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市場参加者を狼狽させる「投機筋のパワープレー」が成功した理由=矢口新

私は年初来の荒れ相場を、投機資金によるパワープレーだと見なしています。パワープレーでは市場の動揺を誘えないと負けるのですが、年初来の動きは、投機資金の勝ちだったと見ていいでしょう。それを踏まえて今後の展開を考えます。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』)

大口投機筋による「パワープレー」の本質と今後の見通し

日本株、ドル円は底打ちしたのか?

Q:日本株、ドル円レートが反発しました。日経平均16,000円、ドル円116円で底を打ったのでしょうか?

A:私は年初来の荒れ相場を、投機資金によるパワープレーだと見なしています。相場は誰かが売り買いすることによって動きますので、必ずしも経済のファンダメンタルズの裏付けがなくても、大量に売買すれば動くのです。力尽くで動かすので、パワープレーと呼んでいます。

パワープレーについて、もう少し詳しく説明しましょう。

私は、外為のインターバンクのブローカーとして相場を始めました。そこで知ったのが、大口の売買があると、レートが動くということです。

そして、その大口の売買の背景には何もなく、大手が動かそうとしただけということが、しばしばあることを知りました。

ブローカーにはほとんどすべての動きが見え、直接ディーラーの話を聞いているので、そういうことが分かるのです。

その後、私は証券会社や銀行に転職してディーラーとなりましたが、いずれも大手で、しばしばパワープレーを行うようなところでした。しかし、自分で買い上げて、自分で売ると、コストで手仕舞いすることが難しく、パワープレーが必ずしも利益につながるものではないことも知りました。

商い薄を狙ったパワープレーの実例

グリニッジ・キャピタル・マーケッツという米国コネチカット州にある米国債のブティックハウスに勤めていた頃、当時、最大級のヘッジファンドが効率的なパワープレーを行うのを目の当たりにしました。

時は8月頃で、長期休暇を取っている参加者も多く、材料難で動意薄という凪いだ相場でした。そこに「彼」は大量の買いを仕掛けました。買いには必ず売りが相対でいます。

売った方は、材料難で動意薄という凪いだ相場で、売り持ちを抱える理由がなく即座に買いでカバーしました。

あとはその連鎖です。何もないはずの相場で、価格だけが1週間ほど上げ続けました

しかし、レンジの高値が近付いてくると、レベル感から売りたいという人が増え始め、次第に上昇する力が鈍ってきました。そこで「彼」はドテンをし、利食っただけでなく、売りで仕掛けました。

売りには必ず買いが相対でいます。買った方は、材料難で動意薄という凪いだ相場で、買い持ちを抱える理由がなく即座に売りでカバーしました。

あとはその連鎖です。何もないはずの相場で、価格だけが1週間ほど下げ続けました

しかし、レンジの安値が近付いてくると、レベル感から買いたいという人が増え始め、次第に下落する力が鈍ってきました。そこで「彼」はドテンをし、利食っただけでなく、買いで仕掛けました――

「彼」は、こういったことを5、6週間繰り返しました。その間、相場は大きめのレンジを行き来し、右往左往してやられる人が続出しました。

Next: 大口によるパワープレーの神髄とは?/今後の見通し



パワープレーの真髄

私はこれをパワープレーの真髄だと見なしています。なぜなら、レンジの上下にいる本物の売り買いのニーズとは争わず、むしろそこでは同じように売り買いしながら、高値安値を探る動きをしているからです。

パワープレーが効くのは、相手に余裕がなく、驚いて自分の動きについてきてくれる時です。凪いだ相場で売り買いされると、ディーラーはついて行くしかないのです。

また、買い持ちでパンパンの時に大きく売られると、余力がないので、見ているだけか、ついて行くしかないのです。

上を見ていて、そのようなポジションができている時に売られると効きます。この位は下げるだろうと見ていても、それ以上に売り込まれると効きます。

パワープレーでは、市場の動揺を誘えないと負けるのですが、年初来の動きは、投機資金の勝ちだったと見ていいかと思います。

日経平均株価とドル円、今後の見通し

さて、日経平均16,000円、ドル円116円で底を打ったのかという問いですが、レベル感で売買することは避けた方がよいというのが、現場を知る人間としての助言です。

あえて相場観を述べるなら、確認のためには、もう一度、下値を試す必要があると思います。

パワープレーは、短期的には経済のファンダメンタルズを度外視した、腹の探り合いです。上げて動揺するのと、下げて動揺するのと、より困る人が多い方へ動かせば、そこからは自動的に相場が走ります。あくまで短期的には、です。

中長期的には、カネ余り相場は侮れません。世界の主要中銀は過去9年ほどの間に資金供給量を3倍以上に膨らませています。

基本的にこの動きは継続中ですので、日経平均16,000円、ドル円116円近辺で2番底となれば、本格的に上昇トレンドが復活するかと思います。投機資金はその時には、真っ先に買っているのではないですか?いま一番余裕がありますので。

【関連】米CNBCによる2016年米市場「10の懸念」~海運低迷、原油安etc.=矢口新

相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2016年1月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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