米国防総省の報告書を読むと、5G分野において中国に敗北宣言をしていることがわかる。このままでは米国はガラパゴス化し、さらに米中対立は激化するだろう。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2019年11月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
中国の5G規格「sub-6」が市場独占。米国はガラパゴス化へ向かう
米中貿易戦争の引き金は「5G通信」
今回のテーマは、米国防総省の報告書が明らかにした「5G通信」の実態についてである。米中関係の将来を見通すことができる。
日本を代表するトップレベルの中国分析者で「中国問題グローバル研究所」所長、遠藤誉氏の最新著書『米中貿易戦争の裏側(毎日新聞出版)』でも詳しく紹介されているので、すでにご存じの読者の方も多いかもしれない。
今年の4月3日、米国防総省の「イノベーション委員会」は、「5Gエコシステム:国防総省に対するリスクとチャンス(THE 5G ECOSYSTEM: RISK & OPPORTUNITIES FOR DoD)」というタイトルの報告書を公開した。これは、次世代の通信規格である5Gをめぐる米中の攻防の実態を詳しく調査した報告書である。
7カ月前の報告書なので、新しいものではない。だが、公開当初はさほど注目されていなかったものの、最近になって、トランプ政権が仕掛けた米中ハイテク戦争の基本的なシナリオであるとして、改めて注目されている報告書だ。
米中貿易戦争の実態、米安全保障の根幹的危機
ところで、相変わらず着地点のまったく見えない米中貿易戦争だが、一時的な妥協はあり得たとしても米中関係はさらにこれから悪化し、一層鋭い対立関係になるのではないかとの観測が強まっている。
それというのも当初は、ハイテク覇権を狙う中国をアメリカが抑止することが米トランプ政権の基本的な狙いだとされてきた。
しかし、実はアメリカの中国敵視策の背景には、もっと深刻な事態があることが次第に理解されるようになってきたからだ。
その深刻な事態とは、中国がすでにアメリカの深刻な安全保障上の脅威になっているという事実だ。
それは、南シナ海や東シナ海、そして「一帯一路」地域における中国の軍事的な勢力拡大のことではない。当然それは懸念されることではある。
だがアメリカが懸念する中国の本当の脅威とは、アメリカの安全保障の根幹にかかわるものである。