日銀が1月29日の日銀金融政策決定会合で導入を決めたマイナス金利は、「賛成5、反対4」という僅差で導入が決まったが、マイナス金利に賛成した委員は全員が第2次安倍内閣によって任命された委員で、反対した4人の政策審議委員は全員が民主党政権下で任命された委員だった。
プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるメルマガ『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』がまぐまぐ大賞2015メディア賞を受賞。
現在の日銀の金融政策は「政治的判断」によって行われている
日銀の金融政策は政局次第?
日銀がマイナス金利導入を決めた1月29日に発表された経済指標は、鉱工業生産指数が2ヶ月連続で前月比マイナス、実質消費支出が4カ月連続のマイナス、消費者物価の先行指標となる東京都区部消費者物価(コア)が前年同月比マイナス0.1%…。
どこをどう見たら「わが国の景気は、企業部門・家計部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用」しているという判断になるのか。
わが国の景気は、企業部門・家計部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用するもとで、緩やかな回復を続けており、物価の基調は着実に高まっている。
金融政策は「経済指標次第」と繰り返しているFRBに対して、日銀の金融政策は「市場動向次第」「政局次第」。
市場が「円安・株高」に反応したことで、「円安・株高」以外に成果をあげられていない安倍総理と「金融に疎い行政官」黒田日銀総裁は浮かれているかもしれないが、将来の日本は滅茶苦茶な「金融政策のツケ」を払わせられることになる。

日経平均株価 5分足(SBI証券提供)

米ドル/円 5分足(SBI証券提供)
財政問題では政策当局に洗脳され「将来世代にツケを回すな」と声高に叫ぶ人も、理解できない「金融政策のツケ」に関しては何も言わない。
「円安・株高に反応する政策は良い政策」という単純な評価基準から脱さない限り、政府と日銀の暴走を許し、「金融政策のツケ」がどんどん膨らんでいく結果になる。
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