研究者にとって頭が痛いのが研究費。夢のタイムマシンだってお金がなければ研究することもできません。メルマガ『科学日誌』の著者、安井真人さんは、科学研究についてのシビアな内情を赤裸々に語っています。
時事ネタ 「科学の事業仕分け」
科学研究に無駄がないかの事業仕分けが行われた。
「2位じゃダメなんですか?」というセリフが懐かしい。
案の定、今回も科学研究は無駄であるという結論で終わりそうである。
ニュースで流れたのは、宇宙開発とスパコンに関する研究である。
宇宙開発もスパコンもお金がかかる。
国は借金まみれなので、お金を削れるなら削りたいということである。
科学事業を批判するのは簡単である。
「研究費に対してどれだけの利益がありますか?」と聞けばいいいのである。
科学者側としては、
「利益はない」と答えざるを得ないからである。
利益が出ているなら、国には頼らない。
科学研究は基本的にビジネスと異なる。
目的はあくまで世界のありようを少しでも理解することにある。
もちろん、科学研究の結果、私たちの生活を良くした例は数知れずある。
例えば、
・テレビ
・スマホ
・電気
・車
・インターネット
と数え上げれば切りがない。
しかし、これらはあくまでも副次的なものであり、研究者の多くは世界のありようを理解することを目的に研究を進めたはずだ。
その過程で社会に役立てられるならなお良いという話である。
ただ、近年の財政難のせいか、科学研究は投資であるという考え方が強くなってきている。
数年で利益になる科学研究を進めようと政府が誘導している感が強い。
実際に、AMEDなども科学研究で薬をつくり利益を得るという目的が見え隠れしている。
私も何度か民間企業だけで研究活動できないかを考えたことがある。
しかし、やはり民間企業だと研究は難しいのである。
なぜなら、民間企業だとどうしても、投資効率を指標にしてしまうからだ。
利益をださないと企業は株主から批判される。
そのため、投資効率の悪い研究を民間企業がするはずがないのである。
もし、そのような企業があれば、倒産する可能性が極めて高い。
よって、研究においては「投資」よりも「寄付」という考え方の方があっていると思う。
寄付なら利益にならないことにも手をだすことができる。
その過程で今までわからなかったことが見つかるかもしれない。
いくつか批判を述べたが、お金のない政府が科学研究費を削るのは論理的である。
よって、今後、科学研究費は削られる方向へ向かうことは間違いない。
となると、政府に頼らないで寄付金を集める新しい仕組みの開発をしないといけない。
その一つの社会実験として、私はこのメルマガを行っているわけである。
科学者が政府を介さずに直接市民につながり資金提供を募る仕組みである。
何事も最後に頼りになるのは、国民である。
月500円の研究費支援をいただけるとありがたい。
image by: Shutterstock
『科学日誌』
生物物理学の研究者・安井真人さんのメルマガ。研究の進捗状況について報告、ブログでは書けないざっくばらんな内容を配信します。科学者の日常や最新の研究がわかります。
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