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イギリスで撤廃が進む「セルフレジ」なぜ有人レジに回帰?逆行する日本に必要な視点とは=Miho

お会計時に便利な「セルフレジ」といえば、スーパーやコンビニ、ファミレスなど、生活に根付いたお店で見かけることも当たり前になってきました。しかし日本よりも先に導入し、普及していたイギリスでは、昨今セルフレジを撤廃する動きがあります。便利でコスト削減につながると思われていたセルフレジですが、なぜイギリスでは日本と逆をいっているのでしょうか。

プロフィール:Miho(ミホ)
大の苦手科目だった英語を克服し、オーストラリアの大学院で博士号を取得(日本語応用言語学)、現在は英国の大学で教鞭をとる現役講師がお伝えする『私のIELTS英語学習法』にて、IELTSのスコアを短期間でアップした経験を元に、IELTS受験や日常会話に役立つ英語表現の解説など、英語学習に関する情報を発信中。イギリス日常生活の一コマもご紹介します。

イギリスからセルフレジが消える?

早いもので2024年も9月になりましたね。8月は地震や台風で少し落ち着かなかったと思いますが、皆さん、どこか出かけられましたか?

この夏、私は日本に帰国できませんでしたが、昨年数年ぶりに帰った際、少し驚いたことがあります。それは、スーパーにセルフレジが増えていたことです。

しかも、商品のスキャンや打ち込みは店員さんが、支払いは機械でお客さんが行うタイプの「セミ・セルフレジ」が多いことにも驚きました。ちなみに、イギリスのスーパーのセルフレジは、商品の入力から支払いまで、全て自分で行います。

私が、イギリスに住み始めた2015年には既に、ほとんどのスーパーが、このタイプのセルフレジを導入していました。その後も増え続け、今では、当たり前のように置いてあるセルフレジですが、昨年の11月、この流れに逆行するニュースがありました。

それは、イギリス北部でチェーン展開しているスーパー「Booths(ブース)」が、ほとんどの店舗からセルフレジを撤去することを決めたというニュースです。

※参考:Self-service: Booths supermarket puts staff back behind its tills – BBC News(2023年11月10日配信)

BBC Newsに掲載されていた、ブースの最高経営責任者の話によると、「セルフレジは遅く、信頼性に欠け、どう見ても人間味がない」という顧客からの度重なる指摘が、今回の決定に繋がったそうです。

上記の記事によると、

  • バラ売りの果物や野菜、パンなどの商品にはバーコードが付いていないため、画面上で、自分で該当する商品を選ばなくてはいけない。そのため、混乱する顧客も多い。
  • お酒を買う時の年齢確認に時間がかかる。

という問題も、顧客から挙がっているそうです。これらの点は、私も実際に経験しているので、とてもよく分かります。

選択肢は増えることが大切

イギリスのスーパーでは、人件費削減のためだけでなく、混雑時のレジの待ち時間を少なくするためにセルフレジが設置されているそうです。しかし、先ほどお話ししたような問題点に加え、機械自体の不具合もよく起こるため、結局時間がかかってしまうことも。

また、イギリスのスーパーでは、対人レジで、お客さんと店員さんが会話を楽しんでいる光景をよく見かけます。それで、ブースのセルフレジ撤去が発表された際、「一人暮らしのお年寄りにとって、レジでの会話が唯一、社会との接点になっていることもあるので、対人レジに戻すことに賛成!」という読者の意見が、イギリスの大手新聞『The Guardian』に掲載されていました。

※参考:‘They rile me’: views on the pros and cons of UK supermarket self-checkouts – The Guardian(2024年5月29日配信)

しかし、上記の記事には「神経発達症の人にとっては、自分でできるセルフレジはとても快適だ」という意見も載っており、セルフレジの必要性も感じました。お年寄りだけでなく、様々な人が生きやすいインクルーシブな社会のためには、どちらか一方に偏るのではなく、選択肢が増えることが大切なんだと、個人的には思いました。

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Image by:Pack-Shot/Shutterstock.com

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