「米国株は終わりだ」――そんな声が、じわじわと広がっている。トランプ大統領の強硬姿勢、歴史的な高バリュエーション、巨大ハイテク企業への一極集中、膨張する財政赤字。悲観論の根拠を並べれば、確かに不安になる。だが、本当にそうなのか。本稿では、それらの悲観論を1つずつ検証し、長期投資家が取るべきスタンスを明確にする。(『鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編』鈴木傾城)
※有料メルマガ『鈴木傾城の「フルインベスト」メルマガ編』2026年3月1日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
米国株はもうダメだ?
最近、米国や米国株に対する嫌悪や悲観論がじわじわと拡散している。その理由のひとつは、2025年1月に就任したドナルド・トランプ大統領の恫喝的とも言える外交・通商姿勢にあるのは明白だ。
トランプ大統領の関税引き上げや同盟国への強硬発言が報じられるたびに、国際協調は破綻し続けている。政治的不確実性は企業活動に直結するため、市場参加者の一部は米国資産から距離を置くべきだと主張している。
その主張はよくわかる。多くの人々がそう思っているからこそ、ドルが売られ、ゴールドが買われているという現象もある。おまけに、現在の米国株はシラーPERを見ても、S&P500 PERを見ても、バフェット指数を見ても、明確な高値圏にある。米国株から逃げろというのは、この高値が維持できない不安も重なっている。
そして、この株高は金融引き締め下で発生している。
2022年から2023年にかけてFRB(連邦準備制度理事会)は政策金利を5%台まで引き上げ、量的引き締めも継続した。それにもかかわらず、2024年にはS&P500が過去最高値を更新し、指数全体のPERは20倍前後と長期平均を上回った。

S&P500 週足(SBI証券提供)
引き締め局面での株高は直感と一致しないため、「金融操作で吊り上げられている」という疑念も生まれてきている。
金利が高止まりし、財政赤字も拡大するなかで株価が上昇するという現象は、多くの投資家に違和感を与えたのだ。通常は資金コストの上昇が企業価値を押し下げると理解されているからだ。
指数上位の巨大ハイテク企業数社の時価総額も極端に高い。
2024年時点でS&P500の上位10社が指数全体の約30%を占めている。これは過去数十年で見ても高い集中度である。アップル、マイクロソフト、エヌビディアといった企業の時価総額は単一国家の株式市場規模さえも上回っているのだ。
同時に、米国の政府債務残高は34兆ドルを超え、対GDP比は120%台で推移している。財政赤字も高水準であり、ドルの信用に対する懸念が語られる。
こういうこともあって、「米国一辺倒の投資はヤバい」という意見がどんどん力を持つようになってきているのだ。
これについての私の意見はこうだ……。
米国株の上昇はFRBのドーピングで上がっただけではないし、一極集中が不健全という論点もおかしいし、ゴールドが安全なわけでもないし、投資をしなければ良いというわけでもないし、米国株の次は新興国でも日本株でもない。
最終的に長期で保有して勝つ確率が高いのは、相変わらず米国株である。米国株からは撤退するなというのが私の意見だ。
少し頭を働かせたら正しい答えが出るはずだ
米国株の上昇は中央銀行の金融緩和による人工的な産物、すなわちFRBのドーピングで上がっているだけという主張がある。この議論は、株価を決める本質を取り違えていると思う。
いくらFRBが金融緩和でドーピングしたとしても、米国株の業績も成長性もクズだったら上がるはずがない。米国株が上がっているのは、そこにイノベーションと成長と期待があるからだ。
AIを牽引しているのはどこの国なのか、防衛を牽引しているのはどこの国なのか、金融を牽引しているのはどこの国なのか、製薬を牽引しているのはどこの国なのか、少し頭を働かせたらすぐに正しい答えが出るはずだ。
これらを牽引しているのは、ほぼ米国企業なのだ。