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外国人投資家はなぜソニーを好むのか、その背景と特徴的な値動きの理由とは=若林利明

ソニーは米国株式と同じように米国で取引できるADRを発行した日本の企業の一期生。そのためか、海外投資家から他の日本株とは違う目線でみられているようです。(『資産運用のブティック街』若林利明)

筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

※本記事は有料メルマガ『資産運用のブティック街』2019年7月3日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

高度成長期、日本株投資の黎明期を支えたソニーという銘柄

株価形成はBPSそしてEPS…成長株投資の実践教科書

ソニー<6758>は、日本の東京市場に上場する数多くの銘柄の中でもっとも外国人投資家に好まれる銘柄の一つです。歴史的な思いが詰まっていると言えるかもしれません。高度成長期、外国人投資家の日本株投資の黎明期にはまさしく成長株の代名詞的存在でした。また会社自体も資本市場でもその存在感をみずから高める行動を実際にしてきました。

日本の企業として、米国株式と同じように米国で取引できるADRを発行した一期生の日本企業です。また現在、米国では一般的である四半期ベースの現金配当を日本でも実施している稀な会社でもあります。そうしたこともありビジネス自体も国際的展開をしているのですが、市場におけるソニー株は米国株のようなイメージをもって投資家と向き合っているとも言えます。

それだけに、その株価形成に外国人投資家のソニーファンとも言える動きが時折見ることができるようです。

下の図は、2012年末から直近の2019年6月までの3か月ごとの株価の動きと㎖、この間の決算期ごとの1株当たり純資産(BPS)をプロットしたグラフですが、他の国際優良株の動きとは少し異なるようです。これはソニーのファンダメンタルが反映されていることもありますが、外国人投資家のソニーへの親近感がもたらす面もあるように思えます。併せてこの間の1株当たり利益(EPS)、配当、1株当たり純資産(BPS)を一覧します。EPSと配当については2021年3月期までの予想を記しています。

Next: 業績不振にもかかわらず、アベノミクス入り口で株価が急伸したワケ



株価への反応は敏感…外国人投資家はストレート勝負

ここでは、ソニー株価の特徴がよく出ている局面に注目します。

<BPS“1”割れにストレートに反応>

2012年末から2013年初めの動きです。2013年は円安が進み、輸出関連企業は収益の大幅回復を背景に大きく上昇するのですが、ソニー株は他の国際優良株ほど上昇しません。2012年3月期から2013年3月期にかけてようやく赤字決算から水面浮上の状態であり利益の絶対水準は低くPERで論ずる株価ではありません。

さらに2014年以降も業績不振が予想される状況でした。しかしアベノミクスの入り口段階では、2012年末から数ヶ月で70%程急伸したのです。落ち着いた先の株価水準は2,000円強でした。答えは明確です。BPS“1”割れにあった株価が当時のBPSのレベルまで上昇したのです。その結果が70%の株価上昇となったのです。

外国人投資家による日本株投資が積極化する中でも、業績不振によりソニ─株に関して成長イメージをもって株価と向き合うことができませんでした。そこでソニーの下値不安の少ない株価水準、BPS“1”を当面の目標とし、買うことになったのです。その動きだけで70%も上昇したのです。BPSレベルまで短期間に買いあげたのです。日本の投資家はできるでしょうか、やはり外国人投資家のソニー感が相当入っていると見てよさそうです。

<大幅増益には、市場の逆風をついて買い上がる>

業績急回復の動きを示すと、ソニーファンともいえるであろう外国人投資家は積極的に反応します。株価は2018年の年央まで上り詰めることになります。2019年3月期EPSの700円強が予想される時点でソニー株を買い上がることになります。日本株はその時点では総じて下り坂に入りつつあるのですが、ソニーに関しての大幅増益予想を評価し市場の逆風をついての動きです。結果としてそれが高値を形成することになり、その後、急落します。

急落自体は東京市場から多くの外国人投資家の日本株撤退の動きの一環であります。ソニーが買い上げられた時点は、この引き上げが始まっている時期ですが、ソニーの増益予想にストレートに反応した格好の株価形成になりました。これまでの成長株の草分的な役割を演じたソニーへの思いが反映されているとも言えます。

これら2つのケースをみると、
・BPSレベルに復帰する短期間における株価急上昇
・利益の急伸をストレートに追いかける株価
という外国人投資家のソニーに対する投資スタンスが如実に反映される株価の動きです。

こうした投資家がどの程度の投資期間を想定してソニーの株価を取得するのか分かりませんが、ソニーに対する取得時の反応は普通の日本株と比べてとても敏感であるようです。

よく知っている銘柄あるいは株価的に馴染んだ銘柄への行動が速いことは古今東西のファンドマネジャーに共通です。

※本記事は有料メルマガ『資産運用のブティック街』2019年7月3日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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資産運用のブティック街』(2019年7月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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