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ドラギ追加緩和の狙いと“あり得る”米3月追加利上げ/日本景況感に黄信号

ついにECBが追加緩和を実施!まずはその内容を確認して、今後の相場にどのような影響を与えるか確認します。そして今週は米FOMCがあります。個人的には3月追加利上げもあるのではないかと思っています。さらに景況感に黄信号がともる日本と、原油、金、銅などコモディティ相場のポイントを見ていきます。(『毎月分配投信の本当のこと のりたマガジン』)

どう見るドラギ発言/米3月追加利上げはあるか/厳しい日本

欧州経済~ECBの追加緩和をどう評価すべきか?

まずは指標から確認します。

ユーロ圏経済指標【ユーロ圏四半期域内総生産(GDP、改定値)】 2016/03/08(火)19:00
*ユーロ圏四半期域内総生産(GDP、改定値)(10-12月期)19:00
結果 0.3% 予想 0.3% 前回 0.3%(前期比)
結果 1.6% 予想 1.5% 前回 1.5%(前年同期比)

ほぼ市場予想通りの結果ですが、前年同期比の方は少し上方修正されています。もともと低水準というのはありますが、各国が鈍化するなか、同じ水準を維持し続けているのは、やはり悪くはないように思います。

それでは次にECBの追加緩和内容を確認したいと思います。

欧州中央銀行(ECB)は10日、ユーロ圏の景気とインフレ率押し上げのため、包括的な金融緩和策を決めた。主な政策変更は以下の通り。

<金利>
*リファイナンス金利を0.05%から0.00%に引き下げ。
*中銀預金金利をマイナス0.30%からマイナス0.40%に引き下げ。
*限界貸出金利を0.30%から0.25%に引き下げ。

<資産買い入れ(量的緩和)>
*買い入れ規模を月間600億ユーロから800億ユーロに拡大。
*ユーロ圏内の金融機関以外の企業が発行する投資適格級ユーロ建て債券を買い入れ対象に追加。

<資金供給>
*条件付き長期資金供給オペ(TLTRO2)を4回実施することを決定。2016年6月から四半期ごとに行い、期間は4年。
*リファイナンス金利(現在ゼロ%)を適用。
*企業・個人への融資を増やした銀行はさらに優遇。最大で中銀預金金利(現在マイナス0.40%)まで金利を引き下げ。

出典:ECBが追加緩和を決定:主な政策変更 – ロイター(2016年3月10日)

リファイナンス金利の引き下げ」「限界貸出金利の引き下げ」「マイナス金利の拡大」に加えて、「量的緩和の拡大」の実施ということで、とりあえず期待に答えてくれた内容になったかなと思います。

個人的には思ったよりは良かったという印象。追加緩和を事前に告知してきたのもありますし、政策内容や規模もある程度想定できることですから、サプライズを出すのは難しいでしょう。

一番恐れていたのは、ここ最近、少し相場が持ち直していたので、出し惜しみして失望売りになってしまうことです。

相場の変動は色々な相場の意見を反映していますが、個人的には無難に通過してくれてとても良かったと思います。

ドラギ総裁の会見内容

次にドラギ総裁の会見内容を確認したいと思います。

本日決定した措置は、われわれが目にしている変化に対応する上で十分なものだ。われわれがデフレに陥っているとは思わない。インフレ率は数カ月はマイナス圏で推移するが、年内にはプラスに転じると見込んでいる。従来の想定よりも時間がかかっているが、われわれはデフレ状況にはない。日本とは異なる。

出典:ECB理事会後のドラギ総裁発言要旨 – ロイター(2016年3月10日)

そんなに悪い状況になっているわけではなく、今回の追加緩和で取り戻せる範囲内のものということでしょうか。マイナス金利を真似した日本が名指しされていますが、一緒にするなと言いたげです。

