男性にも積極的な育児参加が求められている今、産後うつはもはや母親だけの問題ではありません。社会的に認知された症状であるからこそ生まれるメリットとデメリットもあります。産後という難しい時期を乗り越えるのに必要とされることは何なのでしょうか?
産後うつは女性だけの問題ではなかった?
米ワシントンポスト誌は今月、産後うつは母親だけではなく、そのパートナーにも影響を及ぼすという記事を掲載しました。
専門家によると、出産後の母親の13~14%がうつ症状に苦しむというデータに対して、妻が妊娠しているとき、または産後に10%の父親が落ち込んだり、不安を感じた経験あるという調査結果が出ているそうです。
出産後の女性の身体は、妊娠前の状態に戻ろうとするためにホルモンバランスが変化し、心身ともに不安定な状態になっています。
そこへ育児疲れや家事などが重なり、すべてをうまくこなせない罪悪感から産後うつを発症すると考えられています。
一方で、男性のうつ症状はホルモンバランスが原因ではなく、うつ状態に陥った妻と、自分の置かれた状況が原因で発症し、このような不安に襲われるのだそうです。
「これが本当に自分の結婚した妻と同じ人物なのだろうか? この状態がずっとこの先も続いて行くのだろうか? 妻を失うときが来るのではないか? 子どもを持った事は間違いだったのだろうか? でも、どんな状況になろうと仕事をやめるわけにはいかない・・・」。
産後うつに対する保険を推奨するアメリカ
アメリカでは、産後うつを発症した時のための保険を推奨する動きがあり、保険料への懸念がかえって国民の負担になっているという話があります。
そもそもアメリカには、日本のように健康保険加入への義務がなく、個人の意思で公的な健康保険、または民間の保険会社が提供する健康保険へ加入するシステムになっています。
しかし、保険費用が高額なため、すべての人がサービスを受けられているわけではありません。
さらに、保険でカバーされていない病気になった場合は、高額な医療費をすべて負担しなければならず、自己破産をしたり、満足に医療を受けられないケースが生じ、長年、アメリカで最も深刻な問題のひとつとされています。
そのような状況下で、さらに産後うつと診断された場合も想定して保険に加入しなければならないとなると、うつ症状を隠したり、サポートが必要な状況でも申告できない人が増えてしまうのではないかという懸念が広がっています。
産後うつの予防策は?
女性の場合の産後うつ症状には、ホルモンバランスが大きく影響しており、これは一種の病気であると認識することがパートナーには求められています。
「妻が間違っている」と決めつけるのではなく、いつもと違った人格や、不安定な精神状態が続くのは、病気のせいであると認識することで、妻を責める感情や、この状況がずっと続くのではないかと言う不安を和らげることができるとのこと。
また、夫婦の間だけで解決しようとせず、公的機関に相談をしたり、専門家によるセラピーを受けることも推奨されています。
母親はなんでも完璧にこなそうとせず、すべてに手が回らなくても仕方のないことだという楽観的な考え方を持つ事も大切です。
とても基本的なことのように感じられるかもしれませんが、お互いの置かれた状況を正しく理解し、無理が生じる前に外部へサポートを求めることが、難しい時期を乗り越える一番の近道なのかもしれません。
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source by The Washington Post, The New York Times, Romper
文/長塚香織