ワイドショーで札束をばらまいた闇金王S「金融詐欺事件」の真相

 

いつも秘書と名乗る派手若い女性を連れて裁判所に来ていた。S本人も派手な服を着ていた。また、Sは非常にバイタリティーのある人間であるとの印象を持った。しかし、それを向ける方向が間違っていた。Sは高知県の被差別地域で生まれ、その生い立ちは悲惨なものであって、その点には同情する。その反動であるのか、青年時代から詐欺まがい金儲けに手を染めており、暴力団ともめたこともあるようだ。

この事件で私たち代理人の考えた筋書は次のようなものであった。Sは貸金業者から、債権を二束三文で買い取った、債権譲渡については債権者からの通知も債務者の承諾もない、Sは買い取った契約書押印されている印影を巧みに偽造して、依頼者との間の契約書偽造した、というものである。

しかし、これがほとんど真実だろうと思われても、こちら側としては、それを立証しなければならない。契約書押印の印と、元々の契約書押印の印とに同一性がないことを鑑定などで明らかにするしかない。簡易な鑑定を実施したとの記憶があるが、印は同一という判断であったと思う。それ以上に立証のしようがない。

最終的には、しぶしぶ、ほとんど敗訴のような和解を受け入れざるを得なかった。我々としては、裁判終了後も、先に述べた筋書に間違いがないと確信をしていた。その後、やはり同種訴訟が起こされており、誰かが警察に相談をしたのか、警察が独自におかしいと思って内偵をしていたのか、平成14年に、Sは訴訟詐欺等逮捕された。逮捕事実は、我々の考えていた筋書そのものであった。

その彼も、逮捕されたら素直自認し、そこそこの刑期の実刑判決を受けて服役した。刑務所死亡したとのもあるが真偽は定かではない。彼のことだからもし生きて出所していたならば、そのバイタリティーで有名になっているような気がする(合法違法を問わず)。そのようなことは耳にしないから、獄死の噂は本当かもしれない。

image by: Shutterstock

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