女社長の交友録
弊誌メルマガ『まぐWoman』の連載企画でおなじみの、幅広い交友関係を持つアパレル会社社長・藤島彩子社長が、いまをときめく働く女性に直撃インタビュー!親しい間柄だからこそ引き出せる、美しきカリスマたちの素顔をお届けします☆
起業のスタートはネットオークション
藤島社長(以下、藤) 同業の友達とよく「どこの洋服屋が売れてるか」って話をするんですけど、そのときによくsugarさんのお名前を聞いていて。しかも女社長だし、すごく若いっていうじゃないですか。気になってフェイスブックをのぞいてみたら、清楚でキレイな方だったのでますます会いたいと思ってしまって。で、そのままフェイスブックで友達申請させてもらったんです(笑)。
清水社長(以下、清) 突然のメッセージが始まりでしたね(笑)。私はももえり(桃華絵里)ちゃんのブログで藤島社長のことを知っていたんですよ。まさかメッセージいただけると思っていなかったので、すごく嬉しくて。というか、私のほうが藤島社長にお会いしたかったんですよ。
藤 名前も同じ「彩子」ですしね(笑)。さっき聞いてもっとびっくりしたんですけど、この若さで年商10億って本当にすごい! 早速なんですけど、会社を作ろうと思ったきっかけを聞いてもいいですか?
清 携帯のネットオークションです。起業する前は実家が経営するコンビニを手伝っていたんですよ。でも時給があまりよくないから、新しい服が欲しくなるとネットオークションでいらない服を売ってリサイクルしてたんです。そんなときに、自分が売ったものが買ったときの値段よりものすごく高く売れてしまって!
藤 え、何を売ったんですか?
清 当時流行っていたアルマーニ・エンポリオさんのTシャツです。8,000円で買ったものなのに25,000円で売れたんですよ。私が使い古したものなのに!! それとキャバクラを手伝ったときのドレスもオークションに出したら、それも買値の2倍で売れちゃって。普通だったら40~50%いけばいいのに。ましてや、リサイクル品が3倍の値段で売れるなんてありえないですよね。そこに味をしめて、同じようなTシャツを買ってきてはオークションに出品するようになったんです。
藤 私もやりたい(笑)。本当、洋服屋が長いから洋服だらけなんですよ。1回も着てないものも超いっぱいあるし。
清 私もいっぱいあります(笑)。でもいまはもう売れない時代になっちゃったんですよ。当時はまだzozotownもないし、通販をしているブランドさんがほぼなくて。だから、地方の人も雑誌を見てはみんなこぞって東京まで遠征していたわけです。でも、お店に行ったところで狙った商品を必ず買えるという保証もないし。だったら元値より高くなっても、競り落とせば確実に買えるオークションを利用した方がいいという風潮になっていたんでしょうね。
藤 ネットビジネスの先駆けですね! それでどのくらい稼いだの?
藤 私もちょうどその頃LAでドレスを買い付けて日本で売る仕事をしてたんですけど、ある時期から「みんなネットで買うから」と言って、卸先である実店舗がどんどん縮小してなくなってしまって。きっと時代の境目だったんでしょうね。お話聞いてびっくりしましたもん。ネットでそんなに売り上げが作れるんだって。
清 そこの境目にビジネスチャンスが生まれたわけですね。加えて言えば、新潟で成功できたのもインターネットがあったからですし。よく「なんで新潟?」って聞かれたり「東京に住んじゃえば?」とも言われるんですけど、新潟だからこそうまくいくことが、いまの時代にはあると思うんです。場所を気にせず地方から発信して、世界に通用する会社になれたらいいなというのがいまの目標のひとつでもあるんですよね。
藤 なるほど。でもオークションをやってた当時はパソコンじゃなくて、ガラケーでしょ?
清 はい。それだけでやってました。
藤 やっぱ売り方も上手だったんでしょうね!
自分でドレスを着て、売り込みに奔走
清 そこはやっぱり私も欲が深いというか、商売っけがあったので(笑)。たまたま新潟の繁華街で遊んでいる時に、飲み屋ビルの1Fにある8坪の店舗が空いてるのを見つけたんですよ。すごく小さいし家賃が安かったからこそ、「私でもお店ができる」と思えたんです。街で見かけるのがスーツを着てるコばかりだったから、ドレスを流行らせることもできるなとも思えたし。すべてがプラスプラスに働いて「ここで店を出そう!」って決めました。
藤 すごく運命的な展開ですけど、最初から売れたの?
清 いや、売れなかったですね。企業のきの字も知らずに始めてるから、どうやればお客様が来るかわからなくて。待っていても誰も来てくれないので、自分がドレスを着て「いらっしゃいませ❤」って営業してみたり(笑)。そうすると少しずつ物珍しさでお店に入ってくれる人や、「着てみよう」って勇気を持ってくれる人が増えてきて。誰か1人がお店で着始めると、その輪も徐々に広がって行って。ドレスの方がスーツよりも華やかさが出るじゃないですか。告知しないとお客様が来ないことにも気づいて、手書きのチラシを作ってビラ巻きに行ったりもしてました。
藤 オークションで儲かってるんだからいいか、とは思わなかったんですか?
