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【展望】マイナス金利導入で市場心理改善、売り込まれた決算銘柄に妙味=山本伸一

日銀によるマイナス金利導入の発表で乱高下に見舞われた日本市場。終わってみれば政策好感の買いが確認されるなど、ひとまずは投資家心理改善が見込まれる状況か。2月1日からは決算もいよいよ大詰めを迎える。決算銘柄にはリバウンドが入りやすい局面と言えるのではないだろうか。(『プロの視点。今、乗るべき銘柄が見えてくる。』株式評論家・山本伸一)

市場はマイナス金利を好感。期待感が先行するなか決算は大詰めに

まずはこの1週間(1月18日週)の相場動向を振り返り

今週の株式相場は、調整色を強めた先週の流れから、月曜日に見直されると、火曜日は軟化。水曜日も買い直されると、木曜日は弱含み、金曜日は乱高下するなど、神経質な展開となりました。

日経平均株価は、先週末の1万6900円台から、月曜日に1万7100円台に乗せたあと、火曜日は1万6700円台まで調整。水曜日に再び1万7100円台まで乗り直すと、木曜日は1万7000円台をキープ、金曜日には1万7000円の攻防から1万7500円台まで水準を切り上げてきました。

日経平均株価チャート 2016年1月29日終値

先週の日経平均株価は、昨年の安値を割り込むなど外部要因悪化とともに大幅調整が見られるなか、欧州での追加金融政策方針を好感した買いで下げ渋る動きでしたが、先週末の米国株の上昇や週明けからの円安推移と外部要因進展とともに25日月曜日には買い優勢の展開。ただ、26日火曜日には米国株安とともに利益確定売りに押され、場中も円高推移、中国株安が逆風となるなど、売り直されました。

米国株反発とともに見直し買いが優勢、株価指数は前営業日下落分を埋めた水曜日から、米国金融政策は市場予想通り現状維持、景気認識に関しては注視する姿勢を示し、利上げペースに変更はなく、米国市場は手仕舞いを誘う流れ。木曜日は出尽くし売り、さらに翌営業日の日銀金融政策決定会合を控えての様子見ムードが支配していました。

甘利大臣辞任の影響が懸念された金曜日には、米国株反発に円安推移の外部要因進展を好感した買いが先行。その後は午後発表に日銀金融政策決定会合を睨んで手仕舞いで軟化しました。

ただ、午後には日経が「日銀マイナス金利導入」の報道で動意付くと、後場で明らかになった日銀金融政策決定会合の政策声明では観測報道通り「マイナス金利導入」を伝え、さらに「必要な場合にはさらに金利を引き下げる」と発表。金融政策を好感した買いで円安が加速、株式も先物主導で浮上したあと、買い一巡後はゼロ金融政策に対する影響を懸念した売りで軟化する乱高下に。

売り一巡後は急速に持ち直し、プラス転換を果たすと緩和効果に期待した買いを集め、高値圏まで持ち直しています。

値動きの激しかった個別銘柄をおさらい

個別銘柄では、金融政策確認後の円安推移、指数反騰でトヨタ<7203>ソニー<6758>富士重工<7270>マツダ<7261>など外需関連が好調。

トヨタ<7203> 日足(SBI証券提供)


ソニー<6758> 日足(SBI証券提供)


富士重工<7270> 日足(SBI証券提供)


マツダ<7261> 日足(SBI証券提供)

ファナック<6954>は決算売りに押されたものの、日経平均株価構成比率上位のファーストリテイリング<9983>、ソフトバンク<9984>の上昇も指数を押し上げています。

ただ、金曜のランチタイムに伝わった日銀の金融政策決定会合でマイナス金利導入が伝えられると、三菱UFJFG<8306>三井住友FG<8316>みずほFG<8411>メガバンクが大幅安。第一生命<8750>らの保険も売られています。

一方で、銀行からの資金流入期待で、三菱地所<8802>、三井不動産<8801>、住友不動産<8830>の不動産が買われるなど、明暗が分かれました。

内需系大型株のNTT<9432>JT<2914>も好調。また、決算銘柄のサイバーエージェント<4751>、小糸製作所<7276>、オリエンタルランド<4661>、自社株買いのヤマトホールディングス<9064>などが物色を集めています。