金利は長期にわたり、また資産買い入れ期間の終了後も極めて低い水準にとどまる。本日の観点、およびわれわれの措置が成長やインフレにもたらす支援を勘案すると、一段の金利引き下げが必要になるとは思わない。もちろん新たな事実が状況や見通しを変えることはあり得る。

出典:ECB理事会後のドラギ総裁発言要旨 – ロイター(2016年3月10日)

ECBの追加緩和発表で相場が上昇した後、下げに転じたのはこのドラギ総裁の発言が原因だとする報道はよく見かけました。

金利引下げの限界などというのはちょっと深読みしすぎじゃないかと思います。むしろ今回の政策と今後の見通しに強い自信を示したかっただけで、個人的には全く気になりません。

ただし次の言葉が続きます。

Next: ドラギ「望むだけマイナス幅を拡大できるのか。答えはノーだ」の意味



ドラギ「望むだけマイナス幅を拡大できるのか。答えはノーだ」の意味

これはいかなるマイナス金利も有益であることを意味するのか。銀行システムに何ら影響を及ぼすことなく、望むだけマイナス幅を拡大できるのか。答えは「ノー」だ。おそらくご存知の通り、われわれは階層構造の導入、こうしたすべてのオペレーションからの免除システムについて協議してきたが、最終的に理事会はそうしないことを決めた。制限なく金利のマイナス幅を拡大できると示唆したくなかったからだ。理事会はこの手段が引き起こす複雑な問題について認識を高めている。

出典:ECB理事会後のドラギ総裁発言要旨 – ロイター(2016年3月10日)

マイナス金利には銀行システムへの悪い影響があることを協調したいようです。

日銀が導入したような階層構造を導入することは、銀行システムへの影響を限定する良い役割がありますが、その安心感があることが、かえってマイナス金利拡大の歯止めをなくしてしまうとして問題視しているようです。

階層構造での保護とマイナス金利の拡大は、相反するところがあるのでなるほどと思うところはあります。

階層構造で銀行への直接的な保護をするよりも、マイナス金利拡大による相場への心理的な悪影響の方を重視したということでしょう。

初めて導入した日本の初期段階と、マイナス金利をすでに導入してきた欧州では、事情が異なるところもあるのでどちらが正しいとも言えないです。

ハッキリとマイナス金利の拡大を示唆したくなかったと言っていますが、制限はあっても余地は残しておくべきだったのではないでしょうか。

マイナス金利を発表する記者会見で、わざわざそれを否定するようなことを強調するなんて配慮にかける言い方だったと思います。

市場にとってはとても印象の悪い内容だったかもしれませんが、個人的には、やはりそんなに気にはしていません。

なぜなら制限はどこかにあるとしても、さらなる下げ余地がないと言っているわけではないからです。やりたくなくても、状況が悪くなればやるしかなくなるのではないでしょうか。

ただし日欧ともに、金融政策の余地が少なくなっているという方向性はあると思いますので、投資戦略としてはその辺を意識したいところです。今年後半から、翌年にかけては特にその辺りを重視してみようかと思います。

Next: 米国~FOMCで追加利上げは?イエレンは「やっておきたい」タイミング



米国経済~FOMCで追加利上げは?イエレンは「やっておきたい」タイミング

欧州の相場と同じように、ECBの追加緩和で上昇した後に下落しています。しかし週末には高値を更新して、とても強い動きになっていると思います。

NYダウ 日足(SBI証券提供)17213.31 +218.18 (+1.28%)

今後の展開ですが、17700ドル付近までの上昇は想定できると思います。ただし、次週は、FOMC(3/15,3/16)があります。

追加利上げするか、しないかで相場が変動することが想定できます。

先月確認したイエレンさんの発言やFOMC議事要旨などからも、相当な慎重論が広がっているのを感じていたところです。

3月の追加利上げも見送りかと思われていたところですが、個人的には追加利上げもあるのではないかと思っています。

ここ最近の経済指標は底入れの兆しも見せており、良い状況になっていきそうな期待が出てきています。相場も少し前と比べれば安定しています。ECBの追加緩和も無難に通過して良い影響を与えていると思います。

