が進行しているコモディティ
さて、年初より、「資源コモディティー分野だけに限って」みると、「サブプライム危機クラスの危機が進行しているかもしれない」とお伝えしてまいりました。
その「サブプライム危機クラスの危機」とは、やはり、「中国経済の大幅減速そのもの」なのだと、判断してよいでしょう。
中国の統計は全く持って信じられないので、「中国経済がソフトランディングしているのか?」「いや、中国経済はマイナス成長に陥っていてハードランディングしているのか?」について論じることは、実に無駄な作業です。
時間ばかりかかって、結局は結論はなかなか出ない、私もかなり頑張ってみたけれども、誠実に調べれば調べるほど、徒労感ばかりがつのります。
中国経済に関しては、「その実態は、永遠に正確な結論の出ない謎」で、いくら時間をかけても、結局は、「本当のところは分からない」のです。
「今現在の中国経済の診断書」については、誰でもどんなシンクタンクでも、デマゴーグの発信源になる可能性が高いです。
とは言え、「原油価格やコモディティー価格がここまで激しく下がっている」ということは、「中国経済がかなり大幅失速している」「資源&素材メジャーが経営難に陥るほど、深刻に中国経済は失速している」証拠です。
「グローバル規模での物流」も減少していて、直近では「バルチック指数」まで急落しています。ちなみに、ジョージ・ソロスは、1月21日、ダボス会議で下記のように述べています。
米著名投資家のジョージ・ソロス氏は21日、中国経済がハードランディングし、世界的なデフレにつながる恐れがあるとの見通し示した。
ソロス氏は世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開催されているスイス・ダボスからブルームバーグTVに対し、「ハードランディングは不可避」と言明した。「これは予想ではなく、実際に目にしていることだ」と述べた。
同時に、中国が十分な資源や3兆ドル規模の外貨準備高を持っていることなどを踏まえ、同国がハードランディングを「乗り切ることは可能」との認識を示した。
中国経済減速の影響は世界全体に波及するとし、中国情勢に加え、原油や商品価格の急落がデフレの根本的な要因になるとも指摘した。また、米S&P総合500種をショートに、米長期国債をロングにしていることを明らかにした。
ところで、ソロスの言う「乗り切ることのできるハードランディング」って、何なんでしょうかね?
かくして、中国経済に関しては、「ハードランディング」がきちんと定義づけされていないまま、人々は好き勝手なことを言っています。
ちなみに、ここはとても重要なことですが、イエレンFRB議長は、12月の記者会見で、「下方リスクに対しては、追加の金融緩和策(マネーのバズーカ砲)という手段がある」
ことを、示唆しています!!「イエレン・プット」は、まだまだ健在なのです。
アメリカFRBには、黒田日銀やドラーギECBとは違って、まだ「実弾」が残っているのです!
イエレンFRBには、「上昇リスク(想定以上のインフレが進行してしまうリスク)」に対しても「下方リスク(想定以上にデフレが進行してしまうリスク)」に対しても、まだまだ手段が残されているのです。
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バブル崩壊ではないが、人民元は1ドル6.7~7.0元まで切り下がる必要性
さて、話を元に戻しましょう。
こういった「中国経済への不透明感」がぬぐい切れない限り、内外のマーケットの混乱はまだまだ続くのではないでしょうか?
具体的には、中国人民元が、1ドル6.7~7.0元あたりまで(?)切り下がらないと、グローバルなマーケットは、「中国発デフレリスク」に対しては、なかなか安心できないのではないでしょうか?
さらに、今年2016年1-3月期の決算期に、資源&素材関連の大手メジャーから「大型M&A」が続々と発表されるのではないでしょうか?
