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天才投資家ジム・ロジャーズが言う「早く日本から逃げろ」は本当か?金融のプロが裏読み=俣野成敏

今回は「名言に学ぶシリーズ」の続編をお送りします。

本号では、ジム・ロジャーズ氏の名言を取り上げたいと思います。親日家であると同時に、かなり辛口なのが、ロジャーズ氏の発言の特徴です。氏からのメッセージを、どう受け止めればいいのか?について、金融の専門家とともに紐解いていきたいと思います。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編

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※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2019年12月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
ビジネス書著者、投資家、ビジネスオーナー。30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、自らの投資経験からマネーリテラシーの向上が不可欠と考え、啓蒙活動にも尽力している。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが11万部に。著作累計は45万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を4年連続で受賞している。

「中国や韓国に移住したほうが、よほど豊かに生活できる」本当?

1. 海外に逃げられない日本人を待っている未来とは

今回も、金融事情に詳しい大前雅夫さんをゲストにお呼びしています。大前さんは、当メルマガの金融情報監修をしてくださっているFAN GLOBAL SOLUTION PTE. LTD.のCEOにして、外国為替、金融商品の専門家でいらっしゃいます。

プロフィール:大前雅夫(おおまえまさお)
高校、大学時代をアメリカで過ごし、金融業界に就職。HSBC(香港上海銀行)東京支店勤務後、HSBC香港本店では、日本人初のチーフトレーダーに就任。その後、モルガン・スタンレー社、バークレーズ銀行などを経て独立。2012年よりオオマエ・キャピタル・マネジメント社を設立。シンガポール通貨庁に登録し、ファンド業務を行う。現在、セカンドキャリアとして資産形成や金融教育を支援するためのFANを主宰し、シンガポールを中心に自身の経験を活かした講演活動等を行っている(以下、本文中について、名前が出てこない限り同一話者、敬称略)。

【「早く日本から逃げろ!」は本当か?】

それでは、最初に解説するのは、こちらの名言です。

<名言ピックアップ その1>

「私が日本に住む10歳の子どもであれば、一刻も早く日本を飛び出すことを考えるだろう。中国や韓国に移住したほうが、よほど豊かに生活できるのだから」

出典:『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』著:ジム・ロ
ジャーズ/刊:講談社+α新書

俣野:では大前さん、本日もよろしくお願いします。

今回、取り上げる書籍は、ジム・ロジャーズ氏の最新作です。タイトルにあるように、日本への警告の書、という内容となっています。

書籍の中には、日本が抱えているさまざまな問題点や、今後、考えられる未来、次に台頭してくるのはどこの国か、なぜそこに将来性があるのか、といったことが書かれています。

ロジャーズ氏が、日本に関して特に憂慮しているのが、少子高齢化による人口減と、国による膨大な借金です。それらを受けて、読者に「日本から早く逃げろ」と呼びかけているのが、上記に取り上げた名言になります。

氏は、「歴史に学べ」「変化を感じなさい」というキーワードを、本書の中ですごく主張されています。実際、それで実績を出されてきた方なので、説得力があると思いますが、大前さんはどうお感じでしょうか?

大前:著名な投資家であるジム・ロジャース氏に物を申すとは、大変恐縮ではありますが、実はこの方は、日本に限らず、香港やタイなどに対しても、割とネガティブな発言をしています。もとから、そういう口調の方なのだと思います。

よって、ロジャーズ氏の主張としては、「ヤバイぞ、逃げろ」ではなくて、「現状に甘んじていないで、変化を受け入れ行動しなさい」という、叱咤激励のほうだと思います。

もともと氏は、日本のことを「逃げ出さなければならないようなひどい国だ」とは言っていません。むしろ、日本のクオリティを賞賛しています。

Next: 無策で逃げても意味がない? 中国・ロシアほかの将来性にどう乗るか



海外移住は逃げるための手段にはならない

俣野:本の中では、「今後はロシア、韓国、北朝鮮、中国に将来性がある」という主張に、多くのページが割かれています。

それに対して、「日本はもう斜陽だ」という意見は、私たちの周りでもしばしば耳にします。これについては、どうお考えでしょうか?

