総裁選が久々に市場を動かしました。アベノミクス推進の高市候補と、緊縮財政・金融正常化を支持する石破候補による決選投票は、あたかも米国のトランプ対ハリスの戦いを先取りした形となりました。第1回投票では高市候補がトップに立ったことから、市場は金融財政の積極策を期待、金利は低下し、ドル円は146円台まで円安が進み、日経平均株価は4万円一歩手前まで上昇しました。
しかし、その後決選投票で石破候補が逆転勝利となったことから、ドル円は143円台に3円も円高となり、NY時間には142.19円を付けました。日経平均先物は2,000円を超える下落となりました。週明けの株式市場には下げ圧力となりますが、「高市緩和」で売られた金融株には買い戻しも期待されます。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年9月30日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
自民党はぎりぎり踏みとどまった
市場は失望したようですが、自民党にとっては裏金疑惑を機に凋落の危機にあったのが、石破総裁で何とか踏みとどまりそうです。
高市氏では立憲民主党の野田代表に押され、選挙に出れば議席を大きく減らす可能性がありました。石破総理なら、論客同士、野党に押されることもなさそうです。
また裏金問題、統一教会との関係などで自民党の「膿」を出せない高市総理では、自民党内は良くても、国民からの信認は回復できない面がありました。
本人は安倍派ではないと言っても、今回の総裁選で20人の推薦人のうち14人が安倍派議員であった高市氏が、安倍派とは無縁とは言えません。米国CFRは安倍派の清和会を潰そうとしているだけに、安倍傾斜の高市氏は苦しい立場になるところでした。
米国との関係も問題なし
日米関係という視点から見ると、高市氏よりも石破総理に期待する面があり、関係も悪くないはずです。
米国がトランプ大統領になれば、高市氏に追い風ですが、それでもドル高を嫌い、日銀に利上げを促しそうなトランプ氏と金融緩和持続を求める高市氏とでは軋轢が生じます。ましてCFR(外交問題評議会)系のハリス政権となれば、高市氏は苦しい立場になります。
その点、石破総理はCFRからも認められ、金融財政政策ではぶつからないとみられます。また石破氏がキリスト教徒でもある点も関係をスムーズにする面があります。仮に米国がトランプ政権となっても、その裏にいるブッシュ家との関係が悪くないので、トランプ政権とぶつかるリスクも小さいとみられます。
そして石破総理なら、米国に盲従するだけの日本から一歩前進するチャンスが生まれます。
日米安保ではそもそも米国は日本が外国から攻められたときに防衛する義務がある一方、日本は米国が攻められても防衛する義務がない分、日米地位協定を結ばされていました。
ところが安倍元総理が勝手に集団的自衛権を認める憲法解釈をしてしまった以上、日本も米国の防衛に加わることになり、この片務的な防衛関係が変わり、従って日米地位協定を見直すべきとの立場です。
沖縄もこれを強く求めており、石破氏はこれを認識しているからです。