清 よく言われてましたね。でもその間はネットオークションを辞めてたんですよ。そんな時間もなかったし、店舗を軌道に乗せることで頭がいっぱいで。外販をやろうと思い立ったときは、ドレスを持ってアポなしでキャバクラを回りましたね。大概追い返されましたねけど。田舎ってやっぱり閉鎖的で、よそ者を嫌うんですよ。
藤 新規の営業ってなかなか受け入れられにくいですもんね。
清 でも数打ちゃ当たるもので、東京のキャバクラに遊びに行ったことがあるオーナーさんは「待ってたんだよ、こういうドレス。うちはドレスに切り替えたいと思ってたから、買ってあげるよ」って喜んでくれて(笑)。で、そのお店がドレスに変わると、今度は知り合いのお店をたくさん紹介していただけて。地方の面白いところなんですけど、最初はめちゃくちゃ閉鎖的でも、一度仲良くなるとものすごく良くしてくれるんです。それでどんどん輪が広まって、みんながドレスを着るようになって。2年目くらいでようやく人を雇えるようになったんです。
社長として大事なのは組織作りと社員の育成
清 70人です。
藤 それもすごい!! え、全員の名前も覚えてるの?
清 はい、それはさすがに(笑)。それに顔を合わせていればだんだん自然に覚えていくものなので。でも、うちっていまだに役員が私1人だけなんですよ。さすがにそろそろ役員候補を育てていって、スキルアップさせてあげなきゃなと考えてます。そのためにも、私自身がこれから学んでいきたいのは、組織というものをどう作っていくかということ。物を売るのも大変ですけど、そのためにも人をどう育ててどう一緒にやっていくかが大切じゃないですか。
藤 そうですね。私も一番大事なのは、人を育てることだと思ってます。私もずっと営業でやっているなかで思うのが、「自分で売るのは簡単だけど、自分の代わりに売れる人間を育てるのは難しい」ということですね。
清 本当にそうなんですよ。私はそれこそが経営者だと思っていて。自分で売りに行くのは営業マンであって、企画であって。人を動かせて、人がついてきて初めて経営者になるのかなと。それが社長の仕事の大部分を占めるものだと思うので、そういうことができる経営者になりたいですね。それを実現して、自分が動かなくても売り上げが伸びる組織作りをしないと、いま以上に会社を大きくすることもかなわないだろうなって。
藤 組織作りについてはどんな勉強をしてるんですか?
清 青年会議所に入会して基礎を学んでます。私、就職をしたことも組織に属したこともなかったので、いろいろなことが勉強になってます。特に素晴らしいと思ったのが、リーダーを半年~1年で切り替えるという部分。うちの会社って、まだ誰がリーダーにふさわしいかわからないんですよ。平均年齢28歳ですし、みんな若くて勤続年数が浅いので。だからとりあえず全員にリーダーをやらせてみようと思ったんです。10人制の部署に分けて、半年の任期でリーダーを指名して。もちろん最初はうまくまとめられないですよ。でもその子はリーダーの苦労を理解することができる。しかも、事前に「半期でおしまい」とアナウンスしてるから、降格するわけでもないですし。
清 そう。だから、その人のモチベーションを落とさない状態で、次のリーダーを育てることができるわけで。あと一度リーダー経験した人って、大変さを知ってるから「次のリーダーを支えてあげよう」って思うようになってくれるんです。
藤 ものすごくいいサイクルですね!
清 そのやりかたを学んで実践するようになったおかげで、70人という大所帯をまとめられるようになりました。会社が成長してこれたのも社員たちがいい方向に育ってくれたおかげですね。
藤 人がどんどん育って会社のベースがしっかりすれば、会社自体も大きくなりますもんね。
清 チーム力は大事ですね。3.11や消費税増税などで世の中の消費が落ち込んでいる中でも、うちは120%の業績を伸ばすことができたんですよ。それもみんなが仕事に対して高いモチベーションを持ってアイデアや、お客様に対する親切心を持ってくれているから。やっぱり“会社は人”ってことですよね。
細かい気配りでより幅広いファン層を獲得
清 キレイにしてました。オークションって楽天さんと同じくらい厳しくて、必ず評価されるんです。で、その評価の数値って、レビュー以上に重視されてるんですよね。だから返信や配送が遅れるとか、ちょっとでも変な対応があるとそこに反映されちゃうんです。おかげで丁寧な梱包や迅速な発送、問い合わせ対応の重要さをオークションで叩きこまれました。
藤 過去の経験が生きてますね!
