アメリカではすでに先行発売され、高い評価を得ているというMicrosoftの最新ノートPC「Surface Book」。あの天才プログラマー・中島聡さんも、この「Surface Book」の登場によって、PCメーカーの市場勢力図が大きく変わるのではと、自らのメルマガ『週刊 Life is beautiful』で指摘しています。
Surface/Surface Proをあまり評価していない理由
Question
中島さんは、Microsoft の Surface Book を高く評価しているようですが、タブレットであるSurface/Surface Pro の方はあまり評価していなかったように見えます。どのあたりに違いがあるのでしょうか?
中島聡さんの回答
理由は二つあります。一つ目は製品のポジショニングです。Surface や Surface Pro はあくまで「キーボードを付けることのできるタブレット」というポジショニングで設計・販売されているため、今のパソコンで満足している人たちにとっては、敷居が高く、かつ、どうしても iPad と比較される存在でした。
大半の消費者は、「タブレットがノートパソコンの代わりになるのか」に関してはまだ懐疑的で、そんなリスクの高いものに自ら手を出そうとはしないものです。
それに対して、Surface Book は、「キーボードを外してタブレットしても使えるノートパソコン」として設計・販売されています。それも、MacBook のと十分に対抗できる、ハイエンドなノートパソコンとしてのポジショニングです。これであれば、(少なくとも見かけ上の)リスクは少ないし、「そろそろノートパソコンを買い換えよう」と考えていた消費者、特にビジネスユーザーにとって魅力的な製品に仕上がっていると言えます。
二つ目の理由は、OEMメーカーへの配慮からの脱却です。これまで、Microsoft のハードウェアビジネスは、あくまで Windows や Office などのビジネスを補完する役割しか果たしておらず、Windows OS をライセンスしてくれている OEM メーカーへの強い配慮が見られました。
しかし、今回の Surface Book には何の配慮も躊躇も見られません。Surface Book は、パソコン市場のうち、(OEM メーカーにとって)最も利益率の高いハイエンド・ノートパソコン市場を狙っており、これによる OEM メーカーとの関係悪化はどうしても避けられません。これをきっかけに、パソコンビジネスから撤退することを真剣に考えている OEM メーカーも少なくないはずです。
OEM メーカーとの関係を何よりも重視していた Steve Ballmer が CEO だった時代には決して出来なかったことであり、その意味でも私は今回の Surface Book を高く評価しているのです。
Surface Book の登場により、ハイエンドのパソコン市場は、Apple と Microsoft の二社による寡占状態にシフトする可能性は非常に高いと私は見ています。
image by:Microsoft
著者/中島聡(ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア)
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。
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