大前:ロジャーズ氏は、前々から「以後は、このような世の中になるから、お金もそちらに向かって動く」「だから、こういうチャンスがある」ということを主張してきています。

氏は、単に世の中の趨勢(すうせい)を話しているだけであって、それをどう取るかの判断は、個人に委ねられているのではないでしょうか。

そもそも、「日本がダメになる」「借金で破産する」というのは、もうずいぶん前から言われてきていることです。

仮に、「日本はダメだから他の国に移住しよう」といったところで、簡単なことではありません。

ほとんどの日本の方は、当然、日本に根付いていますから、それを移住するとなれば、莫大な労力とコストがかかります。それに万一、移住先で上手くいかなかった場合はどうするのか?といった問題もあります。

たとえば現在、中国の人々も世界中に移民しています。ところがよく見ると、移住先に出身地をベースとした互助会があったり、または宗教的なネットワーク等でつながり、新天地でもサポート基盤があったり、といった受け入れ態勢が整っている場合が大半です。

もちろん日本の方々も、海外に日本人コミュニティなどをつくってはいますが、規模と結束力の点で、中国の華僑ネットワークほどではありません。

要は、人はどこへ行こうが、人間関係もなく、社会から切り離された状態で生きていくのは難しい、ということです。

俣野:移住は逃げるための手段ではない、ということですね?

大前:はい。かえって「日本は危ない」と言う人が出て行くことによって、人材間の競争が少なくなり、日本に残ったほうが、逆に優位になるかもしれません。

結局、場所だけ変えても意味がないのです。

沈みゆく日本で、自分はどう振る舞うのか?

大前:今から45年ほど前に、日本ではオイルショックが起きたことをご存じでしょうか?これは中東で戦争が勃発し、OPEC(石油輸出国機構)が原油の供給制限を行い、輸出価格を大幅に引き上げたことが発端でした。

人々は、「石油の供給が止まれば、日本はモノ不足に陥るのでは」とパニックになり、買い占めが起きて、お店の商品棚が空っぽになりました。

当時は、「あと30年で地球上の石油が掘り尽くされる」と言われていて、みんな本気で心配したものです。

ところが、それから45年経った今でも、石油はまだあります。脱石油化の流れや、シェール革命等の技術革新、採掘の精度などが上がったからです。

確かに、ロジャーズ氏の言う「『今度は違う』『日本はそうはならない』と考えるのは危険だ」という呼びかけは、私たちに重要な示唆を与えてくれます。

だからと言って、「ここから逃げろ」というのは、また話が別だと思います。

それよりも、そういう危機があることを認識しつつ、リスクをどのように自らの中でヘッジしていくのか?と考えることが先決ではないでしょうか。

実際のところ、日本では今、出て行く人よりも、入ってくる人のほうが増えていますよね?コンビニや飲食店などで、働いている外国人の姿を見かけることも珍しくはなくなりました。

俣野:日本に魅力を感じてやってきている外国の方もたくさんいる、という事実にも目を向けるべきだ、ということですね。

Next: 日本はすでに“移民大国”になっている!? 日本を去るよりもやるべきこと



【日本はすでに“移民大国”になっている!?】

俣野:ちょうど、外国人労働者の話が出たところで、次の名言に移りたいと思います。次の名言は、こちらです。

<名言ピックアップ その2>

「移民は国にアイデアをもたらし、活気を生み出してくれる。アメリカの場合、グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブックに代表される刺激的な企業のほとんどは、移民にルーツを持つ人物が創業したものだ」

出典:『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』著:ジム・ロ
ジャーズ/刊:講談社+α新書

俣野:少子高齢化が進む日本では、早くから移民政策について議論されてきたものの、これまでは地理的・歴史的経緯などから、日本人の外国人に対する警戒感には根強いものがありました。

しかし、昨今の労働力不足はいかんともしがたく、今年(2019年)の4月、改正出入国管理法が施行されています。この改正は、外国人に単純労働の道を開くもので、5年間で約34万5,000人の受け入れを予定しています。

ロジャーズ氏は、「人々が移民を嫌がる第一の理由は、外国人に仕事を奪われることだ」と書いています。世間には、「アメリカはもともと移民の国だから、あれだけ世界をリードする企業が誕生したのであって、日本でもそうなるとは限らない」という意見もあります。

大前さんはどうお考えでしょうか。

大前: 現実問題として、集約型労働者は、明らかに足りない状態です。「だったら、それをロボットにやらせよう」といっても、まだまだ人間でなければできないことはたくさんあります。そうなれば、必然的に「安い労働力をどこからか持ってくるしかない」という発想になりますよね。

ですから、「外国人に自分たちの仕事を奪われる」と言ったところで、実際はいわゆる3K(キツい、汚い、危険)と呼ばれる安い仕事の多くを請け負っているのが外国人、ということです――

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image by:マネーボイス編集部

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俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2019年12月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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