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なぜ富裕層は質素に暮らす?どケチでもロレックスは買うバリュー投資家という生き方=栫井駿介

皆さんは、バリュー投資家という人種をご存知でしょうか。日本語では「割安株投資家」と訳されることが多いようですが、本当のニュアンスは少し異なります。

バリューとは、日本語にすると「価値」の他に「お得」という意味があります。すなわち、バリュー投資家とは「価値のあるものをお得に買う」人々のことです。彼らは投資だけでなく、普段の生活からそのポリシーを実践しています。

何を隠そう私もバリュー投資家のはしくれです。この記事では、私がどんなことを考えて普段の生活や投資を行っているか、余すことなくお伝えしたいと思います。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

老後資金問題も怖くない。倹約家で有名なバフェットの行動原理は

同じ価値なら1円でも安く!

「バリュー投資家」などと大層な言い方をしていますが、さっくり言い換えると「ドケチ」のことです。その信条は「1円でも安く買う」に尽きます。これは、投資でも日常生活でも同じことです。

携帯電話を例にとっても、よほどたくさん動画を見ない限り大手キャリアを使う必要はありませんから、格安キャリアにします。大手キャリアでも格安キャリアでも、できることは変わりませんから、同じ「価値」をより安い「価格」で手に入れることができるのです。

私は最近バイクを買いました。車が必需品となる千葉の片田舎で夫婦と子供二人の家ですが、これまで車は1台で済ませていました。自宅兼事務所なので、通勤の必要がないからです。

それでも、不意にどこかへ出かけたいと思ったときに車がなくて不便さを感じることがありました。田舎だとちょっとした買い物が10キロ先ということは当たり前なので、自転車ではしんどいのです。

もちろん、2台目の自動車を買うことも考えました。しかし、いまや軽自動車でも新車で100万円は下らない「ぜいたく品」です。おまけに、車検や税金などのランニングコストも馬鹿になりません。毎日使うわけではないので、100万円+定期的な支出は移動という「価値」に見合わないと考えたのです。

そこで気がついたのが、バイクという選択肢でした。バイクと言っても、125cc、いわゆる「原付二種」です。車体自体は30万円程度で、税金は年2,400円、おまけに車検の必要がありません。

これなら得られる価値(=移動)に対して、支払う金額が十分に安いと思ったため、購入を決断できました。今ではバイクで快適な生活を楽しんでいます。乗ること自体が楽しいと気づけたことは思わぬ収穫でした。

ドケチだけどロレックスは買える理由

ただ、買ったものは同じクラスの中では高い、ホンダのPCXでした。なぜもっと安いものを買わなかったのかと言うと、「再販価値」を考えてのことです。

確かに少し高いのですが、デザインが良く人気があるので、中古でもほとんど価格が落ちません。だから、もしあまり使わなくて売却することになっても、購入金額の大半は返ってきます。さらに、少し高い分所有欲も満たしてくれます。

再販価値を考えると、ちょっとした贅沢も可能になります。例えば、腕時計のロレックスは、価格がほとんど落ちないどころか、上がることさえあります。

同じ腕時計をするなら、1万円のものならそれっきりの「消費」で終わりますが、100万円のロレックスなら、買い換える時に売ると110万円になっているかもしれないのです。買った時点でマイナス1万円とプラス10万円では、期待値が違います。ロレックスなら所有欲も大いに満たされるでしょう。

株を買う時も同じように考えなければなりません。本当にいい銘柄は、人気が高まると大きく上がります。例えば、ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド<4661>はPER70倍と超割高ですが、株価は衰えるところを知りません

オリエンタルランド<4661> 月足(SBI証券提供)

逆に、単に割安さだけを求める投資だと、大きな損はしないものの、なかなか上がらない「バリュートラップ」にはまってしまうことが珍しくありません。バリュー投資家は、この点に最も気をつけなければならないのです。

