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トヨタの本気。ニュルブルクリンク直結のスペシャルモデル、86 GRMN

執筆陣は日本カー・オブ・ザ・イヤー事務局長に元ホンダのエンジニア、というクルマ好きにはたまらない『写真と動画も楽しめる マニアック情報満載カーマガジン AutoProve』がいよいよ2月5日、まぐまぐよりリリース開始。その記念として今回は、限定100台、ニュルブルクリンク24時間レースのノウハウを注ぎ込んだトヨタ初の市販コンプリートカーの全貌を記した記事を特別公開、もちろん写真満載です。

100台限定。レクサス工房でハンドメイドされるトヨタ初の市販コンプリートカー「86 GRMN」の全貌

ボディカラーは「ホワイトパールクリスタルシャイン」の1色のみの設定

2016年1月4日、トヨタ GAZOOレーシングのノウハウを注ぎ込んで開発された「86 GRMN」 がWEBでの商談申し込みを開始した。生産台数は100台限定で、注文は1月4日から22日までの19日間。「86 GRMN」は648万円という高額設定とはいえ、マニアックな購入希望者数が集中することが予想されるため、抽選で購入できる権利が得られるというシステムとなっている。その全貌を紐解こう。

GAZOOレーシングは、ニュルブルクリンク24時間レースへの参戦が活動の大きな柱のひとつになっているが、86は2012年からそのレース活動の一環として出場している。GAZOOレーシングのコンセプトに従って限りなく市販モデルに近い仕様で出場し、走りの質をさらに高めるという目的のレース参戦で、そこから得られたノウハウを注ぎ込んだスペシャルチューンドカーには「GRMN(GAZOOレーシング チューンドbyマイスターofニュルブルクリンク)」のブランド名称が冠せられるのだ。

「86 GRMN」の原点はニュルブルクリンク・サーキット

GRMNモデルはこれまでにマークX、ヴィッツ、iQに設定されてきたが、ベースモデルがそもそもスポーツモデルではないのでインパクトはイマイチだったが、今回の86 GRMNは、レースに出場したモデルであり、GRMNのコンセプトにどんぴしゃのモデルと位置付けてよいだろう。なお、86 GRMNの型式名は「GRMN86-FRSPORT」とされている。また86 GRMNはトヨタが陸運局で予備検査を受けているため、登録時の持ち込み車検という方式ではなく、通常の量産モデルと同様にナンバーを取得できるようになっている。

86 GRMNのコンセプトは、ニュルブルクリンク24時間レースでの経験をダイレクトに反映した、限りなくレース仕様に近い姿をしているが、究極のストリート仕様を目指したという。

すでにスバルSTIがBRZ tSを2013年 と2015年に限定モデルを発売しているが、これとはコンセプトが違っている。86 GRMNはスポーツドライビングを追求するマニアックなユーザー層向けに、スポーツ性能を尖らせるということを狙っているのだ。そのため、86レース仕様が持っているドライビングのテイストをロードカーとして実現しようというわけである。

また86 GRMNは、本物のコンプリート・チューニングカーを目指し、ボディからエンジンまでオリジナルにこだわっていることもこれまでにない特徴だ。

いうまでもなく86/BRZはスバルの本社工場で組み立て・製造されているが、86 GRMNは、そのラインから未塗装のホワイトボディを取り出し、トヨタ元町工場の中にあるLFA工房に送り込んで大幅に改造されているのだ。エンジンも部品状態で入手し、専用開発した吸気系、ピストンなどを組み付け、ボディに搭載される。工房では2台/日のペースで、つまりはハンドメイドで組み立てられる。

  86 GRMN専用に、大きく手が入れられているのがボディだ。レース仕様なみのボディ剛性、特にリヤのねじり剛性を高めることを目指し、シートは2座席とし、リヤのトランク部とキャビンを結合するバルクヘッド部に大型のアルミ製補強パネルとV字形の補強材を追加。またフロア面を補強するため前後にフロア補強材を追加。さらにリヤにダンパー機構付きパフォーマンスロッドを装着している。これらにより、ねじり剛性はなんと1.8倍とし、フロアの平面曲げ剛性も大幅に高められているのだ。

