【春闘】かつては国鉄が8日もストップ。もうストは時代遅れなのか?

 

毎日新聞での激しい闘争

春闘の激しい時代、入社から7、8年後の78年頃、毎日新聞は関連会社の赤字が積り本社経営が揺らいでいた。給料も上がらず、ボーナスもほぼ出ない状況の中、私は組合の執行部に「専従役員」として従事。何度も会社の経営陣に賃上げやボーナスを要求したが回答が出ないため、組合側では「新聞の夕刊停止」という戦術に出た。新聞を停止することは驚天動地の話。新聞は関東の一番遠い地域むけの1版、神奈川など向けの2版、東京都心部むけの3版に別れており1版の記事の締切が11時。

交渉を続け、こちらとしても脂汗が出るほど緊迫した状況だったが、11時までに会社からの回答がなく1刷を出すことが出来なかった。その後、経営陣との交渉は続き、双方譲らぬ状況で手に汗握るものであったが2版目の締切前に会社が折れ、2版を1版の地域に配ることとなったが1版の地域は遅配となった。本当にチキンレースのような激しい闘争だった。

ボーナスは生活給の一部

あの当時は「春闘」が激しい時代でもあり、生活も苦しく賃上げ、ボーナス要求は「生活給の一部」ということで、春闘は「物価+αの賃金アップでないと生活の向上はないというように言われていた。それが高度成長になり、企業も労働者もおカネに余裕が出てきたことで様相がだいぶ変わり、「そんなに闘っても賃上げができないのであればいいのではないか」という意見や、賃上げだけではなく労働時間の短縮残業手当の増加の要求など春闘の意味が変わってきたように思う。80年代以降になると闘う春闘ではなくなっていった。

労働組合の組織率は大幅に減少

最近は全国の労働組合の組織率も随分減少傾向で、我々からすると衝撃的で信じられない数値。以前は組合の組織率が60、70%あったのが現在は17.5%(2014年)。大きなストライキを行なう企業は少なくなり、経営側と組合双方が情勢を分析し合って、意思疎通や合意形成をはかるようになり闘わなくなってきた。そのことから、組合費を払わないほうがいいということにもつながってきたのだと思う。

しかしながらこれはいいことかどうか疑問があり、ここからはみ出てくる人もいる。それは何かというと、正規の労働組合と非正規の労働組合にわかれたということが大きい。非正規の労働者が非常に多いにも関わらず、そこには波及しない。おそらく今後の春闘は、「非正規の人達の賃上げをどうするのか」ということがものすごく大きな課題となるように思う。今年は大企業もそういうことを意識して春闘の要求を少し控え目にして足並みをそろえようとやっているが、はたして効果がでるかどうか。

非正規の人たちの生活向上をはからないと、社会が不安に陥るということもあるため、この対策をどのようにしていくのかということがこれからの大きな課題にもなっている。

春闘はすっかり様変わりし、官製春闘はもうそろそろ終わりなのではないかと思う。

(TBSラジオ「日本全国8時です」2月23日音源の要約です)

image by: Wikimedia Commons

 

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