生活苦で子供なんて…貧困化する地方には、まず高級官僚を移住させよ

 

それで、実際に地方自治体から出てきたアイデアはどんなものかというと、商品券の配布、結婚を取り持った仲人に5万円の報奨金、若い移住者にポイントカードを配布、といった具体的ではあるが場当たり的なものばかりで、これではとても「地方創生」は覚束ないと思う。かといって国の政策は理念だけだ。たとえば、一口に子育て支援といっても、地方と大都市圏では事情が違う。保育園に預けられない待機児童の数が全国で4万人以上いて、これが子育てを阻害しているというのは、ウソではないが、これは地方の話ではなくて大都市圏の話なのだ。地方では、保育園も幼稚園も定数に満たないところが沢山ある。これが、何を意味するのかと言えば、地方では、子どもを育てる環境はあるのだけれども、若い人は収入が低くて子どもを作ったら食っていけないということなのだ。収入が低ければ結婚もできないので、晩婚化が進む。大都市ならば、若い人が子どもを作っても共稼ぎならば何とか暮らせる。だから、待機児童問題は大都市圏においてのみ発生するのである。 「若い世代の経済的安定」を謳っているけれども、地方に住んでどのように収入を増やすかについての具体的な提言はない。「地方移住の推進」で移住してくるのは、年金生活のお年寄りばかりとなりかねない。これでは「地方創生」ではなく「痴呆創生」になってしまう。

若者が地方に来ないのは、収入の目処がつかないばかりでなく、魅力がある場所がないからでもある。その意味では、「地方大学活性化」はいいアイデアではある。ただ、文科省が主導するような大学ではダメだ。日本の大学は文科省の統制が強く、地方大学は中央の大学のコピーになっていることが多く、志の高い若者には魅力がない。財務省は現在53万円の国立大学の授業料を16年後に93万円に大幅値上げする方針を打ち出しているが、これでは「地方大学活性化」どころか、地方大学は潰れろと言っているに等しい。地元の大学に行って、地元に就職しろといっても、収入の低い地方の家庭が、年間100万円近い授業料を負担することがそもそも難しい。

「地方大学活性化」を推進するつもりなら、授業料を大都市圏の大学より大幅に値下げして、交付金を増やし、文科省が口を挟まないで大学の好き勝手にさせることだ。若者に魅力がある大学が出現して、元気で面白い若者が闊歩する街が出現するだろう。「地方創生」とは、それぞれの地方の多様性をいかに担保するかということであって、安倍政権の考えている国民を統制して、グローバリズムの奴隷にしようという考えとはそもそもなじまないのである。「地方創生」が選挙目当てのインチキ話だとまともな人が思うのは当たり前なのだ。

print
いま読まれてます

  • 生活苦で子供なんて…貧困化する地方には、まず高級官僚を移住させよ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け