今年4月には、アメリカ国内の弱小のシェール企業が発行したジャンクボンド(ボロ債券、ハイイールド債)が大量に償還を迎えます。この頃、アメリカ国内の経営基盤の弱いシェール企業が続々と淘汰されることでしょう。
さて、「中国の実体がはっきりつかめない」ことを「ネタ」に、今現在の資源コモディティー市場も、内外の株式市場も、実体経済をあまり反映しないまま、多分に「マネーゲーム化」しているところが強いです。
ですから、日本国内のマーケット関係者の間には、思ったほどには「悲壮感」はありません。
実体経済が悪化していて株価が続落しているのならば、深刻な「悲壮感」が漂うのですが、そうではないのです。「実体経済がまぁまぁ良くなっている(日本経済が、およそ年率
にして実質1%くらいのGDP成長はしている)」中で株価の続落ですから、まだまだ、どこかしら「楽観的なもの」が漂っているんです。
アメリカ経済も2%台半ばの実質GDP成長を継続していますし、ユーロ圏も1%台半ばの成長を継続しています。世界経済は下方修正されているとはいえ、2016年には成長率を加速しそうです。
個人投資家の方におかれましても、年初からここまで株価が急落すると、初心者や初級者の方ほど、「辛い」でしょうし、びっくりなさると思います。いや、今回ほどの「大きな調整」だと、10年選手の中級者でも、げんなりしてしまうかもしれません。
けれども、「株式投資は楽あれば苦あり」です。「良いときもあれば悪い時もある。」「良い事も長くは続きませんが、悪いことも長くは続かない」のが、株式投資なのです。
これは、「バブル崩壊」ではありません。「次への上昇」に向けて、「この際だからとことん下げてから、上げに向かおう」とする「マネーゲーム」の域を出ていません。
「今回の調整局面」では、愛読者の皆さまの間では、「2015年の春から夏にかけて10%~15%くらいのリバランスができていたかどうか?」で、明暗が分かれています。
すなわち、昨年の春夏の「マーケットがウハウハとイケイケになっているとき」に、ちゃんと「次への調整」に備えて、一部利益確定できていたかどうかで、明暗が分かれているのです。
さらに、「30%くらいの一時的な評価損ならば平気」と思える範囲内で、すなわち、「ご自分のリスク許容度の範囲内で国際分散投資を行っていたかどうか?」でも、はっきりと明暗が分かれています。
つまり、「入り口部分の国際分散投資の基本動作」を守っていたかどうかで、明暗が分かれているのです。
もちろん、年初からの下げは誰だって苦しいです。
苦しいですが、今回の下げ相場をワクワクドキドキしながら、「買い増しの絶好のチャンス」と考えられる余裕があるかどうか、
その反対に、「二度と立ち直れないほど苦しい」と感じてしまったり、「バブルは崩壊していないのに、株式投資はもう懲り懲りだと、損切してでもよいから株式投資から完全撤退したくなるほど、深い痛手を負ったかどうか?」の「明暗」は、やはり、「基本動作」を守っていたかどうかで、大きく左右されています。
個人的には、「イエレン利上げショック」がここまで大きくなるのは、まさしく想定の範囲外。どこかしら、10%~15%程度の調整ですむかと思っていました。
昨年春夏の愛読者さまへの呼びかけは、「10%~15%のリバランス(次の調整局面に買い増すための、一時的な(?)利益確定)」ではなく、もっと多めの「15%~20%くらいのリバランス(次の調整局面に買い増すための、一時的な(?)利益確定)」にしておけばよかったと、クヨクヨしています。
そして何よりも、「イケイケの高値圏でのリバランスを呼びかける」と、クレームが多くなったり、購読を停止してしまう人がとても多くなるのが、個人的には驚きでした……。
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安倍自民党政権内部の本音と追加緩和のゆくえ
さて、今現在の内外の株式市場は、ほぼ原油価格と資源コモディティー価格とが、かなり強く連動して動いています。原油価格が続落すれば、「逆オイルショック」懸念が再燃して、内外の株式市場も続落。原油価格がいくばくか値を戻したら、「逆オイルショック」への懸念が一時的にも静まって、内外の株式市場はいくばくか値を上げます。
1月20日には、WTI先物価格は、一時的にも前日比6.7%安の26.55ドルを付けました!これに連動して、アメリカのS&P500は、瞬間風速で1,800ポイント近くまで下げました。この日の下げ幅は、最大で前日比3.4%の大幅下落。翌日1月21日の日本株式市場では、アメリカ株の下落を受けて、日経平均が1万6,000円近辺まで売り込まれました。
原油価格やコモディティー価格が激しく乱高下するので、日本株式市場でも、ヨーロッパ株式市場でも、アメリカ株式市場でも、日中の最大の下げ幅が軽く2~3%台になることも、珍しくなくなりました。
