天然ガス採掘に必要なポンプを製造する米国企業が従業員の8割を解雇すると発表。「シェールの繁栄はこれで終わった」とも言える状況になっています。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)
※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2019年10月21日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
業界に異変?世界最大規模のエネルギーサービス企業もリストラへ
天然ガス採掘用ポンプの製造メーカー、従業員の80%を解雇
天然ガス採掘に必要なフラク・サンド(Frac Sand)の油田注入用ポンプの製造メーカー・Gardner Denver社の首切り報道が出ました。海外メディアの非常に短い報道です。翻訳しながら解説します。
Gardner Denver社の副社長Edward Bayhi氏の説明によると、エネルギー産業での変化と技術進歩により、従業員の8割を解雇するとのことである。
Gardner Denver社は、天然ガス産業向けのポンプを製造している企業である。
出典:Tipton manufacturer to lay off 80% of its workforce – WTAJ(2019年10月10日配信)
本当の解雇理由は需要減少
「開発した新製品ポンプの能力向上で従業員の8割を解雇する」なんぞは戯言ではないか?と思い、同社の業績をチェックしました。
同社の売上構成を見ますと、2019年第2四半期では以下の通りになっています。
・産業分野:334M$の売上(前年同四半期比で5.5%増加)
・エネルギー分野:223M$の売上(前年同四半期比で16.8%の減少)
・医療分野:72M$の売上(前年同四半期比で12%の増加)
下図をご覧ください。これは同社の業績発表の一部です。問題のエネルギー分野の見通しや実績を紹介します。
(ア)エネルギー分野の動きですが、受注が前年第2四半期対比30%のマイナスになっているのです。この受注の減少が何カ月後かに、売上減少として出てくるのです。
(イ)2019年通年見通しの変化です。4月時点では横ばいと見ていましたが、7月になって急激に悪化して30%減少とみています。
(ウ)第2四半期の売上比較(2018年対2019年)です。産業分野では5%プラス、医療分野で12%プラス、そしてエネルギー分野で17%の減少です。
シェール油田でのFrac Sand注入ポンプの需要が最近になって大きく落ち込んでいることが、80%の人員削減の大きな原因なのです。
原油価格低迷や、投資家意欲の減退、同じ分野での他の企業の動きを横目で見ながら、同社経営陣は「シェールの繁栄はこれで終わった」と見ているのでしょう。
Next: 世界最大規模のエネルギーサービス企業もリストラへ。業界に何が起きた?
世界最大規模のエネルギーサービス企業もリストラへ
続いて、オイル・シェールガス採掘業者に向けて技術サービスを売る企業であるハリバートン社(Halliburton)のリストラ解雇の短い報道を紹介します。同社は世界最大規模のエネルギーサービスの多国籍企業です。
こちらも同様に、海外の報道を翻訳しながら解説します。
ハリバートン社は、米国で約650人の技術者を追加解雇すると発表。
これは原油価格の低迷、および今後の配当金確保のためのリストラ策とのこと。
今年の上半期に、同社は約8%に相当する人員の首切りをしてきた。
出典:Halliburton cutting 650 jobs as U.S. oilfield slowdown accelerates – Reuters(2019年10月10日配信)
シェールオイル・ガス採掘業者からの需要が激減している
下図をご覧ください。同社の2019年第1四半期の業績データから作成した、同社の地域別売上高です。単位はM$です。
北米地域:10%減少(上半期比較)
中南米地域:24%増加(同)
欧州・アフリカほかの地域:9%増加(同)
中東・アジア地域:8%の増加(同)
売上全体の約6割を占める北米地域で、10%の売上が減っているのです。となれば、シェールオイル・ガス掘削業者からの需要が減っていることになります。
それも第3四半期に入って、急激に減っている可能性があるということになります。
<初月無料購読ですぐ読める! 10月配信済みバックナンバー>
※2019年10月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
・現物以外は偽物/新しいペーパーゴールドの発売(10/23)
・採算が合わないし、油田寿命も短すぎる/工場閉鎖しても、販売店は問題無し(10/23)
・シェール業界の急激な需要の落ち込み:ハリバートン社も追加解雇(10/22)
・シェール業界の急激な需要の落ち込み:シェール・ガス掘削用ポンプ/(10/21)
・HSBC:1万人首切り/人民元建て取引が増える(10/20)
・不況の深刻化:航空貨物の減少/(10/19)
・米ドルだけは嫌だ/金・銀価格の違法介入操作で罰金(10/1)
・農機のJohn Deere社、またもや首切り(10/17)
・余り報道されない米国トラック輸送会社の崩壊/大型トラック・メーカーの首切り(10/1)
・米国新車販売実績/カナダ新車販売(10/15)
・嘘で騙された投資家のしっぺ返し:フィアット・クライスラー社の場合(10/14)
・ボーイングの現状/米国鉄道輸送量は減ったまま(10/13)
・手持ちの可採埋蔵量が減ってしまったから、どうする?(10/11)
・口座維持手数料と言う名前のマイナス金利(10/10)
・農業分野での需要が減ったので一旦破産/ビジネス機も不振なのか?(10/9)
・米国自動車不況でタイヤ工場も減らしたい/欧州の名門自動車部品メーカーも米国2工場を閉鎖(10/8)
・原油、ガス採掘業者の苦しみは続く(10/7)
・マレーシア新車販売:2019年8月(10/6)
・謎の一晩だけオカネを貸し出すと云うNY連銀(10/5)
・BoAの不正口座開設疑惑(10/4)
・米国の金銀の採掘量のピークは間違いなく過ぎ(10/3)
・全米各産業分野で、物流が大きく減少(10/2)
・米国金融業界の私的規制機関FINRA、JPM銀行に罰金/黒字の金鉱山(10/1)
→いますぐ初月無料購読!
※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2019年10月21日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
※太字はMONEY VOICE編集部による