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親子上場はどう解消される?前田建設工業のTOBに前田道路は自社株取得で対抗

1月20日、前田建設工業は前田道路に対して、子会社化を目的としたTOBを実施すると発表。前田道路は、前田建設の保有する同社株式を取得する提案を行った。(『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』)

前田道路が前田建設工業のTOBに対するカウンター・オファー

同日に、親会社の買収に対して子会社が正反対の内容を提案

2019年1月20日、前田建設工業<1824>からの株式公開買付け(TOB)に対して、前田道路
<1883>は、「前田建設工業が保有する当社株式の取得及び資本関係解消提案に関するお知らせ」を発表した。
※参考:前田建設工業株式会社が保有する当社株式の取得及び資本関係解消提案に関するお知らせ

1.前田建設が保有する当社株式の取得

20,460,000株(持株比率:約24.37%)の全ての自己株式としての取得

2.背景と理由

(1)当社と前田建設との間で事業シナジーが見込まれないこと

1964年 前田建設と業務提携を開始
1968年 現在の社名への商号変更(旧社名:高野建設)
⇒ 50年以上経った現在も当該提携関係を継続

当社と前田建設との直接の取引:当社の年間売上高の約1%

⇒ 当社業績に与える影響は非常に軽微、また、そもそも当社と前田建設の事業上の関係性が極めて乏しい

⇒ 今後も、上記提携関係に基づく事業シナジーの創出、増加は見込まれない状況

前田建設が保有する当社株式:持株比率約24.37%
当社が保有する前田建設株式:持株比率約4.06%

⇒ 建設事業と並んで製造販売事業が当社の主要セグメントであることなど、今般、将来においても事業シナジーが創出される見込みはなく、上記資本関係を維持することは適正ではないとの判断に至った

⇒ 前田建設との資本関係を速やかに解消した上で、企業価値向上に向けて経営資源を最適に活用することが両社にとって最善であると考え、本提案を行うこととした

(2)更なる内部留保水準の適正化(自己資本利益率(ROE)の向上)が必要であること

当社の直近5事業年度の営業利益率:約10.34% ⇒ 同業他社の平均的な営業利益率を上回っており、安定的かつ良好に推移

一部株主からの指摘:当社のROEの水準は引き続き改善の余地があり、内部留保の適正な水準を再考すべき
⇒ 当社は、ROEの向上と内部留保の適正水準について継続的に検証してきた

自己株式の取得
当期実施:取得株式数の上限400万株、取得総額の上限100億円
⇒ 自己株式の取得が実現された場合には、当社のROEは更なる改善が見込まれ、建設業セクターにおいて上位の水準となる

(3)当社経営陣の独立性が確保された事業遂行を継続する必要があること

当社の業績は極めて安定的かつ良好に推移しており、今後も現在の経営体制を維持した経営を継続していくことが最適であると判断している

前田建設による当社株式の保有:当社の経営の独立性に対する重大な憂慮であると判断せざるを得ない事態

⇒ 今後も当社経営陣の独立性が確保された事業遂行を行うことこそが、当社の持続的な企業価値向上に資するものであると判断しており、前田建設との資本関係の解消は、当社の企業価値を維持・向上するために必要な施策であるといえる

前田建設の姿勢:本提案に対して積極的な姿勢を示す場合
⇒ 当社が保有する前田建設株式の全てについて、売却その他前田建設との協議に従って処分を行う予定

Next: 株価はどちらも上昇、今後どのように収まっていくかに注目



3.株価終値推移(円)

       1/17  1/20  1/21
前田建設工業 1,022 1,083  1,098
前田道路   2,633 3,135  3,835
※参考:前田建設工業による当社株式に対するTOBに関するお知らせ

前田建設工業<1824> 日足(SBI証券提供)

前田道路<1883> 日足(SBI証券提供)

2020/1/20
前田建設工業及び前田建設の完全子会社である前田総合インフラより、前田総合インフラによる当社株式対象のTOB開始に関し公表

⇒ TOBの公表は、当社に対して何ら正式な連絡もなく、一方的かつ突然に行われたもの
※参考:前田道路<1883>(「対象者」)に対するTOBの開始に関するお知らせ

2019/12/4
前田建設工業 ⇒ 対象者へTOB等を提案

12/6
対象者 ⇒ 前田建設工業へに対し、否定的な回答

12/13
前田建設工業 ⇒ 対象者に対し、粘り強く資本関係強化の必要性及び重要性について再度説明

12/20
対象者 ⇒ 前田建設工業の提案に対し、改めて否定的な回答

1)今後、さらに対象者に対して協議を求めたとしても、対象者から、TOBを含む資本関係の強化に対する賛同を得られる見通しがないと考えたこと

2)総合インフラサービス企業グループへの移行は一刻を争う切迫した課題であり、速やかにその実現に向けて始動する必要があると考えたこと

⇒ 前田建設工業は、本TOBについて対象者との間の協議を打ち切り、本TOBを実施することを決定した

TOB価格:3,950円/株(公表日の前営業日である2020/1/17の東証終値2,633円に対して 50.02%プレミアム

<感想>

本件は、前田建設工業のTOBに対する、前田道路からのカウンター・オファー。そもそも50年以上前の高野建設時代に出資を受けたことが問題だったのであろうか。

お互いがじっくり本音で話し合えれば、解決策が見つかる可能性もあるだろう。今後の両社の対応/動向を注視して行きたい。

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image by : metamorworks / Shutterstock.com

元証券マンが「あれっ」と思ったこと』(2020年1月22日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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