緊急事態宣言解除後の日本は「7割経済」になると言われています。ここで重要なのは、私たちの雇用や給与はどのように変化するのかという点です。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)
※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年5月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本は「7割経済」へ
日本政府は5月25日、緊急事態宣言を全面解除しました。
4月7日の緊急事態宣言から2か月弱、その間経済活動の多く部分が制限されてきました。その結果は、今後のGDP速報の発表で明らかになるでしょう。
おそらく戦後経験したことのないようなマイナス数字が出てくると予想します。民間エコノミストの予測では、年率換算で前期比20%以上のマイナスになるという見方が強いようです。
緊急事態宣言は解除されて、徐々に経済は回復していくものの、移動制限はまだ解除されておらず(全国移動は6月19日以降に解除されると言われています)、出入国についても引き続き制限されています。
またコロナウィルスについても完全に収束したわけではなく、秋以降の第2波が心配される中での経済の再開です。
このような制限された状況の中で「7割経済」という言葉が散見され始めました。企業は、当面はコロナ前の7割程度の経済規模に順応していかなければいけないということです。
今後の経済が、V字回復するのか、U字回復なのか、もしくはL字でなかなか回復しない状況になるのかは、現時点では誰も答えは分かりません。
ただし、エコノミストの見方では少なくともV字回復は難しいという見方が支配的になっているようです。
少なくとも、特効薬やワクチンが開発され市井に行き渡るまでは、コロナと共生していくしかないという見方が出てきており、そのような制限された状態の経済を「7割経済」と表現しています。
雇用・給与はどう変化する?
企業は当面は7割経済で、儲けるまでいかないにしても、少なくとも大赤字を出さないような体制を構築することを迫られているということになります。
ここで重要なのは、7割経済では雇用や給与はどのように変化するのかという点です。
アメリカであれば、指名解雇を行い、人員を7割経済に対応できる体制にして早急に順応を図るでしょう。その証拠にアメリカでは失業率が急上昇しており、3月に4.4%から4月には14.7%と急上昇しています。おそらく5月以降も当面は高い失業率が続くでしょう。
一方、日本は解雇規制が強く、なかなか指名解雇は難しい環境です。
解雇は出来ないため、ボーナス等は減らすにしても、今までの10割経済の体制をある程度引きずっていかざるを得ない状況になります(さすがに希望退職者を募る企業は増えてくると思いますが、この環境下で手を上げる人が増えるかは疑問です)。
日米の違いをまとめると以下のとおりになります。
アメリカ:指名解雇ができる→企業は早めにコストをスリム化し再成長に向かって走り出す→しかしながら失業率は急上昇し、政府が面倒をみなければいけなくなる
日本:指名解雇は難しい→企業は高コスト体質を引きずらなければいけないので企業業績の回復が遅れる→企業の業績が悪化し、最終的にどうしようもなくなったらリストラをせざるを得なくなる
Next: 企業業績については明らかにアメリカ企業の方が早く回復基調に入る――