もはやマッドマックス。岡本太郎賞受賞の焼き芋カーは品のいい悪趣味

 

そこに果たして需要はあるのか? そんなもん知るかばかりと、ただ六本木アートナイトで焼き芋を売りたいというアツアツでピュアな想いだけが爆発した「金時」は、2015年に「第18回 岡本太郎現代芸術賞」(TARO賞)の最高位である岡本太郎賞を受賞した。

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岡本太郎現代芸術賞受賞を記念して岡本太郎の作品の下で販売。

 この賞はたえず新たな挑戦を続けてきた岡本太郎の精神を継承し、自由な視点と発想で現代社会に鋭いメッセージを突きつけるアーティストを顕彰するものだが、さらにそれすらを突き抜け、審査員から「芋がおいしかった」という称賛の声があがった。味のよさが受賞の理由のひとつになったのも同賞初の快挙であろう。

そう、この「金時」の魅力は、凶暴に感じるほど勇猛な外観やサイケなサウンドだけにとどまらない。なんといっても、焼き芋そのものがめっっっちゃ甘くておいしいのだ。ネットの評価のなかには「こんなおいしい焼き芋、初めて食べた」という声もあった。

「表現活動といっても焼き芋のグレードにはこだわります。味は、ほんまがんばってます。めちゃがんばってます! 焼き芋にはさつまいもの最高品種『鳴門金時・里むすめ』を使っているんです。鳴門金時とひとことで言っても、いろんな種類あって、何度も焼いて食べくらべました。そのなかでも『里むすめ』は海岸で潮風が当たる険しい状況で育つので、甘さが強くて味が濃いんです。焼くとホクホクで食感もいい。仕入れは中央市場の中卸さんで購入しています。本当なら僕らのような得体のようわからん部外者が入れるところではないし、希少種なので本来は青果の素人が手に入れられるものではないんです。なので徳島県物産協会の大阪支部に話を聞いてもらいにいったんですよ。すると僕らの活動を理解してくださって『わかった。そんなに里むすめを気にいって推してくれるなら、お金を援助することはできないけれど、いい芋を扱っている人を紹介してあげる』と言ってくださって」

アート作品なのに、いやアート作品だからこそ、素材のさつま芋に心血を注ぐふたり。そもそも「金時」というネーミング自体が鳴門金時と、金太郎のモデル「坂田金時」に由来しているのだ。

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ため息の出る高貴なパープル。鳴門金時の最高品種「里むすめ」をご堪能あれ。

 

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後部座席にはシャンデリアに照らされた薪と里むすめがぎっしり。

 

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山脇さん直筆の「坂田金時」(金太郎)。

 

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熊にまたがりお馬の稽古をする幼少時の金時。 馬にまたがるより熊にまたがる方が難しいのに。

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