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米国が中国に敗北宣言?米国防総省の報告書が明らかにした「5G戦争」の結末=高島康司

敗北を認めた? 今回の報告書の驚くべき内容

そして、2019年4月3日に発表された報告書、「5Gエコシステム:国防総省に対するリスクとチャンス」には、これら過去の報告書を上回る恐るべき内容が書かれていた。

それは、いま第4次産業革命の中核的なテクノロジーとして注目されている次世代の通信規格、5Gに関する内容だ。

周知のように、現行の4GやLTEの約10倍から20倍の速度で、大容量のデータを瞬時に送信可能な5Gは、自動運転車、遠隔治療、建設機械の自動運転、工場の自動化、ARとVR、そしてスマート・シティーなどの基盤となるテクノロジーである。また、軍事通信の飛躍的な高速化から、兵士がロボットを遠隔で操作する新しいタイプの戦闘も可能になるとされている。

この報告書の結論を先取りするなら、5Gのテクノロジーでは中国が世界を圧倒的にリードしており、アメリカは世界の潮流から取り残されてガラパゴス化するということだ。

これは米国防総省が潔く負けを認めた報告書だ。

そして、その上で中国の覇権の実現を少しでも遅らせるために、中国の発展をブロックする提案を行っている。

「5G」の2つの周波数帯

米国防総省が負けを認めた背景になっているのは、5Gの規格には2つの異なった周波数帯があるという事実である。それは以下の2つだ。

1)「mmWave」――アメリカ
高周波数帯の5Gの規格。24GHzから100GHzのミリ波の帯域を使用。光の性質に近い。アメリカの5Gがこの規格である。

2)「sub-6」――中国
3GHzから6GHzまでの低周波数帯を使用した規格。中国の5Gが採用した規格で、IT大手の「ファーウェイ」がこれを使う代表的な企業。

2つの周波数帯の違いとは?

米国防総省の報告書によると、アメリカが採用した「mmWave」と中国の「sub-6」には大きな違いがある。

mmWave」は光に近い性質を持つ。「sub-6」よりも少し速度は速いものの、壁や建物があると電波はブロックされてしまい、遠くまでは飛ばない。そのため「mmWave」の5Gのネットワークでは、多くのアンテナを設置しなければならない。また「mmWave」のアンテナは5Gに独自な規格なので、既存の3Gや4Gのアンテナを流用することはできない。まったく新しいアンテナを設置する必要があるので、5G導入のコストが高くなる

一方、低周波数帯の「sub-6」は音に近い性質を持つ。そのため、壁や建物を貫通するので、電波は「mmWave」よりもはるかに遠い距離まで届く。その性質は既存の3Gや4Gに近い。そのため、既存のアンテナに5G用のパーツを組み込むだけでネットワークの設置ができてしまう。新たな規格のアンテナを新規に設置しなければならない「mmWave」と比べると、はるかに低いコストで5Gのネットワークが構築できる

これを見ると、「sub-6」のほうがはるかに有利であることが分かる。

国防総省のこのレポートには、ロサンゼルスで実施した「mmWave」と「sub-6」の電波の広がり具合のテスト結果が掲載されている。1つのアンテナからの送信で届く電波の範囲がこれで分かる。

左が「mmWave」で、右が「sub-6」だ。青は100Mbpsのスピードで、赤は1Gbpsを表している。報告書に掲載されたデータの引用である。ぜひ見て欲しい。

このグラフを見ると、両者の電波の届く範囲はあまりにも明白だ。「sub-6」に「mmWave」はまったく及ばないのである。

Next: 中国の5G規格「sub-6」が市場を独占。なぜ米国は「mmWave」に固執する?

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