一方で、ボンネット、ルーフパネル、トランクリッドをカーボン製とし、リヤウインドウ、リヤクォーターウインドウはポリカーボネート製とすることでボディアッパーの軽量化低重心化をおこなっている。またフロントのダウンフォースを十分に確保するためカーボン製のアンダースポイラーも装備。リヤのカーボン製ウイングと合わせ、空力特性のバランスを取っている。

サスペンションは、車高調整式・減衰力調整式のKYB製ダンパーを採用し、フロントは倒立式。ダンパー減衰力、スプリングレートともに約30%アップされている。サスペンションのブッシュはリヤのコントロールアームにピロボール式を採用。車高の設定は標準モデルより25mmダウンさせているが、ストロークは標準モデルと同等にしている。タイヤはハイグリップ・タイプのポテンザRE71Rで、フロントが215/40R17、リヤが235/40R17。このRE71Rは86 GRMN専用の構造だという。

ブレーキは、フロントに6ポッド、リヤに4ポッドのアドヴィックス社製の対向モノブロックキャリパーに、ブレーキパッドはノーマルと同じパッドが組み合わせられている。その理由として、レース用のパッドよりストリート走行でコントロール性が優れているからだ。 

エンジンは、もともとものFA20型用のパーツとGAZOOレーシングの専用開発パーツを組み合わせているため、FA20-GR型と名付けられている。専用パーツは、低張力ピストンリングを採用し、クラウン部の形状を変更した軽量ピストン、インテークマニホールドとコレクターチャンバー、インテークホース、エアクリーナーボックス、完全等長のパイプ製エキゾーストマニホールド、そして専用ECUだ。

アルミ鋳造製のインテークマニホールドは可変長インテーク式としており、ECU制御により低速時はロングマニホールドを、高速時はショートマニホールドを使用する。またこれに合わせ、ラジエーター上部にあるY字状のエアインテークも低速時は片側が閉じられ吸気流速を高めるようにしている。

排気干渉を抑えエキゾーストの排圧も低減されており、シャープにレスポンスよく吹け上がり、フィーリングはまさにレース・エンジンだ。出力はノーマルの200ps/7000rpmが219ps/7300rpmに、トルクは205Nm/6400rpm-6600rpmが217Nm/5200rpmと向上している。また加速時のスポーティな排気サウンドもこのエンジンの特徴になっている。

インテリアも2シーターに変更しただけでなく、フロントシートに軽量なレカロ製を採用。インスツルメントパネルやトリム類はイタリア製のアルカンターラ表皮が貼られるなど、スポーツ性を強調したシンプルな仕上げとなっている。

 

 ごく短時間ながら試乗できたが、確かにエンジンのレスポンスのよさは抜群で、アクセルの踏み込みに応じた加速感が得られた。エンジンサウンドも、レーシングカー的に迫力がある。

86 GRMNは見た目の車高が低めで相当にサスペンションは締め上げられているように見えるが、路面との接地はしなやかさがあり、ごつごつ感や飛び跳ねる印象はなかった。これはニュルブルクリンクでの接地性を重視したチューニングをコンセプトにした走り味だと思う。

ボディやエンジンはノーマルモデルとまったく別物で、性能向上のための専用パーツが各所に採用されており、生産台数は100台のハンドメイドということを考えると648万円という価格は妥当だが、クルマ全体のイメージはやはり限りなくレース仕様車といえる。

きめ細かな質感や仕上げという点では不満は感じられるが、ニュルブルクリンクに直結したスペシャルモデルと位置付けるべきだろう。86 GRMNはトヨタ、GAZOOレーシングで初めてボディ、エンジンなどすべてを工房で組み立てるという手法が採用されているが、これは今後のGRMNモデルにも継承されることになるはずで、今後のGRMNの展開は注目だ。

image by: Auto Prove

 

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