NTT<9432> 日足(SBI証券提供)


JT<2914> 日足(SBI証券提供)

一方で、ファナック<6954>が暴落。28日木曜日引け後に発表した第3四半期決算に併せて通期業績予想の下方修正を明らかにしており、投げ売りに押されました。同じく決算開示のキーエンス<6861>、NEC<6701>も決算売りに押されており、減額修正のオムロン<4661>、キーエンス<6861>も下げが目立っています。

ファナック<6954> 日足(SBI証券提供)

今週人気を集めていたサイバネットシステム<4312>なども拡張現実・仮想現実関連のテーマ人気とともに短期資金流入が確認されたものの、利益確定売りが上値を抑えたほか、日銀金融政策確認後は中核銘柄に資金シフトが確認されディーリング対象の同社株などに対する売買も手控えられている場面も見られています。

サイバネットシステム<4312> 日足(SBI証券提供)

新興市場では、インベスターズクラウド<1435>、ムゲンエステート<3299>、ファーストブラザーズ<3454>、プロパスト<3236>、クルーズ<2138>、構造計画研究所<4748>などが賑わいました。

Next: 【展望】マイナス金利導入で好感の買いを確認|決算もいよいよ大詰め



市場はマイナス金利導入を好感。投資家心理改善が見込まれる状況か

さて、米国株反発の見直し買い先行から金融政策睨みで手仕舞いを誘ったあと、金融政策確認後の後場の株価指数は乱高下。マイナス金利導入のサプライズに揺れた本日の株式相場ですが、終わってみれば政策好感の買いが確認されており、ひとまずは投資家心理改善が見込まれる状況でしょうか。

日経平均株価は急反発。29日金曜日の政策声明確認直後に高値1万7638円まで買われたあと、前場安値割れの安値1万6767円形成から、1万7500円台を奪回して引けました。日中値幅は871円と大きく動いています。

金融政策の「マイナス金利導入」に関しては、昼休みに一部報道が伝わったあと後場寄りに期待感で相場反転、その後の政策声明とともに買い気を強めると、メガバンクの調整など政策導入による懸念も高まり、一旦は売り直される場面もありました。

ただ、先月12月18日にも政策決定会合で金融緩和補完措置導入、金融緩和遂行措置が伝わり、買い進まれたあと調整していた経緯から、同時に多くの銘柄も調整しましたが、円安推移とマイナス金利導入効果の円売りが強まり、外需関連など中核銘柄を中心に上昇。その後は多くの銘柄も買い直されました。

日経平均株価のチャートでは、一旦は25日移動平均線(1万7683.13円)に迫り、5日移動平均線(1万7108.69円)をサポートにローソク足も下ヒゲ陽線を形成。需給面やテクニカル面では5日線を下値支持に25日線奪回を目指す流れが意識されてくるのではないでしょうか。

売り込まれた決算銘柄の値動きに注目

日銀のマイナス金利導入が投資家心理改善に効いていますが、今週に続いて来週も決算発表シーズンが大詰めを迎えます。業績開示が相次ぐ流れで、企業業績確認とともに様々な株価反応が確認されると思われます。

ただ、やはり軟地合いのなかでも期待感が先行していた銘柄には出尽くし売りが出やすくなっています。あくまでも今回の決算確認とともに好反応が見られているのは売り込まれていた調整銘柄が中心です。

そこで、来週は「売り込まれた決算銘柄の値動き」に注目してください。

開示情報を確認しながら、事前予想を上回る内容で四季報など市場コンセンサスを上回った銘柄などは、決算開示直後から素直に評価を集めることでしょう。今回の決算シーズンでは全体調整とともに株価水準を落としている銘柄も多く、期待通りの決算内容でも再評価が期待できる状況です。とくに直近、値下がりが目立っていた銘柄などは見直し買いが入りやすい地合です。

来週以降はさらに決算発表が増加。本日の相場浮上で期待感も先行した形ですし、開示直後の反応を捉える決算ディーリングに優位性がありそう。全体調整とともに売り込まれた決算銘柄の反騰を捉えるチャンスではないでしょうか。

【関連】甘利大臣辞任が招いた「マイナス金利導入」~失われた日銀の独立性=近藤駿介

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※チャートと太字はMONEY VOICE編集部による

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