もはやマッドマックス。岡本太郎賞受賞の焼き芋カーは品のいい悪趣味

 

では焼き芋をセレクトした理由は、なんだったのだろう?

「東京で開催された『六本木アートナイト2010』というイベントに出させてもらえることになったんです。それで『作品を置くだけじゃつまらない』という話をしていまして、そのときYouTubeで、ゴスペル調のアレンジで石焼き芋を売る人の映像を見たんですよ。それから『そういえば焼き芋を売る車って、最近あまり見かけへんな』『焼き芋、ええやん』ってことになったんです。焼き芋だと、香りに誘われて作品に集まってもらえるじゃないですか」

芋が焼けるいい香りで作品に人を集めるとは画期的なアイデア。こうしてアートイベントで焼き芋を売ると決めたYottaは、次にどのような形で販売するかを考えた。

「焼き芋から一番イメージが遠いのがデコトラだろうと。デコトラってダサいと思う人もいるけど、海外の人から見たら印象がかなり違うと思うんです。『外国人が見たNIPPONを、デコトラを通じて表現できるんじゃないか?』。そこが皆、同じ発想で、バチッと合ったんですよね」

デコトラfeat.焼き芋という、アートの世界に前例がないコラボのプロジェクトは、こうして激走をはじめた。ただ使う車が軽トラだとどんなに装飾しても旧来の焼き芋屋さんとあまりイメージが変わらないので、いっそセダンに。それも皇族や内閣総理大臣が公用リムジンとしてお使いになっている国産の最高級車トヨタ・センチュリーを母体にすることに決めた。

「日本生まれの最高の車、という点にこだわりました。それで中古車屋さんで平成6年に製造された8気筒のセンチュリーVT45を購入したんです。けっこう新しい車なんですけれど、センチュリーって型のデザインがむかしからほとんど変わってなくて、時代に流されない威厳があるんです。それにボディが強くって、本当にいい車です。積載に耐えてくれるんですよ」

こうして守口市にあるアトリエでセンチュリーは、頑丈なボディに天守閣のような装飾物を冠載され、途方もない怪物に変貌を遂げた。アトリエは民家だが、改造のために大工さんに頼んで室内にクレーンを設置したというからすごい!

「最初はぜんぜん馴れなくて大変でした。もともと車大好きってわけでもなかったから。初期は外部電源なしでライトを点灯することさえできませんでした。竹やりマフラー(ふうな煙突)もつけていなかった。車に詳しいいろんな人に教えてもらいながら少しずつバージョンアップしていきました」

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初代窯を積んだ金時の上で演奏するYotta。この頃はまだ装飾が少ない。

 

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拠点である守口市のアトリエ。秘密基地めいた雰囲気。

 

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アトリエに設置したクレーンで城塞のようなデコパーツを持ちあげる。

 

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威風堂々としたトヨタ・センチュリーの屋根にパイルダーオン! 改造ではなく積載なのでボディにはいっさい穴をあけていないのがスゴイ。

 

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続いて苦心の末にできあがった二代目窯が姿を現す。 竹やり煙突が羽根を思わせ、まるでセンチュリーのエンブレムのよう。

 

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窯とトランク部分が合体!

 

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見たこともないマシンの整備には見たこともない工具が必要。

 

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ドッキング完了!

 

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作業を終えると窯のススで顔は真っ黒に。

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