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株価はコロナを甘く見過ぎ?未曾有の「セル・イン・メイ」で無策の投資家が死んでいく=栫井駿介

緊急事態宣言の全国拡大が発表された先週末、株価は下がると思いきや上昇しました。株価にとって新型コロナは「過去のもの」となったのでしょうか?(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

株価にとって新型コロナは「過去のもの」?

16日、7都府県に出ていた新型コロナウイルスの緊急事態宣言が全国に拡大されました。これでさすがに下がるかと思いきや、株価はますます上昇を続けるという展開です(編注:原稿執筆時点2020年4月19日)。株価にとって、新型コロナウイルスは「過去のもの」となりつつあります。

日経平均株価 15分足(SBI証券提供)

これを受けて当社パイロット運用の保有株も上昇し、運用開始来(2019年~)の損益がプラスに転じました。予想以上に早かったと感じます。

パイロット運用状況(2020/4/18)

人類は経験したことのない経済危機に直面している

しかし、私はここであえて気を引き締めたいと思います。「これで終わった」ということは決してないからです。

新型コロナウイルスの影響はまだまだ続きます。欧米では外出制限が一部解かれるなど回復の兆しもありますが、それでもとの生活に戻れることはありません。

いくら外出制限を敷いたところで、ウイルスはなくなりません。まして無症状者が有症状者よりも多いとも言われていますから、無症状者が知らずしらずのうちにウイルスを拡散させます。彼らが動くことで、第二波、第三波をもたらすのです。

再び感染が拡大することがあれば、自粛も再開しなければならなくなります。海外からウイルスがもたらされる可能性も考えると、海外渡航も難しくなります。こうやっていつまで経っても本格的な経済活動再開に至らないのです。

ハーバード大学は、医療体制が充実しワクチンが開発されなければ、2022年まで「ソーシャル・ディスタンス」を続けなければならないと言っています。
※参考:「社会的距離の確保、2022年まで必要な可能性」米ハーバード大学が指摘 – Newsweek(2020年4月15日配信)

スペイン風邪が流行した100年前だったら、死者数こそ多いものの、すぐに多くの人が一度感染して免疫を持つことで流行は終息に向かいました。しかし今は、医療の発達により助かる望みがあるからこそ、死者数を最小限にするために経済を犠牲にせざるを得なくなっているのです。

そのような意味で、人類はまさに経験したことのない経済的な危機に直面していると言えます。

Next: 未経験の事態だからこそ、過去数十年の「経験」をあてにするのは間違い――



「セル・イン・メイ」は今年も訪れるか?

経験したことのない事態だからこそ、過去数十年の「経験」をあてにするのは間違いだと思います。「リーマン・ショックでは何ヶ月後に二番底が来て、そこから上昇に転じた」というのは「同じことが起きたら」という前提でしかなく、今起きているのは全く違う事態です。

リーマン・ショックで最大の出来事は、まさにリーマン・ブラザーズの破綻でした。しかし、コロナ・ショックはこれから何が出てくるか、まだ予想できないのです。

まだ大型倒産は表沙汰になっていませんが、外出自粛が長引くようなら規模を問わず倒産の危機に瀕する会社が続出するでしょう。

大型倒産や、誰もが予想しなかった事態が起きた時、再び株価は大きく下がるでしょう。相場は予想しないことに対しとても脆いのです。1つ出れば「次はどこか」と疑心暗鬼を呼び、誰も株を買いたがらなくなるという事態が訪れかねません。

そのきっかけとなるのが、この5月と考えます。

相場には「セル・イン・メイ(5月に売れ)」という格言があり、5月は下落することが多いと言われます。さまざまな理由が言われますが、私が感じるのは「決算で悪材料が出やすい」ということです。

多くの日本企業が採用する3月決算では本決算、12月決算では第1四半期決算が発表される時期です。ここで芳しくない状況が顕になると、株が売られやすいことがあると考えます。

同様の理由から、決算が発表される2月、8月はやはり軟調なことが多いようです。

すでに下方修正を発表している企業もありますが、本格化するのはこれからだと思います。想定以上の悪化や、事業の継続に疑義が見られる状況なら、株価もただでは済まないでしょう。そのような意味で、今は気を引き締める時だと考えるのです。

Next: 一貫した投資行動とは「上がった時に買わず、下がった時に買う」こと――



投資は機械的に実行すべし

私はこのような思考実験を巡らせますが、それは一貫した投資行動を変えるものではありません。一貫した投資行動とは「上がった時に買わず、下がった時に買う」ことです。

自分の想定が当たるとは必ずしも思っていません。未来や株価は、そんなに思った通りには動いてくれないのです。予想をあてにすると、それが外れたとき大きな損失を被ってしまったり、チャンスを逃してしまったりします。

そうならないように、投資行動はできる限り感情に左右されず機械的に行いたいと考えます。感情に動かされると、市場が楽観的な高いときに買い、悲観的な安いときに売ってしまいます。これは投資行動としては最悪の動きですが、多くの人がこれで損失を出してしまうのです。

私たちが投資しているのは株価の動きではなく、企業そのものです。株価の動きは予想できませんが、企業の良し悪しはある程度見極めることができます。良い企業はどんな環境にあっても着々と成長の機会を探るのです。

良い企業を少しでも安く買えたら、こんなに素晴らしいことはありません。安く買えれば、その先の株価の見通しなど関係ありません。企業が成長するのをじっと見守れば良いのです。

目先の話をするなら、今は買うタイミングではありません。これから来たるべき下落に備えて、頭と心、お金の準備を怠らないようにしてください。


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image by:fizkes / Shutterstock.com

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2020年4月20日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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