マネーボイス メニュー

【3月米雇用統計】史上最悪664万件の失業保険申請でお通夜状態。焦るトランプに注目?=ゆきママ

昨夜発表された米国の新規失業保険申請件数(前週分)は664.8万件。2週連続で爆発的な増加を見せ、過去2週間で約1,000万件に達しています。コロナウイルスの影響が直撃した米国の雇用統計は一体どうなるのでしょうか?現状を踏まえつつ解説していきたいと思います。(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

相場に与える本質的な影響は小さい

残念ながら、今日発表される3月分の雇用統計というのは、そこまで意味のある数字ではありません。

実は雇用統計の調査の対象となる週は12日が含まれる週。つまり、3月分は3月8日〜14日が調査週ということになります。

実質的に米国でロックダウン(都市閉鎖)が本格化したのはクオモ・ニューヨーク州知事が外出禁止令を出した3月20日以降ですから、そういう意味では明らかに「過去の数字」になります。

冒頭でも述べた、664.8万件という新規失業保険申請件数は3月22〜28日分ですから、すでに速報性の高い数字は出てしまっています。

したがって、予想よりも大幅に悪い数字が出れば、それはそれでネガティブですが、逆に良い数字が出たとしても、それは過去ということで、相場に対して本質的にポジティブな影響を与える可能性は低いように思います。

もちろん、まったく無視されるとも限りませんし、予想よりも良い数字が並べば株高からの円売りが想定されますので、そういった値動きを上手に活用していきたいところでしょう。

Next: 先行指標は最悪!特に失業保険申請件数は目を疑う数字に――



先行指標は最悪!特に失業保険申請件数は目を疑う数字に

前回の2月時と比べ、すべての経済指標が悪化しています。ISM(米供給管理協会)の発表した製造業の雇用指数は2009年ぶりの低水準、ADP社の発表の雇用報告では2017年以来の減少に転じています。

先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

とりわけ、新規失業保険申請件数は桁が1つ違う数字となっています。ロックダウンにより仕事が休業状態となり申請者が激増しているので驚くことではないかもしれませんが、それでもやはり今後の米経済を懸念せずにはいられません。

当然ですが、この数字を見て強気になれる理由はまったくありません。

それから、非農業部門雇用者数の事前予想値は−10.0万人の減少と控えめな数字ですが、先のも述べたように調査週(3月8〜14日)がロックダウンの本格化前であることがその理由です。

今日は原油の値動き、関連報道にも警戒!

むしろ、今夜も原油相場の値動きに警戒が必要かもしれません。昨夜は20ドルラインに張り付いていたWTI原油先物相場が一時+30%を超える上昇となり、株価が急騰して円売りに傾き、ドル円も上値を伸ばしました。かなりインパクトの強い材料でした。

この値動きの背景は、ロシアのノバク・エネルギー相が、これ以上の増産は予定していないとしたことや、サウジアラビアが緊急のOPEC(石油輸出国機構)プラス会合を呼びかけたこと。

さらに、これにトランプ大統領が便乗する形で、1,000万バレルの減産を期待するとツイートしたことが重なって原油が大きく反発することになりました。

しかしながら、発言の切り取り、良いとこどりの上昇であり、今後も報道次第で乱高下することになるでしょう。

現実には、ロシアはさらなる原油下落を否定しないとして原油安を容認する姿勢を示していますし、サウジアラビアとは話をしていないとしています。

また、サウジアラビアもOPECプラス会合を呼びかけているものの、サウジアラビアにとって公平な合意、つまり、各国がこれまで以上の協調減産をすることが前提条件となっています。

今は期待感のみで原油が支えられていますが、各国から減産に否定的な反応があれば、再び原油が急落し、株安からの円高でドル円が押し下げられる可能性もありますから、今夜は雇用統計だけでなく、こちらの関連報道にも目を向けておきたいところでしょう。

Next: 先週末から今週のドル円は概ね107〜109円のレンジを形成しており、よほど――



想定レートは1ドル=107.00〜108.30円

先週末から今週のドル円は概ね107〜109円のレンジを形成しており、よほどのことがなければこのレンジを維持する可能性が高いでしょう。

ドル円(日足)チャート

米国にとってネガティブな経済指標が出るにつれ、株価の上値も重くなっていますし、上抜けるのは簡単ではなさそうです。

目先の上値は200日移動平均のある108.30円レベルで、108円台半の水準はかなり重いですから、108円台に頭を出してきたら軽く売ってみて良さそうです。

特に雇用統計が予想を上回るような良好な数字で上がってきた場合はチャンスでしょう。

繰り返しになりますが、あくまでも過去の数字であり、それほど大きな意味を持つ数字ではありません。

昨夜発表された史上最多の新規失業保険申請件数である664.8万件がすべてですから、週末ということも踏まえれば、結局は全戻し、あるいは手仕舞いの売りで株価が下がり、ドル円も押し下げられやすいと考えています。

損切りは89日移動平均線のある109.00円ブレイク、利食いは状況次第ですが、107円台半
ばから下を目標にしたいところです。

【関連】なぜ日本の新型コロナ致死率は異常に高い? 臭覚・味覚異常が感染の兆候か=高島康司

【関連】安倍政権の「後手後手」が招いたパンデミックで日本経済は大崩壊時代へ=今市太郎

【関連】東京「都市封鎖」は不可能。緊急事態宣言をしても海外のようなロックダウンはできない=澤田聖陽

image by:Luna Vandoorne / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年4月3日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。