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コロナショックで誰が売っている?「底を見てから買う」と言う人が一生買えないワケ=栫井駿介

先週はいよいよセリング・クライマックスの様相を呈しました。「底を見てから買えば良い」という言説もありますが、実はそういう人は一生買えません。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

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プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

ファンダメンタルズを無視した売りの正体

先週はいよいよセリング・クライマックス(売りの極み)の様相を呈しました。

日経平均株価は1万6,000円、ダウ平均株価は終値で2万0,000ドルを割り込みました。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

NYダウ 日足(SBI証券提供)

この急速な下落は、ファンドの「解約売り」が関係していることが推測されます。

投資家が投資信託などのファンドの解約を申し出ると、ファンド側では持っている株式を売って現金化しなければなりません。そのため、そのファンドが良いと考えているかどうかに関係なく、無条件に売られることになります。

明らかに業績などのファンダメンタルズを無視した株価下落が発生しているのはそのためです。

パニック売りの可能性も

もっとも、米国でも新型コロナウイルスの拡散が明らかになったことにより、純粋にパニックに陥っている可能性もあります。これまでは中国やアジアにおける「対岸の火事」だと思っていたものが、いよいよ我が身に迫ってきたのですから、高みの見物とはいかなくなったのです。

この下落がファンダメンタルズを無視した「解約売り」や、単なるパニック売りだとしたら、私たち長期投資家にとっては絶好の機会となります。

私としては市場がこのような状態になるのを待ち望んでいて、ついにその時がやってきたのです。先週もたくさん買いました。ここから下がるようなら、どんどん買い進めることになるでしょう。

Next: もちろん、過度な自信は禁物です。どこまで下がるかは知る由がありません――



個人投資家の特権は「待てる」こと

もちろん、過度な自信は禁物です。

どこまで下がるかは知る由がありませんから、一気に資金を投入するのではなく、あくまで分割が基本です。まして信用取引には手を出してはいけません。

中期的なことを考えると、これから経済状態が悪化し、企業業績や経済指標は無残なものが想定されます。株価も少なからずそれに反応するでしょう。企業倒産も相次ぐかもしれません。

しかし、これほどの株価の下落を見ると、すでにその大部分は織り込んだように見えます。新型コロナウイルスの影響は甚大ですが、人類の英知を持ってすれば早晩収まるでしょう。そこから先は、経済の自律回復機能がはたらき、やがて不況の後の好景気が訪れるのです。

回復上昇がいつになるか、確証はありません。早ければ1年、長ければ3~4年かかるかもしれません。それでも、私たち個人投資家は解約で売らなければならない機関投資家と違い待つことができます。これは個人投資家に与えられた特権です。

経済が回復した後の姿を想像すれば、ここで買ったらあとは黙って持っていれば良いということがわかるはずです。買うべきものは、財務状況が良く、人々が手放すことのできない商品・サービスを提供している会社です。この局面では、割安感や成長性にこだわりすぎる必要はなく、大切なのは「質」です。

「底を見てから買う」と言う人は一生買えない

下落局面において良く見られる言説に「底を見てから買えば良い」というものがあります。単純に過去のチャートを見るとそう感じるかもしれません。

しかし、いざ目の前にその状況が訪れると、投資を始めるのがいかに難しいかということに気づくはずです。なぜなら、底が今なのか、あるいはもっと先なのか、誰も判断することなどできないからです。

下落局面では、これでもかというほど株価が下がり続けます。少し上がったかと思ったらまた大きく下がるということ繰り返しです。それを見ていると、本当の上がりはじめがどこかなんて、見極めようがないのです。

本当に上がるときは、いつの間にかスルスルと上がってしまいます。それまで買わずに眺めていた人は、結局1株も買えないまま、上げ相場に置いていかれるだけになってしまうのです。

仮に今100円で買って、それが80円になってしまったとしても、やがて120円になれば利益は20円です。これで100万円分買えれば御の字でしょう。しかし、1円も買わなければ利益はいつまで経っても0円です。買わない人は、この機会損失を無視しているのです。

これが今買っている自分の自己正当化になってもいけませんが、少なくとも新型コロナウイルスの混乱が収まった後を考えると、本質的な価値に対して割安感のある企業がゴロゴロと出てきていることは間違いありません。

そのような企業を慎重かつ大胆に買っていけば、世の中が平時に戻った時には株もしっかり回復していることでしょう。

Next: ここで思い出してほしいのは、私たちは「株価」ではなく「企業」に投資し――



私たちは企業に投資している

ここで思い出してほしいのは、私たちは「株価」ではなく「企業」に投資しているということです。

株価の先行きは常に不透明ですが、企業は前を見据えて活動を続けています。これが、資本主義における経済の原動力なのです。

長く続く企業活動から見れば、新型コロナウイルスは一時のイベントにすぎません。これを乗り越えて再び顧客に商品・サービスを届けることが企業の使命です。

それができる企業なら、株価は自ずとついてくるでしょう。


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image by:lil-mo / Shutterstock.com

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2020年3月22日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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