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From 株式会社ユーグレナ公式サイト

社長のミドリムシへの愛がアツすぎる!ユーグレナ株主総会レポート=平林亮子

「ミドリムシ」でサプリ業界に新しい風を吹かせているユーグレナ<2931>が、いよいよバイオジェット燃料の実現化に向け動き始めました。気になる株主総会をレポートします!(『平林亮子の晴れ時々株主総会』

サプリ、バイオジェット燃料…「ミドリムシ」の勢いはこれからが本番!

ずっと気になっていたサプリメントのこと

突然ですが、実は以前から気になっていることがあります。それは、サプリメントのこと。

平日の昼間、自宅でテレビを見ながら仕事をすることも多い私。すると、CMや通販番組で、サプリメントを頻繁に目にするのです。CM等では、40代、50代になると、体内のヒアルロン酸もコラーゲンもどんどん減少していくという話が繰り返されます。

それだけではありません。現代人の食生活では魚も野菜も足りておらず、厚生労働省の食事摂取基準を満たしていない、というメッセージも繰り返されます。それを聞いていると「そもそも、必要なすべての栄養素を基準以上に摂れている人などいないのではないか?」と思えてきます。「全部摂取しようとすると、ありとあらゆるサプリメントを摂取しないと無理なのでは?」という気持ちになってきます。

誰もが、何かしらの栄養不足なのであれば、不足しているのが「普通」。そのままでもいいのではないでしょうか……と言いながらも、サプリメントを利用している私です(笑)

今後、歳を重ねるにつれ、もっとサプリメントが必要になるのかなあ、と考えると、少々憂鬱です。年齢を重ねた方向けのサプリメントは、高額のモノも多いのです。

たとえば、八千草薫さんが登場するCMで有名な「皇潤」は、1月分が約1万円!ヒアルロン酸のサプリメントですが、1日約330円です。やりくりとお料理が上手な方なら、この金額で3食まかなえるかもしれません。

「グルグルグルグルグルコサミン」というメロディーに乗せて、膝回しをするCMで有名なグルコサミンアンドコンドロイチンは、1か月分が約4000円。1日約130円です。

これも必要、あれも必要とサプリメントを購入し続けたら、食費がすべてサプリメント代で消えてしまうことでしょう。

ちなみに、私が今利用しているのは、大塚製薬のネイチャーメイドシリーズとファンケルの商品。1日、もしくは1回当たり、数十円の商品です。

もしも将来、ヒアルロン酸だのコラーゲンだのグルコサミンだのコンドロイチンだのセサミンだのプラセンタだのを加えていったら、いったい、サプリメント代はいくらになることやら。

みなさんは、サプリメント、利用していますか?

ところで、サプリメントは医薬品と異なり、食品の域を超えるわけではありませんから、効能が約束されているとも限りません。結局、消費者の判断もCMのイメージやブランド力に左右されがちなのだと思います。

その点、「皇潤」は本当にすごい!医薬品でもないのに、1か月1万円という高額な商品を販売し続けているのですから。実際、CMで、八千草薫さんの素敵な笑顔を見ると、「やっぱり皇潤って良いのかな」という気持ちになってくるから不思議です。皇潤のCM戦略にまんまとはまりかけています……。

なお、皇潤は、株式会社エバーライフという福岡の企業が販売しているものですが、同社のウェブサイトによれば、年間の売上高は約130億円とのこと。皇潤が1年間で130万個売れる計算です。もちろん、同社の商品は皇潤だけではありませんが、おそらく、毎年のようにそれだけの数が売れているのだと思います。

利益はわかりませんが、サプリメントなどの健康食品業界は、一般的に利益率が高いと言われています。たとえばエバーライフと同じくらいの売上規模である養命酒酒造のデータを見てみると、

で、粗利率約68%、売上高に対する当期純利益率は約15%。上場企業の当期純利益率の平均は、約4%ですから、驚異的な利益率です!養命酒はサプリメントとは異なりますから、全く同じように考えることはできませんが、同じくらいの利益率をたたき出しているとすれば、すごいことです!

