見えてきた次世代SNS…伝説の日本人プログラマーが予感した変化とは?

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そして、今注目すべきなのは、これほどの成功を収めている Facebook が、Instagram、WhatsApp と大型買収を続けなければならないか、です。

Instagram に関して言えば、「写真の共有を通じたコミュニケーション」という急激に伸びているコンテキストをFacebookとして奪われるわけにはいかなかったのが一番の理由です。WhatsApp に関しても、Eメールやショートメッセージに変わるコミュニケーションツールとして、若い人たちのデファクトスタンダードになる前に買収したかったのです。

この2つの買収に共通するのは、汎用のソシアルコミュニケーションツールである Facebook では把握できない、若い人たちの行動パターンの変化なのです。その意味では、Facebook が何をしようと、次から次に若い人たちを Facebook から引き剥がすサービスは誕生するし、そのたびに Facebook は買収をし続けなければならないと予想できます。

そして、今の状況から類推して、これから台頭するだろうと私が注目しているのは、この傾向をもっと過激にした、ハイコンテキストなSNSです。具体的に言えば、「日本に住む、原宿ファッションに憧れる16~17才の女の子」だとか「米国に住む、アウドドア派の18~24才の独身の男性」「ヨーロッパでEDMを楽しむ20代後半から30代前半の富裕層」などのターゲットを絞り込んだ SNS です。

ある意味、紙の雑誌のようにコンテンツのキュレーションを行う編集スタッフを抱え、彼らが雑誌を編集するような発想で、絞り込んだターゲットのユーザーから投稿されて来た写真や動画コンテンツを、編集・編成し、そのターゲット層に生まれつつある特定のムーブメントを支援するのです。

なぜ私がそんな形が台頭すると考えているのかと言えば、その背景には既存の紙の雑誌のビジネスモデルの崩壊があり、汎用ツールである Facebook や Twitter には限界があると感じているからです。

こんな話を Google や Facebook のエンジニアに言えば、ほぼ確実に「その欠点は技術でカバーできる」と言うと思いますが、私の見方は違います。確かにテクノロジーを使えば、ユーザーの好みも把握できるし、好みが一致する人同士の出会いを演出することも可能です。

しかし、「原宿ファッション」や「EDM」のようなムーブメントには必ずカリスマ的なリーダーが必要だし、そこには人間の手が介在する必要があると私は思うのです。

Veemob でも、この「これからはハイコンテキストなSNSが複数台頭する」という仮説に基づき、ある明確なターゲットセグメントに向け、そのセグメントのユーザーにカリスマ的な影響力を持つ編集者を迎えて新しいサービスをローンチすることを計画しています。

『週刊 Life is beautiful』2015年6月9日号より一部抜粋

著者/中島聡(ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア)
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。
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