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石破「反アベノミクス内閣」の本質と期待値は?大胆人事の裏にある思惑=斎藤満

石破内閣がスタートしました。難関と見られた人事では石破総理の本質を示唆する思い切ったもので、随所に光るものがみられます。総裁就任前に解散総選挙の日程を口にする「勇み足」もありましたが、小泉選対委員長には、論敵立憲民主の野田代表の先手を打って選挙戦を有利に進める狙いがあったとみられます。この内閣の本質から、今後の政策を読み取りたいと思います。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年10月4日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

恐るべき人事

事前には人事で苦労しそうだとされながら、ふたを開けてみると、恐るべき人事を提示しました。見事なまでに安倍派を切り、反アベノミクス内閣を組成しました。これを象徴する人事が村上誠一郎総務大臣と城内実経済安保大臣の起用に表れています。

石破総理自身、安倍元総理には冷や飯を食わされ、安倍派が主流の自民党の中では長い間浮いた存在で孤立していました。積年の思いが、今回の閣僚人事で安倍派の登用を排除し、選挙での公認権者として、裏金まみれの安倍派の公認にはかなり厳しいチェックを入れる模様です。

そしてメディアの元締めともなる総務大臣に登用した村上誠一郎氏は、かつて安倍総理を「国賊」と厳しく批判した人物で、反アベノミクスの権化のような存在です。彼を総務大臣に任命した時点で、周囲からは驚きの声が上がりました。「安倍派ヨイショ」の政治評論家、メディアが今後どう動くか注目されます。

また経済安保大臣に任命された城内実氏は、当初森派(清和会)に所属していましたが、その中でただ一人郵政民営化法案に反対した人物です。その間、当時の安倍幹事長からさんざ説得工作にあったのですが、これを拒否して反対票を投じました。このため一時自民党から離党勧告を受け、復党後も森山派から無派閥の立場をとっています。

また、所得倍増計画を打ち出し、一見石破総理の財政再建路線に反する印象を与える加藤勝信氏を財務大臣に任命したことをいぶかる向きがありますが、ここは完全に石破氏が主導権を握っています。総裁選で議員票を16票しか取れなかった加藤氏は、本人の投票分を除くと15票になり、20名の推薦人のうち、少なくとも5人が裏切って他の候補に入れたことになります。

党内からの信認を失い、総裁選では最下位に落ちた加藤氏を財務大臣に救い上げた石破総理に、加藤氏は頭が上がらず、絶対服従の立場とならざるを得ません。さらに、石破総理が防衛問題の専門家であるほか、小野寺政調会長、中谷防衛大臣、岩谷外務大臣と、日米安保に関わる重要ポストに、石破防衛ファミリーを起用、チーム力を強化しています。

反アベノミクスを貫けるか

このように、旧安倍派を徹底的に排除し、反アベノミクス内閣を組成したことに、当然ながら旧安倍派からは批判と不満の声が上がっています。萩生田氏もその一人で、今回の人事に問題ありとしています。しかし、裏金問題で説明責任を果たさず、けじめをつけなかった安倍派幹部には、この人事で相応の対応をしたことになり、今後選挙での公認の扱いなどでも厳しい対応がとられそうです。

その中で、党内からの不満や市場の反発に、石破総理の考えが揺らぐリスクは否定しきれません。かつて総裁選初期に金融所得課税を打ち出したとたん、市場から株売りの洗礼を受け、関係者から批判の声が上がったため、その後かなりトーンダウンした経緯があります。

金融政策には、かつてのアベノミクスには批判的で、金融政策の正常化を進めるべきとの立場です。しかし、石破総裁決定後、株式市場が売られ気味で、「石破売り」との言葉まで聞かれる中で、「金融政策はしばらく緩和が必要」と述べています。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

株価の反落は、まさかの高市期待買いの反落や中東の不安売りが重なったわけで、必ずしも石破政策を嫌気した売りではなかったのですが、株価下落をかなり気にしています。

Next: 米国隷属に変化も?石破政権に期待できること

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