清 箱について考えたのは「ダンボールが果たしていいのか?」ということ。私、通販大好きなんですけど、あのダンボールを捨てるのがおっくうで(笑)。だから梱包時の外装を箱か紙袋か選べるようにしたんです。いざ試してみると、圧倒的に袋の方が多くて。お客様に選択肢を増やしてあげるなどの工夫も必要だなって思いましたね。
藤 アイデアが豊富ですよね。いつも他にない物を先駆けて出してる印象がありますし。最近も「sugarさんのヌーブラがすごくいい」という噂を聞きましたよ(笑)。
清 ありがとうございます(笑)。使い心地もそうなんですけど、パッケージにも実はすごくこだわったんですよ。一見ヌーブラだとわからないようなかわいいデザインにすることで、「箱もかわいくて好きです」って言ってくれる人も増えたり。ちょっとした心遣い1つでお客様の感想が変わってくることも、やりがいに繋がってます。
かわいいのは当たり前。大切なのは機能性でどう満足してもらうか
藤 最後にかわいいものを作るこだわりを聞いてもいいですか?
清 かわいいものを作ったり売るというのは当然ですね。ダサいものは売りたくないし、会社のイメージにもかかわることなので。「これがいいな」と思ったものをベースにしてますが、最近は自分よがりになりすぎてもダメだなとも思うんですよね。自分が売りたくて売ればいいって言うのは、若い考え方かなと。お客様が何を求めているかという要望に寄せ過ぎても飽きられちゃうから良くなくて。一番理想的なのは、お客様に「こんなの待ってたんだよね!」って言われるくらい、期待値をくすぐるものを作ること。売り上げって自分の評価のひとつでもあると思うので、その部分を刺激できたら最高だなって。
藤 なるほど。ドレスもオリジナルで作ってらっしゃるんでしたよね?
清 はい。うちは「どういう商品を作ったら喜んでもらえるんだろう?」と考えて伸びてきた会社でもあるので、問屋さんにも協力してもらってます。やっぱりお客様の要望をダイレクトに叶えるには自分で作るのが一番早いんですよね。店頭に立ってると、お客様の声を直接聞くこともできますしね。
藤 どんな意見が多いんですか?
清 例えば「スピンドルがきいてないと調整ができなくて不便だ」とか。いろんな声を聞くと、商品自体の質も良くなりますし。デザインだけではなく機能性といったところも考えてこそ、初めて物作りといえるんだろうなと思っているので。だからこそ、いただいた意見をちゃんと形に変えてあげたいなと。
藤 そのときのパターンナーやデザイナーはどうしてるの?
藤 その工程を全部自分で出来る人ってなかなかいないですよ。ドレスって型が命ですし、生地ひとつでも印象が変わってきますからね。ものすごく細かい作業が必要だから、自分でできちゃうって本当にすごい。それに、作ってる人の大半は男性ですしね。
清 そうなんですよね。実際に着たことがない方だと、女の人の悩みもわからないし。ヤセてる人でも下っ腹は出てたりするし、で、みんな胸は絶対盛りたいし。でも窮屈なのは嫌という(笑)。女のコってわがままだからいろんな要望があって。いま言ったことって全部デザインではなくて機能の方なんですよね。その機能性をどれだけ満足させてあげるかといったところが、うちの強みでもあるかなと思ってます。
藤 だからお客さまも安心して選べるというわけですね。
清 かわいいという感覚は、自分たちのカンを信じるしかないです。たまに失敗することや「私の趣味思考っておかしかったのかな?」と思う時もありますけど、それに凹んでるヒマはないので。自分を信じて自分がかわいいと思ったものが発信できて、それで喜んでもらえたら自分の自信にもつながるし。そう感じるからやりがいを持ってできるのかなって思います。夜のお店に行って、「sugarでドレス買ってるよ」って聞くのもすごく嬉しいですし。きっと、その言葉が一番のご褒美ですね(笑)。
【今回のゲスト】
株式会社sugar代表取締役。1982年生まれ。2004年、自分の持っていた洋服をネットオークションに出したことをきっかけに、ビジネスの面白さに目覚める。翌年には、社会人経験のないまま、ドレス販売のショップを開店。自分がドレスを着て飛び込み営業を行うなどユニークなセールス策で売り上げを伸ばし、その活動は人気モデルの注目も集めた。現在では、「sugar」「Jewels」「JEWELS PROM」、ルームウエアの新ブランド「SECRET KEY」という4つの通版サイトと実店舗も2店運営。その年商は10億円にのぼる。清水社長のブログ。
【聞き手】
トムズアンドコレクティブ株式会社代表取締役。美大卒業後、アパレルメーカーにて、MD(マーチャンダイザー)・営業職を経験し、今に至る。現在、トムズアンドコレクティブ株式会社代表取締役。人脈の広さを活かし多岐に渡り、コラボレーションやODMを手掛け、ファッション等の仕事に従事しながら、 ショップチャンネルに出演し自社ブランド『アンコキーヌ』の販売にも注力。ブログ『藤島彩子のブログ』には多くのアクセスと読者がついており人気を博している。
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