日本株式市場およびヨーロッパ株式市場では、怪物ヘッジファンド:CTA(コモディテイー・トレーディング・ファンド)が暴れ過ぎています。
CTAは、日本株式市場では、とりあえず、「原油価格:1バーレル25ドル、ドル円:115円、日経株価平均:1万6,000円」を「目標」に、暴れていると言われています。
夏場にお伝えしましたが、彼らCTAは、何も考えていません。彼らCTAのコンピューター・プログラムは、大量に流されるテロップに反応しているだけ。ですから、「下げに賭けたら稼げる」と判断すれば、俄然「下げ」に賭け続けますが、突如、「上げに賭けたら稼げる」と判断すれば、即座にある日を境に方針を180度転換して、俄然「上げ」に賭けてくるのです。
CTAにとっては、目先の原油価格については、ファンダメンタルな「原油の需給」などは全く「興味」も「意味」も無いみたいなのです。
伊藤隆俊教授が年明け早々1月9日にブルームバーグのインタビューに応えて、以下のような見解を述べています。
この伊藤隆俊教授の1月9日の見解は、そのまま、「安倍自民党政権内部の本音そのもの」でしょう。
※伊藤教授:中国ショック発の円高「まだ大丈夫」、テーパリングは次期総裁 – Bloomberg
すなわち、伊藤教授が「ドル・円相場は『120-125円』が気持ちの良いレンジだ」「115円になって、110円に向かって行かない限り、それほど深刻ではない」との見解を示してから、週明けの怪物CTAたちは俄然「とりあえず、ドル円1ドル115円、日経平均:1万6,000円」ラインに向けて、動き始めてしまったのです。
ということで、黒田日銀は、ドル円が115円を飛び越えて110円に向かい始めたら、追加の金融緩和策(=「マイナス金利」を導入)を示唆し始めるでしょう。
Next: 2016年の「トリプルメリット」は「円安・原油安・低金利」に
2016年の「トリプルメリット」は「円安・原油安・低金利」に
繰り返しになりますが、ここまで原油安が進行すると、中長期では、「原油安・低金利・円安」の「トリプルメリット」の春風が勢いよく吹き始めて、日本株式市場では超大型の株式バブルが起きやすくなります。
80年代後半に始まった25年前の「トリプルメリット」は、「円高・原油安・低金利」でしたが、2016年の「トリプルメリット」は、日本経済が成熟したので、「円安(115円~130円の間)・原油安・低金利」になります。
直近の原油安は、サウジアラビアなどの産油国から日本経済におよそ1年間で12兆円規模の「所得移転」が行われたことと同じなのです!
日本の地方都市では、車が主な交通手段です。昨今のガソリン安は、人々の購買力を上げて、地方都市の恵みの雨を降らしています。
ということで、安倍自民党政権の支配下に下った黒田日銀は、「ドル円が115円を飛び越えて100円に向かうような円高」が起きれば、「マイナス金利」という「追加の金融緩和策」を示唆し始めるでしょう。
それをあざ笑うかのように、CTAたちは、「1ドル115円、日経平均:1万6,000円」に挑戦しています。
これに、安倍自民党政権の側近たちは、口先介入で防衛しているのです。
繰り返しお伝えしますが、今回の「グローバル規模での調整局面」は、様々なリスクが相互に絡み過ぎていて、なかなか「これといった底」が見当たりません。
これはただの「どた勘」ですが、「吐き気がして内臓が喉から飛び出しそうになるくらいの恐怖心」「こんなに辛いならば、一思いに殺して!」という「セリングクライマックス」が、まだマーケットを支配的になっていないような気がするんです。
なんだか、今後も、「ダラダラ急落」「ジグザグ乱高下・下落」続きそうな「嫌な予感」がします。
こういった中で、1月20日には、日本株式市場とドイツ株式市場が「弱気相場入り」してしまいました!最高値圏から20%以上下落することを、「弱気相場入り」と言います。
日経株価平均の最高値は、2015年6月の2万0,900円。もう20%超えの下落です。DAXの最高値は、2015年4月の1万2,3340。もう24%超えの下落です。
一旦「弱気相場」に入ると、マーケットが力強く反転上昇するには、だいたい平均で5カ月くらいは必要だと指摘する向きもあります。
アメリカ株式市場は、まだ「本格的な弱気相場入り」はしていません。S&P500の最高値は、2015年5月の2130ポイント。まだマイナス12%くらいの下落です。
『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2016年1月22日号より一部抜粋、再構成
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