「sub-6」が市場を独占
国防総省の報告書では、こうした結果から見て、「ファーウェイ」を中心とした中国の「sub-6」は世界市場を制覇することになるのは目に見えているという。
それというのも、コストが高く電波の届く範囲が狭い「mmWave」では、よほどの人口密集地で相当な契約者数が期待できる環境ではない限り、採算ラインに乗らないからだ。アメリカではそのような環境の大都市圏は比較的に少ない。
一方電波の届く範囲の広い「sub-6」では、ひとつのアンテナがカバーするエリアで獲得できる契約者数が多いので、容易に採算ラインに乗る。また既存の3Gと4Gのアンテナが使えることも、設置費用を引き下げることができる大きな利点になる。
報告書では、「mmWave」と「sub-6」のこのような違いは、5Gの部品メーカにも大きな違いをもたらすという。採算ラインに乗りにくい「mmWave」のネットワークでは、設置に意欲的なキャリアはどうしても少なくなる。その結果、「mmWave」用の部品も量産体制に乗りにくいので、コストを引き下げることが難しくなるのだ。
一方、既存のアンテナが使える「sub-6」ではこの逆のパターンだ。「sub-6」の低廉なネットワークの拡大が期待できるので、専用パーツの需要は大きい。そのため、早期に量産体制に入るので、パーツのコストもかなり安くなる。
すると、「sub-6」のネットワークの設置費用はさらに低下し、「sub-6」は一層拡大する。正の循環だ。
なぜアメリカは「mmWave」に固執するのか?
このように見ると、中国の「ファーウェイ」が中心となって開発が進められている「sub-6」がこれからグローバルスタンダードとなり、世界を制覇する可能性が高い。
「mmWave」の速度は少し速いかもしれないが、不利な点があまりに多く、5Gのネットワークとして拡大するとは到底思われない。いっそのこと、アメリカも「mmWave」を捨てて、はるかにコストが安く、カバーできるエリアがはるかに広い「sub-6」に移行したほうがよいのではないだろうか?
しかし、アメリカにはこの移行が実質的に不可能な事情がある。それは、すでに米軍が「sub-6」を高速通信のために独占的に使用しており、この帯域を民間に開放すると、相互の通信が干渉してしまい、軍事通信やデータの転送に支障が出てしまうからだという。
こうした干渉が起こらないように別の帯域を開発し、それに移行することも考えられるが、それには少なくとも10年はかかるという。
このような状況から、米国内では民間の5Gはどうしても「mmWave」でなければならない。