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ドンキ前社長、株不正推奨先の実名。違法取引多発の裏、捜査逃れの手口=山岡俊介

ドン・キホーテ前社長が金融取引法違反の疑いで逮捕されたことは周知の通り。情報提供を受けた側の罰則はないが、その人物を公益性もあると判断して本紙は公表する次第だ。今回はインサイダー取引ではないが、日本で多発する理由と捜査逃れの方法についても解説したい。(『アクセスジャーナル・メルマガ版』山岡俊介)

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プロフィール:山岡俊介(やまおか しゅんすけ)
1959年生まれ、愛媛県出身。神奈川大学法学部卒。零細編集プロダクションに2年半在籍し、29歳で独立。91年『週刊大衆』の専属記者を務めながら『噂の真相』『財界展望』などを中心に記事執筆。主な著書に『誰も書かなかったアムウェイ』『アムウェイ商法を告発する』(以上、あっぷる出版社)、『銀バエ実録武富士盗聴事件』(創出版)、『福島第一原発潜入記 高濃度汚染現場と作業員の真実』(双葉社)など。

ドン・キホーテ前社長「取引推奨」で逮捕

大手マスコミ既報のように、「ドンキホーテホールディングス」(現「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」。7532。東証1部)の大原孝治前社長が12月3日、東京地検特捜部に金融商品取引法違反(167条の2の取引推奨)容疑で逮捕された。

株式公開買い付け(TOB)の場合、時価より高く買い付けようとするから事前にこの情報を知って購入すれば儲かる可能性は極めて高い。

ただし、誤解のないように断っておくが、今回の逮捕容疑はいわゆるインサイダー取引といわれるものとは別物だ。

インサイダーは株価の上下に繋がる重大な内部情報を知った会社関係者が自ら儲ける、または損失を回避するために株式売買を行った場合で166条、TOBの場合も167条で規制されている。

これに対し166条の2で規制されている今回の「取引推奨」と「情報伝達行為」は会社関係者が自ら株取引をして儲けるのではなく、他人に利益を得さしめる行為を規制したものだ。

そのため、昔は規制対象外だった(166条の2は2014年から規制対象に)。

しかも、今回の大原容疑者の逮捕容疑は、知人に「うちがTOBされるから株価が上がるだろうから買えば」といった場合の「情報伝達行為」もしておらず、単に「うちの株を買えば」と購入を勧めたと過ぎない。

だから、この「取引推奨」での逮捕は初と思われる。

だが、当時、大原容疑者はドンキの社長。その社長が「TOBされる」といわなくても、日ごろから付き合いのある親しい者が勧められれば、その親しい者は株価が上がる何か材料があると推測して当然。

そして、実際、知人男性は7万6,500株(約4億3,000万円)も買付け、約6,000万円の利益を得たとされる。

Next: 当局の監視を煙に巻くインサイダー取引の手口



情報を得た側に罰則規制はない

ただし、そういう取締経緯から、この166条の2の規制は情報を得た側には罰則規制はない。

とはいえ、2014年に他人に利益を得さしめる行為も規制対象になったのは、結局のところ、上場企業の一般には知り得ない情報を事前に知ることができるのは少数の者に限られ、それは株式市場の公平性を害するからだろう。

しかも、今回の大原容疑者の知人というのは4億円以上のカネをつぎ込み、ごく短期間に約6,000万円という巨利を得ているのだから一般人とは言い難いだろう。

だから公益性もあると判断し、本紙は公表する次第だ。

なぜインサイダー取引が頻繁に起きるのか

わが国ではインサイダー取引がなぜ頻繁に起こるのかについて述べたい。

インサイダー取引規制に違反した者(個人の場合)は、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」(金商法197条)。

まず、このようにわが国の罰則がひじょうに甘い。

何しろ、米国の場合は「20年以下の懲役または500万ドル以下の罰金」。500万ドルといえば円換算で約5億2,000万円だ。

わが国でこんなに軽ければ、交通違反と同じで捕まったら運が悪かったとなり反省は少ないだろう。

さらに重要な点は、ドンキ前社長は逮捕されたものの、今後の裁判で金融当局が負ける事例が相次いでいる事実だ。

昭和時代、「誠備事件」で加藤あきら氏は逮捕されたものの、起訴事実の主要部分が退けられ加藤氏は実質無罪となった。また、巨額のコンサルフィーを引き出し特別背任容疑で逮捕された福村康廣氏も無罪となった。

筆者はかつて東京地検特捜部、証券取引等監視委員会(SESC)、関東財務局からヒアリングを受けたことがある。また、あるハコモノ増資マフィアが逮捕された際、裁判用の資料作成を手伝ったこともある。

そうした経験から、なぜインサイダー取引をしても事件化しにくく、また事件化しても無罪になるのか解説しよう。

最もいいたいのは、それだけ当局の調査はぬるいということだ。できればSESCの検査官に読んでいただきたい。

今回のドンキのようなケースの場合、事情に通じる者は摘発されないように推奨された者は――

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image by:Takamex / Shutterstock.com

アクセスジャーナル・メルマガ版』(2020年12月14日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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