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日経平均の理論株価は2万2,000円台…現在はリスクオン行き過ぎとなる一歩手前の状況=若林利明

昨年末の急落によって日経平均は1万9,100円台で底を打った後、回復軌道を辿り本年11月半ばには2万3,500円台に達しました。現在の状況を分析します。(『資産運用のブティック街』若林利明)

筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

※本記事は有料メルマガ『資産運用のブティック街』2019年11月26日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

ファンダメンタルズと市場リスクがクロスするなか、正常水準へ

堅調なファンダメンタルズと波乱模様の株式相場

株式相場は昨年末の急落によって日経平均は1万9,100円台で底を打った後、回復軌道を辿り本年11月半ばには2万3,500円台に達しましたが、ここにきて相場は停滞模様となり直近の11月22日は2万3,112円です。

ただ、この小幅な下落は今期中間決算の発表が出そろった結果、通期の業績予想が下振れしたためで、いわばファンダメンタルズの悪化に即した正当な調整と言えます。

下図はこうした株式相場とファンダメンタルズとの関係を見るグラフで、2018年3月期から2020年3月期まで過去3期について、日経平均とファンダメンタルズに基づく日経平均の妥当な水準を表す「理論株価」の推移を日次ベースで示します。併せて過去の変動実績を基に割り出した日経平均の変動の上限と下限を載せています。

グラフは2018年3月期の業績予想が発表される2017年5月から2020年3月期の業績予想が固まった、直近の2019年11月22日までを対象とします。

紺色の線が日経平均、赤線が理論株価、茶色の線が変動の上限、緑線が下限を示します。各指標について期初の2017年5月1日と終期の2019年11月22日の値を記しています。

日経平均、理論株価と変動の上限、下限(日次)2017.5.1~2019.11.22

日経平均は期初の1万9,310円から直近の2万3,140円まで2年半で3,830円、約20%と結果的には堅調な上昇となっていますが、その内実は大きく上下動を繰り返す荒っぽい相場状況でした。

2018年に日経平均は2万4,200円台で27年ぶりの高値を更新し、一方、安値は同年末に1万9,100円台まで下げており、年間で5,000円以上変動しています。

また、こうした絶対額の大きさもさることながら、同一年のうちに日経平均が変動の上限を上回り、かつ下限を下回るという事態は異例でまさに“波乱相場”と言えます。

日経平均はこうした2018年の相場を経て2019年10月まで一貫して理論株価を下回っています。市場は2018年末の急落の記憶による疑心暗鬼から抜けられない状態が続いていたと言えそうです。こうした心理が10月半ばに吹っ切れたように相場は上昇に転じました。

一方、理論株価は11月に入ってから前述の通期業績予想の下振れによって下落したため、日経平均は理論株価を一気に上回り逆転交差する結果となりました。市場の弱気からの脱却時期とファンダメンタルズの悪化の時期が重なったため、市場は強気含みの領域に取り残された形です。

以下でこうした状況をもたらしたファンダメンタルズと市場リスクについて根っこの構造にさかのぼって見ていきましょう。

Next: まずは、ファンダメンタルズを構成する日経平均と米ドルレートの推移を確認



ファンダメンタルズを支えてきた業績が一服

上図から理論株価、すなわちファンダメンタルズは安定した上昇基調を続けていますが、下図はその実態を見るグラフです。理論株価の構成要素である日経平均ベースの予想利益(以下予想EPS)と米ドルレートの推移を示します。

紺色の線が予想EPS、赤線が米ドルレートです。各指標名の枠内に期初と直近期の値を記します。

日経平均ベースの予想EPSと米ドルレートの推移(日次)2017.5.1~2019.11.22

米ドルは期初の111円台から直近の108円台まで緩やかなドル安・円高で推移しているのに対して、予想EPSは期初の148円から近時の高値で219円まで48%の大幅な増加となりました。その後、業績予想は11月からの下方修正に伴って直近時で204円まで7%下落しています。この間のファンダメンタルズの堅調な上昇と11月以降の低下は業績によって主導されたことが分かります。

こうした2つの要因の合成としてのファンダメンタルズが穏やかな上昇基調を維持してきた一方で株式相場が乱高下したのは市場リスクの変動によってもたらされたことになります。この市場リスクの大きさはこれまで明確な形(数値)では捉えられることがなかったため、当講座は市場リスクの大きさを「偏差値」という指標で規準化した指数、「リスク回避指数」(*)を開発、公表しています。以下で当指数によって市場リスクの変動の実態を見ていきます。

Next: 市場リスクは、通常の範囲の加減まで一気に達した状況



リスクオフを脱し、通常リスク領域の下端に迫る株式市場

株式相場は基本的に長期的にはファンダメンタルズに見合う水準に落ち着きます。これは上の図で日経平均が理論株価を挟んで上下に変動するものの、やがては理論株価に収れんすることで示されます。

しかし、時に相場がファンダメンタルズでは説明できない程大幅にかい離することがあります。相場が極端にファンダメンタルズを上回る場合は投資家がこぞって強気になりリスク資産を取りにいく(株式を買う)状態ということで「リスクオン」、逆に相場がファンダメンタルズを極端に下回る時は投資家がそろって弱気になってリスクを回避する、つまりリスク資産から逃避する(株式を売る)状態ということで「リスクオフ」と言います。「リスク回避指数」はこのリスクオンとリスクオフの状態を数値的に示す指標です。

下図はリスク回避指数の推移を示します。ここでも上図と同様に指標名の枠内に期初と直近期の値を載せています。

リスク回避指数の推移(日次)2017.5.1~2019.11.22

上図から市場リスクの水準は2017年5月初めと直近の2019年11月22日時点で41点~42点台で、ちょうど“行って来い”となっています。ただし、この間の市場リスクの変動は非常に大きく、2018年1月には20点台の「極端なリスクオン」の状態に接しています。株式相場はファンダメンタルズを大きく上回って上昇し、日経平均は変動の上限を超えています。

一方、同年12月には80点の「極端なリスクオフ」を超える領域に達しました。ここで、日経平均は変動の下限を下回っています。ちなみにこの時の同指数の水準は過去にない初めての高いレベルとなります。

市場リスクは2019年に入り徐々に低下し、10月に通常リスクの範囲に戻った後そのまま通常リスクの下端となる40点近辺にまで達しています。この水準で一服すれば通常のリスク状態に収まります。

市場リスクが通常状態にあれば株式相場はファンダメンタルズに沿った水準に落ち着くものと見られます。すなわち、日経平均は理論株価に向かって行くものと見られます。直近の理論株価は2万2,200円台となっています。

※本記事は有料メルマガ『資産運用のブティック街』2019年11月26日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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資産運用のブティック街』(2019年11月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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