世界を代表するバリュー投資家のウォーレン・バフェットも以下のように言っています。

そこそこの事業を割安で買うより、素晴らしい事業をそこそこの値段で買ったほうがいい

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なぜ大金持ちは質素なのか?その行動原理

ロレックスは買っても、バリュー投資家の本質がドケチであることには変わりありません。バフェットも、着ていた服からホームレスに間違えられるほどの倹約ぶりでした。明治~昭和にかけて現在の価値にして400億円の資産を築いた本多静六も、生涯質素を貫いたと言います。
※参考:本多静六に学ぶ、普通の人が人生を豊かにする投資法 – つばめ投資顧問(2018年2月13日)

なぜそんなにお金があるのに、ドケチを貫くのでしょうか。それは、バリュー投資が習慣の産物に他ならないからです。

ものを買うときに、その金額を払う価値が本当にあるのかどうか考える癖をつけると、無駄な出費を抑えることができます。この習慣は、そのまま投資にも応用できます。なぜなら、バリュー投資の本質は、価値と価格の差によって利益をあげることだからです。

株を買うときに考えることは、それが本当にいい会社なのか、そして今の価格がその会社の価値に見合っているのかどうかです。どれだけ複雑な分析をしようと、最後はこれに尽きます。

逆に、バリュー投資で失敗するのはこの見極めを怠った時です。私もある銘柄の値段が半値になり、「安い」と思って飛びついたら、実はその中身がボロボロであることがわかり、そこからさらに半値になるという痛い思いをしたことがあります。冷静になって考えると、買った時点も必ずしも安いとは言い難い水準でした。

あなたがバリュー投資家なら、まずは買いたい品物や銘柄の価値とは何かをじっくり考えてみる必要があります。そして、価値が確かなものだと確信できたら、価格がその価値に見合うかどうかを考えるのです。

ただし、その時点ですぐに買ってしまってもまだ二流です。本当の買い時は、バーゲンセールになった時です。どんなに良い品物でも、全品一律割引になることがあります。最近だと、キャッシュレス決済の20%還元なども珍しくありません。

株式市場では、年に数回相場全体が調整に入ることがあります。このときは、どんなに良い銘柄でも値下がりする、まさにバーゲンセール状態となります。直近だと昨年末、クリスマスショックの頃でしょう。バリュー投資家は、このようなときに初めて株を買うのです。

【バリュー投資家の行動原理】

  1. ものの価値を見極める
  2. 価格が価値に見合うかを考える
  3. バーゲンセールで買う

Next: バリュー投資家になれば、老後資金問題もまったく怖くない



バリュー投資家になれば、老後資金問題もまったく怖くない

「適切な価値を1円でも安く買う」生活スタイルを続けていると、いつの間にかお金が貯まってくるでしょう。実は、それこそが資産形成の鍵を握ります。

長期投資では資金を回転させないため、株を買っていくとあっという間に資金が尽きてしまいます。そもそも投資を始めるにしても、元手がないことにはスタートラインにも立てません。

それを解決するのが、ドケチスタイルです。少しでも余分な出費を減らし、元手に充てることこそが、投資で成功するための出発点なのです。特に運用資金が少ないときほど効果を発揮します。

巷では、老後に2,000万円が必要と話題になっています。もちろん運用で増やすことも大切ですが、元手がないことには始まりません。千里の道も一歩からと言いますが、まずは月1万円からでも出費を減らし、貯蓄に充てることが大切なのです。

バリュー投資家の考え方が単なる節約と違うのは「価値」を重視する点です。単なる節約だと、あれもこれも「使っちゃだめ」と考え、息苦しくなってしまいます。

しかし、価値に重きを置けば、自分の欲望は無理に抑えることなく、少しでも安い手段を見つけることになります。同じ晩酌をするなら、ビールじゃなくても酎ハイで十分なのです。

もし老後までに十分なお金が貯まらなかったとしても、価値を見極めて余分な消費をしなければ、少ないお金で楽しく過ごすことができます。お金がなくても幸せになれることを知れば、投資で失敗することを極端に恐れる必要はなくなるのです。

このように、バリュー投資家は「価値」、言い換えると「幸せ」を最大限重視します。あなたもバリュー投資家になって、真の幸せを見つけてみてはいかがでしょうか。


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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2019年6月30日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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