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ポストコロナの世界〜政府に「生殺与奪の権」を握らせている私たち=矢口新

コロナで我々が再確認したのは、大義名分さえあればどの国の政府も自国民の生殺与奪の権利を持っていたということだ。我々が生きているうちに「きっぱりと勝利宣言」出すことは難しそうで、ポストコロナの世界は今までとは違ったものになりそうだ。(『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2020年5月25日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

訪日外国人99.9%減、インバウンド消費は消滅

コロナ、コロナと何度も繰り返したくない思いはあるが、他国では数週間以上経済活動がほぼ停止した都市や産業がいくつもあり、日本でも4月の訪日外国人が99.9%減となった。

これは、インバウンド消費がほぼゼロだったことを示し、特定の産業や地域が壊滅的な打撃を受けたことを示唆している。

「Covid-19」と呼ばれるコロナウイルスが恐ろしい感染症を引き起こすことは疑いがないが、ある地域の人々が半減するようなものではない。

しかし対策次第では、あるいはパニックによって、産業によっては立ちいかなくなるのだ。

※参照:チャートで見る日本の感染状況 新型コロナウイルス – 日本経済新聞

首都圏ではまだ自粛解除が行われておらず、学校も多くの店舗も閉鎖されたままだ(編注:原稿執筆時点5月24日。現在は全国で緊急事態宣言が解除されています)。

過去のパンデミックはどう終息した?

そこで、「過去のパンデミックはどう終息したのか」とするコメントを目にしたので、ご紹介する。

「病気を抑え込むことによって終わりが訪れるのではなく、人々がパニック状態に疲れて、病気とともに生きるようになることによっても、パンデミックは終わる」

「病気の流行がなくても、恐怖の流行は起こる」

「1855年に中国で始まって世界中に広がった流行は大きなもので、インドだけで1200万人以上が死亡した。ボンベイ(現ムンバイ)の保健当局は、ペストを撲滅しようと、地域を丸ごと焼き払うことまでした。『それが効果をもたらしたのかは誰もわからない』と、イェール大学の歴史学者、フランク・スノーデンは言う」

「医学的に根絶された病気としては、天然痘が挙げられる。だが、天然痘の根絶は、次のような条件が揃った例外的なものだ。まず、天然痘にはワクチンがあり、その効果は一生続く。また、天然痘ウイルスの小痘瘡(しょうとうそう)は動物を宿主としないので、人間のあいだで病気がなくなれば完全に根絶されたことになる。さらには、症状がかなり明確なので、感染したことがわかりやすく、隔離や接触者の追跡がしやすい」

「難しいのは、きっぱりと勝利宣言が出せないことだとブラントは言う。パンデミックの終わりを定義するのは『長くて困難なプロセスになる』」

出典:歴史が示唆する新型コロナの意外な「終わり方」 | The New York Times – 東洋経済オンライン(2020年5月19日配信)

「病気の流行がなくても、恐怖の流行は起こる」。となれば、行政やメディアは情報開示を徹底することで、住民が「冷静に恐がる」ように、パニックにならないように気を配らねばならない。

また、パンデミックの終わりを定義するのは「長くて困難なプロセスになる」ことを当初から想定した対策を採ってきたスウェーデンは、今から思えば正しかったことになる。

【関連】日本も追従すべき?都市封鎖を放棄してウイルスと共存するスウェーデンの戦い方=矢口新

現実に封鎖解除をしている国々でパンデミックの終息宣言をした国はなく、「生きていくためにはウイルスと同居し、相応の被害が出るのもやむを得ない」と、対策を変更しただけなのだ。

一時的に航空機や新幹線の利用が90数パーセントも減少したが、今後の世界に航空機や新幹線がいらなくなるとは言えないからだ。

Next: コロナで我々が再確認したのは、大義名分さえあればどの国の政府も自国民――



私たちは政府に生殺与奪の権利を握られている

コロナで我々が再確認したのは、大義名分さえあればどの国の政府も自国民の生殺与奪の権利を持っていたということだ。

いや他国民でも空港の検疫検査で隔離することができる。

それが正当な隔離かどうかは、相手がウイルスだけに検証はほぼ不可能だ。

このことは、中国政府は香港に新たな「国家安全法」など布かなくても、民主化運動を事実上抑え込むことができたことを示唆する。ウイルスの流行を防ぐことは、主義主張に優先するからだ。

ポストコロナで世界が激変する

欧米で言われている2メートルもの社会的距離を保つのは、少なくとも日本では不可能に思えるが、それが例え20センチでも、クラブや居酒屋などのように成り立たないところが出てくる。

「Covid-19」に対する集団免疫ができて人類と共存できるまでに、一部で言われているように100年くらいかかるとすれば、それに応じたインフラを整備する必要が出てくる。

立ちいかなく産業が出てくる一方で、新たな需要に応える産業が伸びてくるのだ。

いずれにせよ、我々が生きているうちに「きっぱりと勝利宣言」出すことは難しそうで、ポストコロナの世界は今までとは違ったものになりそうだ。

そういったことは世界史的には何度も起きている。

日本でも江戸時代と明治時代とは違うと言えるし、第二次大戦前と後とでも違う。そう捉えて見ると悪いことばかりではない。

むしろ、何となくワクワクしないでもないではないか。

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image by:MT-R / Shutterstock.com

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相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2020年5月25日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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