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ヤマダ電機が黒字3倍、劣勢の家電量販店でなぜ勝ち組になれたのか?

ヤマダ電機が黒字3倍、劣勢の家電量販店でなぜ勝ち組になれたのか?

16年3月期の連結決算の最終利益が前期比の3.3倍と、大幅な増益となったヤマダ電機。熾烈な値引き合戦、そしてネット通販の隆盛と、家電量販店を取り巻く環境が苛酷さを増す中、なぜ利益を拡大することができたのでしょうか。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』ではその秘密を探るとともに、ヤマダ電機がこの先すべきことについての考察もなされています。

家電量販店最大手の利益拡大

家電量販店最大手、ヤマダ電機が発表した、16年3月期の連結決算に驚いた。売上高は1兆6,127億円で、前期比3.1%減だったものの、営業利益は同2.9倍増の581億円、最終利益にいたっては、なんと、同約3.3倍の303億円と、大幅な増益」になったとのこと。

驚いた理由の一つは、よくこのメルマガでも書いているが、私の頭の中で、「家電量販店は安売り中心。利益も出なくなっているのでは?」という固定観念があったからだ。

さらに、ネット通販がどんどん安売りをしかけてくる。家電量販店の店頭でテレビやエアコンを手にとり、ネットで調べて、そのなかで最安値のサイトで購入する、という消費者が増えている。いわゆる、リアル店舗のショールーム化もあった。家電量販店にとっては逆風が吹いている、という印象が強かったのだ。

なぜヤマダ電機は利益を改善できたのか?

売上は減っているが営業利益が増えている、というのが、今回の決算の大まかな内容になる。この理由を、財務会計の視点ではなく、「マーケターの視点」から見てみたい。

利益の計算式は、売上 マイナス 費用。つまり、利益を上げるには、

  1. 売上を上げるか
  2. 費用を減らすか

のどちらかになる(もちろん、経営者はどちらも目指すべきだが)。今回のヤマダ電機の決算に関しては、コストを大きく削減している、ということがある。

まずは、2015年から不採算店舗の改革を、かなり大胆に行ってきた。新業態として始めた「LABIアメニティー&TAX FREE新橋銀座口店」を、1年足らずで閉店したなど、50店舗にも上るとのこと(東洋経済ONLINEより)。

ヤマダ電機の地域戦略といえば、「3,000平方m」以上の「大型郊外店」が中心だった。しかし、冒頭で書いたように、競争も激しくなってきての、昨年の集中と選択の結果での「撤退」のようだ。

コスト削減だけでいいのか?

では、利益を改善するためにやたらコストを削減すればいいのか? というと、もちろんそうではない。売上が上がらない店舗を閉めるだけでは、当然ながら先細りになっていくばかりだ。

ヤマダ電機は、ここのところ「スマートハウス」という、省エネ住宅に力を入れている。リフォームに関するショールームを併設する店舗を、2016年には、昨年の3倍の60店舗までに増やすという(日本経済新聞より)。

私の自宅近くの店舗にも、大きなスペースをとって展開しているのだが、ここで、お客様のリフォームの悩みを聞き取り、毎月の光熱費を押さえるにはどうしたらよいか、という相談に乗ったりすることができる。

今、伸びているリフォーム市場に「自社の強み」である、家電販売を絡めた、新しいビジネスモデル、ができるのだ。たとえば、HISと組んでの電力小売り「ヤマダのでんき」も、ショールームで説明、販売できるだろうし、この場所で、スマート家電も販売していくことができるのだ。

ヤマダ電機の特徴は郊外の大型店。都心の駅前にある店舗に比べると、高齢者や家族連れが多いので、リフォーム需要を取り込むには最適。さらに、ネット通販にはできない、「対面での相談・商談」ができること。そしてなにより、家電品という「モノ」を売るのではなく、スマートハウスによるワクワクする生活というコトを売ることができる。

自社の強みを活かした「顧客価値」が提供できれば、値引き合戦という「消耗戦から脱却できる。

ヤマダ電機がすべきこと

ここで重要なことは、従業員の方のお客様への対応。これから売るのは「お客様の生活」という、目に見えないものになる。今までは、家電品という目に見えるものを販売してきたノウハウとは、全く異なるお客様ニーズを引き出さねばならない。

ヤマダ電機に限らず、大型量販店に行くと、店員が店内に見あたらず、万が一いたとしてもメーカーの方ばかり。何を買おうかと迷っていたり、質問をしたい時に、店員さんを探すのがひと苦労なのだ。

スマートハウスを買いに来る人は、家電品を買う人と違い、何を買いたいかが、自分ではわかっていない。そんな時に「聞かれたことだけをこたえる」という姿勢でいたとしたら、私ならその場で帰ってしまうだろう。

本来、リフォーム需要にこたえ、スマートハウスを売るときに、お客様にコミュニケーションしなければならないのは、「お客様が今は知らないけれど、教えてくれたらうれしいこと」いわば、潜在的なニーズなのだ。

この、心の底にあるニーズを引出していく、「聞き取り力こそがこれから求められる力である。

経営者が学ぶべき点

いずれにしても、このヤマダ電機の取り組みは、新しいビジネスモデルとしても、とても楽しみである。

私たち中小企業の経営においても学ぶべき点は多い。

・選択と集中で、不要なことを「断舎利
・「スピード」持って、引くときの決断をすること
・「お客様目線」で何ができるかを、新規事業立ち上げの時は考える

という点が、多様化の現在では必要である。

これからヤマダ電機が、リフォーム需要の増加の中で、スマートハウスやさらにその先にある、スマート家電やシステム、そして電力を、どのように販売していくのかが、ますます楽しみである。

image by: Wikimedia Commons

 

理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』より一部抜粋

著者/理央 周(めぐる)
あのヒット商品はなぜ「ヒット」したのか?あのレストランの予約は、なぜいつも取れないのか?世の中で「売れているモノや人気者」はなぜヒットするのでしょうか?毎号実際の店舗や広告を取り上げ、その背景には、どんな「仕掛け」と「思考の枠組み」があるのかを、MBAのフレームワークとマーケティングの理論を使って解説していきます。1.「中小企業経営者・個人事業主」が売り上げを上げる 2.「広告マン・士業」クライアントを説得する 3.「営業マン」が売れない病から脱するためのメルマガです。
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