サプリメントという言葉には、法律上の定義はなく、大きくは「健康食品」というカテゴリーに入ります。そして、「健康食品と呼ばれるものについては、法律上の定義は無く、広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指しているものです。

そのうち、国の制度としては、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした『保健機能食品制度』があります」(厚生労働省ウェブサイトより)とのこと。

保健機能食品制度は、「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、特定の保健の目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)食品の場合にはその機能について、また、国の定めた栄養成分については、一定の基準を満たす場合にその栄養成分の機能を表示することができる制度」(厚生労働省ウェブサイトより)で、機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品に分類されます。特定保健用食品がいわゆる「トクホ」ですね。

こうした制度に当てはまらない食品は、食品の効能を表示することはできません。サプリメントはこの制度外の単なる健康食品であることも多く、ましてや医薬品でもありません。テレビCMなどで「※個人の感想です」といった言葉が小さく表示されているのはそのためです。

今や1兆5000億円を超えると推定される健康食品・サプリメント市場。ネイチャーメイドを販売している大塚製薬、セサミンEXなどを販売しているサントリーウェルネス、DHC、ファンケルなど、いわゆる大手もひしめく中で、これからも、個性的な商品が生まれてくることでしょう!

ユーグレナ<2931>はどこへ行く?

そんなサプリメント業界に新しい風を吹かせているのが、株式会社ユーグレナ(以下「ユーグレナ」)ではないでしょうか。ユーグレナを「サプリメント企業」と言ってしまっては社長の出雲氏に怒られそうですが、このところ、テレビCMで見かける頻度が多くなってきたように思います。

ユーグレナはユーグレナという生物(以下、和名の「ミドリムシ」)の商業規模での培養に成功した東大発バイオベンチャー企業。

「ミドリムシは藻の一種ですが、植物と動物両方の性質を持つとても珍しい生物です。そのため、野菜に多く含まれるビタミンやミネラルなどの成分に加え、魚に多く含まれるDHA、EPAといった不飽和脂肪酸なども持っています。ミドリムシの持つ栄養素はなんと59種類」

「ミドリムシは植物、動物の性質を持つことから植物に含まれるビタミンCや葉酸、動物に含まれるDHA、EPA、ビタミンB1と、両方の栄養素を備えています。また、生物学的な大きな特徴として忘れてはならないのは、植物にある細胞壁がなく、細胞が細胞膜で構成されていることです。ちなみに細胞壁があると、人間はこれを分解するセルラーゼという成分がないため、栄養素の消化効率が悪くなってしまいます。しかし、ミドリムシの細胞を覆っているのは細胞膜のみであるため、効率的な栄養吸収が可能となります。つまり、ミドリムシは植物の栄養素を持ちながら、細胞膜でしか覆われていないのです。これは本来なら吸収効率の悪い植物性栄養素を、ミドリムシでなら動物性栄養素と同じくらい、確実に体内で取り込めることを意味しています」

出典:ユーグレナウェブサイト

バランスの良い栄養素を含み吸収率の良いミドリムシ。ユーグレナは、このミドリムシを粉末にした青汁ならぬ「緑汁」やサプリメントはもちろんのこと、ミドリムシを麺に入れたりするなど、さまざまな食品として展開しています。

食品に限りません。先日も、母から、「ユーグレナって知ってる?日本橋の三越の化粧品コーナーに、新しく入ったのだけど」と聞かれました。ユーグレナの化粧品が、日本橋三越の化粧品フロアの一角に売り場を確保したのです。

母の言葉は、「肌にいいのかしら?すごく高いのだけど」と続きます。私は使ったことがないので、ユーグレナの化粧品については何とも言えませんが、以前、大手の化粧品会社に務めていた知人から、「化粧品の値段と品質は、比例するとは言えない」と聞いた記憶があるということだけ記しておきます。

