ボラティリティ・インデックスは「恐怖指数」とも呼ばれ、これが低下すると「恐怖が低下している」「下落懸念が和らぐ」と報じられることが多い。しかし、こうした見方は必ずしも正しくない。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』近藤駿介)
プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。
ボラティリティ・インデックスの低下=下落懸念の緩和とは限らない
「1カ月後の予想ボラティリティ」という妄想
日本経済新聞(23日付)の「マーケット総合」欄では、「日経平均VI、今年最低」という見出しで次のように報じられていた。「市場が予想する日経平均株価の変動率を示す『日経平均ボラティリティ・インデックス(VI)』が22日に22.64となり、今年最低を更新した」。記事では「日経平均の下落懸念が和らいだ」という解説を加えているが、これほど単純化して考えていいのだろうか。
ボラティリティ・インデックスは「恐怖指数」とも呼ばれていることもあり、これが低下すると「恐怖が低下している」「下落懸念が和らぐ」と報じられることが多い。
しかし、こうした見方は必ずしも正しくない。そもそも、この記事にあるように、「日経平均VIはオプションの取引価格を基に算出し、投資家が日経平均の今後1カ月の変動率をどのように予想しているのかをしめす」という説明は必ずしも正しくない。
日経平均のオプション取引を行っている投資家のうち、実際に1カ月後のボラティリティを予想してトレードしている人がどれだけいるのだろうか。現実問題として皆無に近いのではないかと思っている。
〇〇総合研究所など、実際に市場でトレードをしたことのない有識者の中には、ボラティリティ・インデックスから1カ月後のボラティリティを算出することができると主張している人もいる。
しかし、1カ月後の予想ボラティリティが、一般投資家にどれほどの価値のあるものなのか。
ほとんど知られていないが、ボラティリティというのは3つある。ボラティリティ・インデックスは、その内の一つを指数化したものに過ぎない。それゆえ、ボラティリティ・インデックスから1カ月後のボラティリティを算出できるというのは、現実を知らない人が描く妄想に過ぎない。
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「恐怖指数」ではなく「誤解指数」~動向判断には有益も相場予想は困難
小生は1990年からボラティリティの研究をしており、ボラティリティ・インデックスが存在する前からオプション市場のボラティリティを独自に算出(実際には数学科出身の若手に計算するよう指示しただけ)して、現物株式市場のボラティリティとの比較を行ってきた。
こうした分析をしてきたのは、オプション取引によって付けられるボラティリティというのは、「恐怖指数」ではなく「誤解指数」という側面を持っており、市場動向に影響を及ぼすと考えたからだ。
こうした研究によっても、相場を予想することは難しい。しかし、近い将来の相場動向を判断するうえでは有益なものだった。
少なくとも、市場分析をするうえで「株価」以外の基準から多角的に分析することは、確度を上げることに貢献するもの。「必要性のない株価」を必死に分析するよりは、効果的だといえる。
こうしたオプションなどデリバティブ取引が現物株式市場に及ぼす影響等については、27日(日)に開催する講座でお話をするので、興味のある方はふるってご参加ください。人数に限りがありますので、お申込みはお早めにお願いします。
【3月27日(日)講座概要と申込ページ 】
・第1部「中学一年生の数学で分かる『オプション取引講座』」 10:30〜12:15
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『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2016年3月23日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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