イエレンさんとしては、タイミング的にもやっておきたいところでもあると思いますので、ダメじゃなければ追加利上げをしておきたいのではないでしょうか。

追加利上げがあった場合、相場がどう動くかを予測するのは難しいところもあるのですが、ドル高円安に動いて株価は下げる可能性はあると思います。

ただし、追加利上げは経済の良さを示すものなので、単純に下げるとも言えない複雑さはあります。どうなるか分かりませんが、注目しましょう。

それから原油の動向も重要です。下げるかどうか重要なポイントにきていますので、原油が急落するようなら相場への影響もあると思いますので、合わせて注目しておきたいところです。

VIX指数はドル安円高の動きに表れていたのと同じで、週の前半は19付近と意外とジワジワ高まっていたようです。ECBの追加緩和後に、為替や株が動いたのと同じように、VIX指数も20にせまる上昇を見せています。しかし翌日には、週間の下値を更新してとても良い状況になっているのが感じられます。

ECBの金融政策という不安要素が、ECB会合前と後でハッキリと変わったことが感じられるものだと思います。

米国REITも概ね株価と同じような値動きになっていると思います。

330pt目前で、ブレイクすればさらなる上昇も!?と考えるところですが、この節目は強そうなので、そう簡単でもないと思います。

次週は、FOMCがありますが、追加利上げとなれば、状況は大きく変わってくる可能性もあると思います。やはり金利の急上昇が起これば、下げる可能性もあると思います。

金利を確認してみます。

米国国債10年(SBI証券提供)

すでに週末に金利が上昇してきています。もしかしたら、追加利上げを意識した相場の動きが出始めているのかもしれません。追加利上げを見送ったら下げてしまうと思いますが、注目しておいてください。

ドル円の動きにも影響すると思いますので、米国REITに投資していない人も注目です。追加利上げを見送った場合に金利低下で、ドル安円高の動きは注意したいところです。

Next: 日本~外部要因頼みの「本当に厳しい」状況、要人発言に注目したい



日本経済~外部要因頼みの「本当に厳しい」状況、要人発言に注目したい

まずは指標から確認していきます。

日本経済指標【四半期実質国内総生産(GDP、改定値)】 2016/03/08(火)08:51
*四半期実質国内総生産(GDP、改定値)(10-12月期)8:50
結果:-0.3% 予想:-0.4% 前回:-0.4%(前期比)
結果:-1.1% 予想:-1.5% 前回:-1.4%(年率換算)

速報から少し上方修正されています。少し良くなったとはいえあまり変わりはありません。

日本経済指標【国際収支・貿易収支】 2016/03/08(火)08:51
*国際収支・貿易収支(1月)8:50
結果:-4110億円 予想:-5300億円 前回:1887億円

市場予想よりは良かったもよう。

※前年同期比
輸出:-15.4%
輸入:-19.8%

貿易統計でも輸出の減少は顕著でしたが、悪化してきているのがよく分かります。原油安で輸入が下げているのは助かっています。

次に大注目の景気ウォッチャー調査です。
景気ウオッチャー調査 平成28年2月調査結果[PDF]

まずは現状から確認。

現状判断DI:44.6(前月比-2.0)

えーーーーーっ!嘘でしょ。こりゃダメだ、どんどん悪化してきている。(T_T)

企業動向は下落も小幅な動きとなっていますが、家計動向の悪化がとても目立っています。これ、次の四半期もマイナスあり得ますよ。

悪化要因として、株価の値下がりや、マイナス金利などの心理的な影響を挙げるところもありました。日銀の政策が消費に悪い影響を与えているとなると、これは非常にまずいです。

