中村うさぎが人生経験から自信を持って回答する。「絶望を抜け出す」普遍的な方法

 

私の作品を読んでくれている中高生の皆さんに向かって言った言葉です。
思春期の頃って、大人になってから振り返るととてつもなくちっぽけなことで本気で悩み苦しんでたでしょ。
大人になれば「あんなことで悩まなくても、こうすればよかったのに」と思えるけど、でもその時の本人にとってはものすごく大きくて深刻な問題だった。
でも、そういうこともひとつひとつ、私たちは乗り越えて生きていけるんです。
大丈夫、出口のないトンネルなんかないから、あなたはきっと今の問題を乗り越えられる、と、思春期の彼らに言ってあげたかった。

ところがその後、私よりも年上の大人がそれを読み「励まされた」と言ってくれました。
思春期の子たちに言った言葉なのに、50代の人にも届くんだ、と嬉しかったですよ。
そして、人間はいくつになっても出口を見失って苦しむんだなと知りました。
さて、当時30代半ばだった私に「励まされた」と言ってくれた彼ですが、その後見事にトンネルから脱出し、今でも元気に溌剌と生きています。やっぱり、いくつになっても「出口のないトンネルはない」のです。

私たちは年を取り、いろいろなものを失くしていきます。
若い頃には信じられた夢や希望も、年とともにひとつひとつ消えていく。
大切な人もひとりひとり失われていくでしょう。
だから、年を取れば取るほど「絶望」への対処は難しくなります。

でもね、それでも私は信じてます。
この世には「出口のないトンネルはない」のだと。
絶望の最中にいる時は出口なんかどこにも見えません。
だけど、それは見えないだけで、絶対にあるんだよ。
暗闇に目が慣れてきたら、きっときっと見つかるんだ。
手探りで歩いてるうちに、何かにその指先が触れる日が必ず来る。

これはもう信念です。
ひとりひとりの出口を探してあげることはできないけど、私はこの信念を伝えることで、その人の暗闇にほんの少しでも光が差せばいいなと願う。
私だってこれまで何度も「もう出口なし」と思ったけど、どうにかトンネルを抜けて、今もこうして生きてます。
これからもきっとトンネルに入っちゃうんだろうけど、そこにも出口はあるんです。

30代半ばの頃に若者を励まそうとして言った自分の言葉が、58歳になった今も私を支えています。
だから、私はこの言葉を信じてます。
そして、あなたにも信じて欲しい。
だって本当だもの。
自分の人生を振り返って、自信を持って言えるもの。

以上が、先日のトークショーで質問してくれたあなたへの回答です。
役に立ったかどうかわからないけど、届いてくれたら嬉しいです。

source: 中村うさぎの死ぬまでに伝えたい話

image by: Shutterstock

 

中村うさぎ中村うさぎの死ぬまでに伝えたい話
著者:中村うさぎ
週刊文春連載『ショッピングの女王』『さすらいの女王』に続く新女王シリーズ『女王様のご生還』が読めるのは当メルマガだけ! 女王様の気まぐれで自筆挿絵付?その他、中村うさぎ本人から回答させていただく『中村うさぎの人生相談』、10年の時を経て中村うさぎ本人による新たな解釈を加えて大幅加筆された『週刊四字熟誤』など、中村うさぎがフルパワーでお届けいたします。
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