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マイクロソフト「TikTok買収」は断れないディール。中国と手を切り、いくらで買うのか=澤田聖陽

米政府は「TikTok」の事業売却がされない場合、9月15日付で運営を禁止すると発表しました。マイクロソフトが買収を検討していますが、買収を断ったらアメリカ政府を敵に回す、買収するにはアメリカ政府の意向に合わせなければいけないという厳しい状況です(簡単に言いますと、断れないディールじゃないかと思います)。また買収額がいくらになるのかも気になります。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)

※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年8月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

「TikTok」はスパイアプリか?

トランプ大統領は3日、北京字節跳動科技(バイトダンス)傘下の短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」のアメリカ事業について、事業売却がされない場合、9月15日付でアメリカでの事業運営を禁止すると発表しました。

TikTokの利用者の情報が中国共産党に提供されている可能性があり、中国共産党による国境を超えた監視や検閲活動に協力しているという疑惑があるためです。

マイクロソフトが買収検討

同時にマイクロソフトが、TikTokのアメリカ事業の買収を検討しているという報道がされています。

当初、政府は買収を認めないという報道も一部でありましたが、マイクロソフトによる買収にも反対しないという声明も出されました。

トランプ大統領は、以下の通り発言しています。

「米財務省に多くの利益をもたらす形で、マイクロソフトもしくはその他の企業がTikTok買収で適切に合意しない限り、TikTokの運営を9月15日付で禁止する」

米財務省に多くの利益をもたらす形でという部分について、どのような意味があるのか考えてみましたが、おそらく買収するならアメリカにちゃんと税金を落とせということだと思います(GAFAMのような多国籍企業の節税はよく知られている話であり、それを牽制したのではないかと思います)。

買収許可の条件は「中国と手を切る」こと?

またナバロ米大統領補佐官は、「問題はマイクロソフトが妥協するかだ。マイクロソフトの中国の保有企業を処分する案も考えられる」という話もしています。

要するにTikTokを買収するならば、マイクロソフトは中国での事業を止めて、中国と手を切れという意味です。マイクロソフトが中国での事業を保有したままでは、安全保障上の懸念が払しょくされないということのようです。

またナバロ補佐官はマイクロソフトの検索エンジン「Bing」やインターネット電話サービス「スカイプ」が事実上、中国の検閲・監視を可能にしているという発言もメディア向けに行っています。

Next: マイクロソフトは昨年、米国防省の防衛基盤統合事業「JEDI」――



条件を飲むしかないマイクロソフト

マイクロソフトは昨年、米国防省の防衛基盤統合事業「JEDI」(Joint Enterprise Defense Infrastructure)も受注するなど、トランプ政権とつながりが深くなっています(これは反トランプであるベゾスがCEOをしているAmazonのAWSを採用せずに、マイクロソフトのクラウドを採用したという背景もあります。もちろん好き嫌いだけで決まるほど単純なものではありませんが)。

マイクロソフトとしては、政府の仕事を請け負っているし、そもそもアメリカ企業なので政府を敵に回してビジネスをするということは考えられないでしょう。

アメリカ政府としては、ユーザーの多いTikTokを単純に禁止するだけだと、多くの有権者を敵に回す可能性があるので、アメリカ企業に買収してもらい事業を引き継いでもらいたいという意向が強いと思います。

マイクロソフトとしては、買収を断ったらアメリカ政府を敵に回す、買収するにはアメリカ政府の意向に合わせなければいけないという厳しい状況です(簡単に言いますと、断れないディールじゃないかと思います)。

最終的には、マイクロソフトは買収を決め、段階的に中国事業を売却していかざるを得ないのではないかと予想しています。

TikTokはいくらで買収される?

あとはどれだけの価格で買収がまとまるのかという点が気になります。

そもそも売却しなければ、アメリカでの事業は禁止されて、最終的には無価値になるということなので、売り手のバイトダンス側には選択肢がなく(売るしかなく)交渉は不利な状況です。

そうはいっても一定の価値で売却したいということになると思いますが、公表されているいろいろな数字を検証してみたいと思います。

・バイトダンス全体の時価総額は、$100B~$140B(10兆円~14兆円)と言われている。

・TikTokは、アメリカで4,540万人(2020年調査)のユーザーがいると言われている。

・TikTokの利用者は13~17歳:27%、18~24歳:42%、25~34歳:16%と、35歳未満のユーザーが85%を占めている(これはアメリカ事業のデータではなく、グローバルでのデータですが、おそらくアメリカ事業での年齢層も大きく変わらないと考えます)。

・米国のソーシャルネットワークユーザーの21.6%、または5人に1人以上が、少なくとも月に1回TikTokを使用している。

・男女比は、女性6に対して男性4で、女性比率が高い。

探してみましたが、北米事業が儲かっているかどうかの財務等のデータは見つかりませんでした。

財務データがわかりませんので、どれぐらいの買収価格が適正かどうかは分かりませんが、Facebookが2014年にWhatsAppを総額218億ドルで買収したディールは参考になるかもしれません。

Next: 今回のディールは前述のとおり、バイトダンス側は売却しなければ無価値に――



追い詰められているのは「TikTok」か

ただし、TikTokはFacebookやWhatsApp、InstgranのようなSNSアプリとは少し内容が違って、どちらかと言えばYouTubeに近いのではないかと思います。

YouTubeはすでにアルファベット傘下になっていますので時価総額は分かりませんが、Laura Martinというアナリストが2019年に算定した価値では$300B(30兆円強)になるという試算があるようです。

ただし、今回のディールは前述のとおり、バイトダンス側としては売却しなければ無価値になる可能性があるというディールです。

当然、マイクロソフトとしてはできるだけ安く買おうとしてくるでしょう。

マイクロソフトの方も前述の通りアメリカ政府に反目するようなことはできないという背景がありますが、9月15日の期限が迫ってきて、より焦るのはやはりバイトダンス側ではないかと思います。

動向を見守っていきたいと思います。

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元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』(2020年8月4日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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