映像に魔法をかけろ。ハリウッド一流のVFX職人が「視覚効果」を種明かし

2015.06.09
by 横田吉木
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魅力あるショートフィルムを上映している「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2015」。6月14日(月)まで、東京4会場と横浜にて上映されており、鑑賞は基本無料(一部除く)ということもあり、連日好評を博しています。

そんな中、7日に表参道ヒルズ スペース オー会場にて、クリストファー・ノーラン監督作品『インターステラー』で2015年度米国アカデミー賞視覚効果賞を受賞したイアン・ハンター氏による「ハリウッドVFXセミナー」が行われました。

映像マジックの奥義に迫った大満足の講演

まずVFXとは、Visual Effects(ビジュアル・エフェクツ)の略です。映画やテレビドラマで現実では再現できない、しづらい画面効果を実現するための技術で、視覚効果とも言います。

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今回のセミナー講師であるイアン・ハンター氏とは、クリストファー・ノーラン監督作品の『ダークナイト』や『インセプション』など、数々の大ヒット映画においてVFXを手がけています。さらに『インターステラー』にて2015年度米国アカデミー賞視覚効果賞を受賞した、アメリカのVFXの第一人者です。

そんなイアン・ハンター氏のセミナーということもあり、国内の映画好きが集まり、会場はほぼ満席となりました。セミナーは、『ダークナイト』や『インセプション』、『インターステラー』などの精巧なミニチュアを使用した撮影の様子をスクリーンに映し、解説していってくれました。

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インセプションで雪山の上にそびえ立つ病院を爆破するショットでは、クリストファー・ノーラン監督に壊れ方を細かく要望されました。夢の崩壊というストーリー的な意味にそぐうことを求められたのです。

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この病院は47フィート(約14m)のミニチュアを、空撮的に70フィート(約21m)のクレーンカメラで撮影しました。

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爆発のシーンは私がボタンを押したのですが、非常に楽しませてもらいましたよ。

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ダークナイトライジングの冒頭の飛行機を乗っ取るシーンでは、模型を作成して撮影。フルサイズの飛行機をスキャンしてCGモデルを起こし模型を製作。

また同作では、悪役ヴェインの地下隠れ家を壊し入ってくるバットモービルのシーンも手がけました。実写とVFXを交互にながれるシーンとなりました。クリストファー・ノーラン監督は、ミニチュア撮影をカット単位でなく一連のアクション全てを撮り、編集で切り刻む。実写と同等に扱われるのは非常の光栄です。

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『インターステラー』の宇宙船は早い段階からデザインにも関わることができました。アートデザインからまずCGモデルを起こし、ベースの模型を製作。そこにディテールを物理的に追加していきました。細かいパーツは3Dプリンタを活用しています。

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なかでも宇宙船レンジャー号の爆破は気を使いました。宇宙空間では空気がないので迅速に鎮火するし重力もない。そのために撮影時は天地をひっくり返し、グリーンバックではなく夜空を背に撮影しました。

使用したミニチュア技術は、当初4割ほどの予定でしたが、制作を進めるにつれてその割合が多くなり最終的には9割にもなりました。あるいみドキュメンタリーのような映画となり、クリストファー・ノーラン監督のストーリーを描くことができました。

そしてセミナーが終わり、最後に質疑応答が一問だけ行われました。運良く選ばれた質問者は「フルCGとVFXの比率は今後どうなる?」との質問を投げかけ、ハンター氏からは、「CGは公開ギリギリまで修正可能。ミニチュアはリアルでCGよりも安くすませられることもある。しかし詳細な計画が必要で一発勝負となる。監督がどちらにコミットするか。中規模程度の作品ではVFXは重宝されるのでは」と語ってくれた。

そしてハンター氏が退場し終了。終わってから参加者達同士で話し合っている姿を多く確認できました。

セミナーの模様は、後日配信予定となっていますので、ハリウッドの超一流の“職人技”をご覧になってみてはいかがでしょうか。

information:
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2015

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