さて、そんなユーグレナの株主総会に、今年も参加してきました!場所は東京国際フォーラムの大きなホール。2015年9月末の株主数は、株主総会招集通知によれば、8万人超。1年前より1万5千人ほど増加している計算です。本当にたくさんの人から応援されているのですね。

余談ですが、日本で1、2を争う大企業であるトヨタの株主数は50万人。それと比較すればまだまだ少ないように感じますが、企業の規模が違いますからね。トヨタは、売上が約27兆円、当期純利益が2兆円を超える企業。

一方、ユーグレナは、売上が60億円弱、当期純利益は5億円に満たない規模。ユーグレナの株主数が異様に多いことがわかるでしょう。

さらに余談ですが、個人投資家向け投資・株価情報『ストックウェザー』によれば株主数が一番多い上場企業はみずほフィナンシャルグループで約90万人!その他に株主数の多い企業に目を向けてみると、東京電力が約55万人、東芝が約40万人。企業の負っている社会的な責任の重さを、株主数の観点からも考えさせられます。

株主総会に出席していた株主数は2000名程度と思われますが、規模の割にたくさんの株主を抱えているユーグレナ。この点で、売上や利益の規模以上に大きな影響力を持っている企業だと言えます。

そんな株主の期待に上手に応えていくのも、ユーグレナの特徴。

株主総会を目前に控えた12月頭に、横浜市、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、ANAと、2020年に向けた国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化計画を推進すると発表しました。

日本初となるバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを、横浜市の京浜臨海部にある旭硝子京浜工場内に2016年夏より建設を開始するそうです。

昨年までは、社長の口から発せられるだけであった「ミドリムシをバイオジェット燃料にする」という話が、現実として動き出したのです。

そんな勢いもあって、株主総会では、昨年同様出雲社長の演説が響き渡ります。株主総会が始まってから社長が語り続けることほぼ1時間……正直、長かったです(笑)今年も社長のミドリムシへの愛を感じる株主総会でした。

来年は現実となりだしたジェット機の燃料の話を聞けることでしょう。出雲社長は30代半ば。彼を助ける取締役も、1名を除き30代半ば。そんなバイオベンチャーであるユーグレナは、当初からの夢に向かって突き進んでいるようです。

Next: 60億円を超える現金預金~気になる研究開発資金と株価の話



気になる研究開発資金と株価の話

そのバイオジェット燃料の製造実証プラントを造るための資金は、2013年12月の増資で調達済み。社長曰く「プラント建設費用等は30億円と見積もっている」とのこと。

実は、増資によって集めた資金は、ほとんど使われることなく、2015年9月期の貸借対照表に「現金及び預金」60億円超が計上されています。その上、「現金及び預金として置いておくだけではもったいない」とのことで、一部、有価証券としても保有しています。

正直、ずいぶん長いこと資金を寝かせているなあ、と感じます。売上60億円弱の企業に、60億円を超える現金預金があって、さらに30億円近い投資有価証券を保有しているのです。

逆に言えば、資金を使う時期がそんなに先であるにも関わらず、よくそれだけ調達できたものです。

もちろん、バイオベンチャーは研究開発が先行するのが一般的。そのための資金をできるだけ出資によって集めたいはずで、それを実践しただけといえばそれだけのこと。

とはいえ、すぐに研究開発に使われることなく預金となっていれば、ほとんど利息がつかない超低金利の今。よくこれだけのお金を、早々と集めることができたものです。

なお、株価については上がったり下がったりしながら、結局1年前と同じくらいの水準になっています。

昨年より業績が良くなっている分だけ、実質的な株価は下がっていると考えることもできますが、執筆時点でもPERは約240倍、PBRは約11倍なので、一般的な水準と比較すると株価は割高。良くこれだけの水準を保っているなあ、と思いますが、昨年はPER約650倍、PBR約11倍でしたから、加熱していた株価が少し落ち着いてきた、というところでしょうか。

そういえば、株価の乱高下があった割には、株主から株価に関する質問はなく、ここは昨年と大きく異なるところでした。昨年は株価についても業績についても質問が飛び交いましたからね。