ここ最近、相場も安定を取り戻し、マイナス金利への理解も深まってきたと願いたいところですが、今後どう影響を与えるかかなり気になります。

これでも政府は財政出動をまだ考えないとは、心配になってきます。今後は政府要人による財政出動に関する発言に注目しておきたいと思います。

次に先行き判断DIです。

先行き判断DI:48.2(前月比-1.3)

持ち直しかけていた先行きも、再び低下。これは本当に厳しいです。

もし景気の低迷で企業業績の悪化が表に出てくるようになると、日本株の下落が気になります。ここからの日本株投資は、慎重に考えた方がいいかもしれません。投資戦略を考える上で、このことは頭に入れておきたいと思います。

黒田日銀総裁の講演

日銀の黒田さんによる講演がありましたので、紹介しておきます。
(3/7)【講演】黒田総裁「『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』への疑問に答える」[PDF]

以下、一部だけ抜粋。

日本の金融機関は、サブプライム問題やリーマンショックによる損失が小さく、資本基盤が充実していることから、高い健全性を保っています。

欧州との違いで、日本の金融機関は高い健全性を持っているというところは印象的です。

株高、円安の方向に力を持っているはずです。

株や為替の影響について言及するとはめずらしい。

日本銀行は、先行してマイナス金利を採っている欧州諸国で実施されている「階層構造方式」を採用しました。

ECBでは見送りましたが、スイス、スウェーデン、デンマークなどで採用されているみたいです。

Next: WTI原油はここからの下落に注意/今週の相場予測



コモディティ~WTI原油が上値メド38ドルに到達、ここからの下落に注意

原油は上値メドの38ドル付近まで到達しました。ここまでは十分、想定なのですが、ここからの下落に注意となります。

WTI原油先物 日足(SBI証券提供)

ただし、今のところ下げる気配もなく、高値を維持しています。もしかしたら上値ブレイクして、上昇転換するのか!?

個人的には信じがたいところもあるのですが、テクニカル的には堅調でWボトムも形成しているし、あり得なくもないと思えてしまうところはあります。

私の予想とは違い上昇していくようなら、それはそれで相場にポジティブな影響を与えるので良いことです。とにかく次週、どう動くかに注目していてください。CRB指数も原油同様に調子を取り戻しています。

は小動きで横ばいとなっていますが、相変わらずの底堅さで堅調です。とても強い金の動きに驚きますが、堅調さが続くようだと単なる一時的なリスク回避ではなく、トレンド転換も意識していく流れになるかもしれません。

NY金先物 日足(SBI証券提供)

日欧のマイナス金利政策や、米国の追加緩和先送り、中国の金買いなど金が上昇しうる要素はあるのかもしれませんが、ちょっと理解し難いところの方が大きいです。

しょせんはやはりコモディティなので、投機筋による仕掛けの可能性もなくはないと思います。

今はまだ調整がなく押し目もない状態なので、まだ上昇トレンド転換したといえるわけでもないので、油断は禁物だとは思います。とにかく安心感というより、気持ち悪さの方が大きいのが個人的な印象です。

NY銅先物 日足(SBI証券提供)

はちょっと落ち着いていますが、下げは限定的で堅調さは維持しています。

今週の相場予測

次週はやはりFOMCが大注目です。追加利上げするのか?しないのか?また追加利上げを見送った場合、イエレンさんが現在の状況をどのように表現するかに注目です。

それから、FOMC前に米国の経済指標もありますので、こちらも意外と重要です。小売、物価ともここ最近の数字は悪くないと思いますが、さらなる良さがアピールできれば、追加利上げの後押しにもなるかもしれません。

日銀会合は何も期待していませんが、マイナス金利の進捗具合や評価を黒田さんの会見で確認したいと思います。

個人的に日本経済でかなり注目しているのは、輸出です。2月の貿易統計はしっかりチェックして、中国をはじめとする景気減速の流れを感じておきたいと思います。

毎月分配投信の本当のこと のりたマガジン』(2016年3月13日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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