なぜ今どきレコードが?クラムボン・ミトが明かす『ここさけ』特典秘話

2016.01.29
by 横田吉木
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レコードにしたことでCD以上の体験が。

2015年9月に全国公開された劇場版オリジナルアニメーション『心が叫びたがってるんだ。』。本作は、累計興収11.2億円を記録し、第39回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞。そんな大ヒット作のBlu-ray/DVDが、3月30日(水)に発売します。

発売に際し、店舗別特典のひとつとして、Loppi・HMV限定版では、描き下ろしジャケット仕様12inchレコード「『心が叫びたがってるんだ。』Original Vocaltrack e.p」とオリジナルノートが付属。

今回、本作で音楽を担当し、レコードのカッティング作業を行った、クラムボンのミト氏へインタビュー。ミト氏にレコードについてや、『ここさけ』で思い入れのあるシーンなどを聞いてきました。

レコードには、CDやハイレゾとは違った魅力が詰まっている

ーーまずは、『心が叫びたがってるんだ。』で、ミトさんが劇中の伴奏音楽(劇伴)を担当することになった経緯を教えて下さい。

ミト:脚本の岡田麿里さんが「ミュージカル詳しい?」って声をかけてくれたのが始まりです。僕の両親がミュージシャンでスタンダード曲を演奏していた影響で、ミュージカルを沢山観ていたという偶然から、劇伴をやらせていただくことになりました。

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ミト氏

ーーミトさんが劇中のキャラクターで一番共感できたのは誰ですか。

ミト:坂上拓実ですね。自分に似すぎていて、観るときは感情移入しすぎないようにしていました。拓実も僕も、人や会話の深部に触れないで生きたがる人なので、自分の心の中をどんどん言えてしまう人は、羨ましくもあり、苦手だなぁと。そして「苦手だなぁ」という顔をしている拓実がすごい好きです。

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坂上拓実

ーーやはり『ここさけ』と言えば、クライマックスにあたる二重奏が印象的でしたが、そのシーンが生まれた経緯も教えて下さい。

ミト:子供の頃から、異なる曲と曲を合わせるという遊びをしていて、『悲愴』と『Over The Rainbow』を一緒にできるというのは考えていました。そこに「心が叫びだす」という歌詞があったので、これは『悲愴』じゃないかと思い、この構成にしました。

--レコードについてお伺いいたします。レコードを製作することとなった経緯を教えていただけますか。

ミト:「サウンドトラックをアナログレコードにしたい」と思っていて、それを方々に言っていたんです。そしたらアニプレックスの皆様もレコードを作りたいと思っていたようで、今回、特典という形で実現しました。

ーーそういった流れだったんですね。今回行ったカッティング作業とは、どういった作業になるのでしょうか。

ミト:CDのマスタリングと同じような工程です。レコードでは、調整して溝を刻むという工程をカッティングと言います。刻み方によって、音の良さや、どの部分を聴いて欲しいか、などが変わってきます。他にも、溝は深くて太いほうがいい音になるし、外側から内側にいくに従って音は落ちていくため、内側をどこまで使うかなどもあるんですよ。今回はレコードの大きさが12inchで、ゆとりのある溝を彫ってもらえたこともあり、凄くいい音になりました。

今回は声がメインの曲が収録されているので、成瀬順役の水瀬いのりさんの声、仁藤菜月役の雨宮天さんの声が、過不足なく、すごくキレイに聞こえる。悲しいかな、CDではここまで効果を出せなかったな……。

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成瀬順

ーーそれはレコードならではの効果ということでしょうか。

ミト:レコードは、「ココ」っていう音楽の一番美味しいところだけを引き上げてくれて、音が凄く濃厚で太く感じる。歴史の重みもあるでしょうけど、勝てないものなんだな〜と忸怩たる思いをしました。

CDやハイレゾなどのデジタルにはない、ゆらぎや不規則性が関係していると思うのですが、音の立体感が違う気がします。CDが2次元だとすれば、レコードは2.5次元のように聴こえるんです。

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仁藤菜月

ーーミトさん自身のレコードへの思い入れはありますか?

ミト:レコードは確実に1万枚以上持っていると思います。中学卒業の頃にはすでに2千枚くらい持っていましたよ。初めて買ったレコードはレイ・パーカー・ジュニアの「ゴーストバスターズ」。映画を見た後に、一緒に映画を見に行っていた母方のおばあちゃんに買ってもらったのを覚えています。

ーー今回Loppi・HMV限定版を購入して、初めてレコードを手にする、という方々もいらっしゃると思うのですが、「機材はコレで」などありますか。

ミト:別に高い機材を買って環境を整える必要は全然ないです。レコードならば、小さいスピーカーで聞いても、音の大事な所が逃げていかないと思います。それにレコードは、自分の音楽環境を彩ってくれる。なぜだか分からないけど、ワンステージが上がったような感覚になれます。

今までレコードを聴いたことがない人は、CDとの違いに驚くと思いますよ。なのでぜひ、これを機にレコード機器を揃えて聴いて欲しいですね。

レコードで『ここさけ』がもっと好きになる

レコードには、「あこがれの舞踏会」「わたしの声」「玉子の中にはなにがある」「心が叫びだす~あなたの名前呼ぶよ」「Over The Rainbow」「Harmonia」の6曲が収録されています。

ミト氏も絶賛するこのレコード。Loppi・HMV限定版の特典ですのでご注意を。Blu-ray/DVD合わせて3,000セット限定となっていますので、購入を考えている方は、早めに予約した方がよさそうですね。

◯ミト(クラムボン)Profile
クラムボン(www.clammbon.com) のバンドマスターとして、ベース、ギター、キーボード他を担当。デビュー以来クラムボンのほとんどの楽曲はmitoによるものであり、自身のバンド以外にも、楽曲提供・演奏参加、プロデューサー、ミックスエンジニアとして、多くのミュージシャンを手がけるほか、映画やTV、アニメの楽曲制作を行う。複数のソロ名義でも多岐にわたり活動しており、2011年には初のmito名義となるソロアルバム『DAWNS』を発表。同時に参加曲を集めた『mito archive 1999-2010』も発売している。また、牛尾憲輔(agraph/LAMA)とのアニソンDJユニット、2 ANIMEny DJsとしても活動中。

◯商品情報
【Loppi・HMV限定版】[Blu-ray]¥9,980+税[DVD]¥8,980+税
Loppi・HMV限定版購入ページヘ

◯information
『心が叫びたがってるんだ。』ホームページ 

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