「こんなに高い株価になっているのはなんで?」という質問が出たときには、株価が高くても低くても議論になるのだなあ、と感じたものです。

それに対して、今年はとても穏やか。質疑応答は、1時間以上行われましたが、否定的な質問などはほとんどなし。少し騒がしくなったのは、株主の1人が、議長である社長に詰め寄ったシーンのみですが、その株主が退場となって終わり。

ROEが低いという指摘はありましたが、社長は「長期的な視点で見てほしい」と回答。ROEは、利益÷純資産ですから、借金が少なく出資による調達が多い場合には、低くなりがちです。

増資により何十億も資金調達をして、使うことなく手元に持ち続けているのに利益は数億ですから、ユーグレナのROEは低くなります。ROEが大切でないとは言いませんが、私の尊敬する経営者は、ROEの向上を追求していない方が多いです。

大切なのは、利益をしっかりと確保すること。その結果としてのROEの向上が重要なのです。

なお、「バイオ燃料が成功するまで、配当もしない方針」とのことでした。

こんなに穏やかだったのは、やはり、バイオ燃料事業について、具体的な進展と発表があったからかもしれません。社長は口先だけではなく、本当に実現に向けて動いているのだとわかりましたからね。

もちろん、新しいビジネスが成功するか否かは、やってみないとわかりませんが、私も一株主として、ユーグレナの事業の成功を祈りたいと思います。

Next: 大株主に注目!/ユーグレナの業績メモ



大株主に注目!

1位は出雲充社長(昨年と同順位)。2位は株式会社インスパイア(昨年と同順位)。ベンチャービジネスへの投資やその他の支援を行っている企業で、ユーグレナCFOの永田氏はインスパイアの出身です。

3位はJX日航日石エネルギー株式会社(昨年と同順位)。4位は東京センチュリーリース株式会社(昨年と同順位)。5位は鈴木健吾取締役(昨年は8位)となっています。

鈴木健吾取締役が、今後、重要なポジションを担っていくということかな、と考えるのは深読みしすぎ?

ユーグレナの業績メモ(百万円未満切捨)

ユーグレナの2015年9月期の業績は以下の通り。

売上高5,924百万円(59億2,400万円、前期94.5%増)
営業利益476百万円(4億7,600万円、前期234.7%増)
経常利益726百万円(7億2,600万円、前期279.3%増)
当期純利益469百万円(4億6,900万円、前期297.4%増)

総資産14,523百万円(145億2,300万円)
純資産12,701百万円(127億100万円)
自己資本比率約87.2%

執筆時点での時価総額 約1,342億円

営業活動によるキャッシュフロー 620百万円
投資活動によるキャッシュフロー 2,294百万円
財務活動によるキャッシュフロー △177百万円

キャッシュフローから妄想できることは、

といったところでしょうか。

前期は営業活動によるキャッシュフローがマイナスでしたが、今期はプラスに転じました。サプリメントがきちんとお金を生む事業へと成長してきた証拠だと言えるでしょう。

また、財務活動によるキャッシュフローのマイナスは、配当の支払いや自己株式の取得
による支出も考えられます。

今回のお土産

ユーグレナの株主総会招集通知にはお土産なしと記載されておりましが、実際、
お土産はありませんでした。もちろん、お土産目当てで行くわけではありませんが、ユーグレナ商品などが配布されても良かったかもしれませんね。

さて、次回はどこの株主総会に行くことになるのやら。乞うご期待!

【関連】電力自由化にも新規参入、株主総会から考えるソフトバンクの未来=平林亮子

『平林亮子の晴れ時々株主総会』vol.32(2016年1月18日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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平林亮子の晴れ時々株主総会

[月額324円(税込) 毎月 第1月曜日・第3月曜日]
ベンチャー企業のコンサルティングを行うかたわら、講演活動やマスコミなどでも活躍。毎月どこかの上場企業の株主総会に個人株主として参加中。

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