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まだ景気「緩やかな回復」だと?GDP大幅マイナス成長を無視する安倍政権のトンデモ理論=斎藤満

昨年10-12月期のGDPは大幅マイナス成長となりました。政府はそれでも、これまでの「緩やかな回復が続いている」との認識を踏襲したことに、驚きを隠せません。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

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※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2020年2月21日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

2月の判断も景気回復持続

政府は2月20日夜、2月の「月例経済報告」を公表しました。

このところの各種データの悪化の中で、政府がどのように景気判断を変えてくるのか注目されたのですが、これまでの「緩やかな回復が続いている」との認識を踏襲したことに、驚きが隠せません。

先週17日に昨年10-12月期のGDP(国内総生産)が発表され、これが前期比年率で6.3%の大幅マイナス成長となりました。従来、政府は輸出が弱くなり、これが生産にも影響を及ぼしていることは認めつつ、それでも個人消費や設備投資など、内需がしっかりしているとして、「回復持続」といい、戦後最長の景気拡大と評価していました。

ところが、今回のGDPはこれを覆しました。

つまり、輸出が引き続き弱い基調にあるうえに、今回は個人消費が2.9%減、民間住宅投資が2.7%減、民間企業設備投資が3.7%減と、内需が総崩れとなりました。

これまでの政府の「回復持続」の根拠が打ち崩されたことになります。ところが、政府はそれでも「雇用・所得環境の改善が続いている」として、これまでの「回復持続」判断を維持しました。どう見ても不自然なものです。

政府公表データと矛盾

不自然な理由は、政府自身が作成、公表している経済データと矛盾しているためで、その矛盾がこのところ著しく拡大しています。何より、景気判断の基礎となる内閣府作成の「景気動向指数」と矛盾します。

この景気動向指数、先行指数も一致指数も、2018年末以降、ほぼ一貫して低下基調にあります。つまり、景気は昨年以降、ずっと「後退」を続けていた可能性を示唆しています。

実際、景気動向指数の「一致CI」の動きを元に、内閣府は自ら客観的な判断を提示していますが、それによると昨年夏場以降「悪化」との評価が続いています。

この「悪化」が意味するところは、景気はそれまでにすでに景気後退局面に入っている可能性がある、というものです。最終的にはこの景気動向指数をもとに、専門委員が景気の「山」「谷」の判断を下しますが、今年中にその会合がもたれると思われます。

多くのエコノミストが、これら指標からみると、2018年末を景気の「ピーク」としてその後2019年からここまで、景気後退にある、との見方をするようになりました。

それでも政府が頑なに「景気回復持続」を言い張ってきた裏に、GDPが昨年秋までプラス成長を保っていたためです。そのプラス成長にも何度か疑問が投げかけられました。輸入の大幅減少でGDPが0.5%も押し上げられたこともありました。

輸入の減少は国内需要が弱いことの裏返しですが、計算上はGDPの控除項目のため、これが大きく減少すると、それだけGDPが高まる計算です。

実際、その時の国内需要はマイナス成長でした。昨年10-12月期のGDPでもそうした計算上のマジックは働いていたのですが、今回はそれ以上に内需の落ち込みが大きかったため、正真正銘のマイナス成長、それも年率6.3%という大幅なものでした。

これは言い逃れができないはずのものでしたが、政府はそれでもこれは台風などの特殊要因によるもので、雇用・所得環境の改善が続いているので、景気の基調は「回復持続だ」としています。

しかしこれも苦しい言い逃れです。

雇用・所得環境の改善はうそ

では政府が言うように、雇用・所得環境の改善は続いているのでしょうか。

政府の賃金統計のもとになる厚生労働省の「毎月勤労統計」は統計処理の齟齬、間違いが発覚し、信頼性、継続性が維持できなくなりましたが、一方で実際に企業が支払った「人件費」の数字が財務省の「法人企業統計」で確認できます。

これは昨年1-3月までは前年比プラスの基調が続きましたが、4月以降減少に転じました。例えば、昨年4-6月は前年比0.7%減、7-9月は前年比1.8%減です。政府の「働き方改革」を実施に移したころから、企業の人件費支払い額が減少するようになりました。

また、政府のGDP統計には「雇用者報酬」という雇用と賃金を掛け合わせた雇用者所得総額が示されていますが、これが実質で7-9月の前期比0.4%減に続いて10-12月も0.3%減となっています。

つまり、政府のデータでも雇用・所得環境は昨年春以降悪化していることになり、これが消費環境を悪くし、消費税増税とも重なって消費が大きく減少した背景にあります。

従って、政府の内需は弱かったものの、雇用・所得環境の改善が続いているとの認識は「嘘」になります。所得環境が悪くなっているところに消費税を上げたので、消費がより大きく減少した、ということです。

その点、消費税増税に対しては、軽減税率の適用に加え、幼児教育無償化などで補填しているので、実際の負担は0.2%程度で無視しうるとしていました。

ところが、幼児を持たない約9割の世帯は1%以上の実質負担となり、消費を圧迫している一方、幼児のいる世帯は、無償化で浮いたお金を貯蓄に回す傾向があり、現実の消費は計算上とは異なって大きく減少しています。

2四半期連続のマイナス成長へ

そしてこの1-3月は消費増税の影響が続くうえに、新型コロナウイルスの感染拡大で、輸出、国内生産、インバウンド減少、国内感染拡大の恐怖による活動自粛などが重なって、ここでもマイナス成長となる可能性がかなり高まってきました。

1月の時点ですでに輸出が実質で大きく落ち込んでいますが、今後はウイルス関連の影響が経済の各面に表れてきます。

当初はインバウンド需要の縮小やサプライチェーンの切断などによる国内生産の縮小が危惧されていましたが、これに加えて、政府自身が各種イベントの自粛を打ち出すなど、人込みを避け、外出を避ける動きが個人の間に広がっています。

感染源が特定できない国内感染が拡大する中で、目に見えない敵への恐怖が、人々の行動を抑制しています。

ワクチンの開発や感染の収束が見えてくるまでは、こうした不安による経済の停滞は拡大こそすれ、改善縮小の期待は持てません。

1-3月でこの不安が終わるかどうかも分かりませんが、1-3月のGDPがマイナスになれば、2四半期連続のマイナス成長となり、国際的にも「純正景気後退」となり、政府の言い逃れはいよいよ通じなくなります。

問題は感染拡大が抑えられないと、東京マラソン、大相撲、プロ野球の開幕、そして東京オリンピックの開催などもできなくなる可能性が高まり、日本経済はさらに停滞、縮小を続けるリスクが高まります。

嘘で固めた「戦後最長の景気拡大」には何の意味もなく、それよりも新型ウイルスの感染不安、恐怖を一刻も早く断ち切ることが景気回復への最重要課題です。

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2020年2月配信分
  • 信用を失った政府の「月例経済報告」(2/21)
  • 上昇続く金価格が示唆する世界の不安(2/19)
  • IMFに指導を受けた日銀(2/17)
  • 中国のGDP1ポイント下落のインパクト(2/14)
  • 習近平主席の危険な賭け(2/12)
  • 政府の「働き方改革」に落とし穴(2/10)
  • コロナウイルスは時限爆弾(2/7)
  • 鵜呑みにできない政府統計(2/5)
  • FRBにレポオペ解除不能危機(2/3)

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マンさんの経済あらかると』(2020年2月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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