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やればできる。死に体の日本マクドナルドを黒字化させた「鬼」改革

やればできる。死に体の日本マクドナルドを黒字化させた「鬼」改革

度重なる不祥事で一時は「再起不能」とまで囁かれたマクドナルドですが、2016年第1四半期の営業損益でが1億5,000万円を超える黒字となりました。多くのエコノミストたちが悲観的な見立てをする中で見せた復活の兆し。その勝因はどこにあるのでしょうか。メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』では、マクドナルドの戦略を読み解いています。

日本マクドナルドの黒字転換から中小企業が学ぶべきこと

日本マクドナルドホールディングスは、5月11日に2016年1-3月期(第1四半期)の連結営業損益が1億5,100万円の黒字となった。前年同期は、99億6,200万円の赤字で、営業損益ベースでは実に7四半期ぶりの黒字とのこと。いっとき、期限切れ鶏肉問題や異物混入問題などで落ち込んでからの黒字転換を受け、様々なメディアで、「マクドナルド復活か!」との文字が躍っている。営業損益が黒字化する、ということは、「売り上げが上がる」か「コストが下がる」またはその両方によって成立するため、売り上げ増とコスト削減の両面から考えてみる。

まず、コスト削減に関しては、不採算店約130店舗の閉店を実施したとのこと。外資系企業らしく「短期的に利益を改善する一手を打った。もう一点は既存店の活性化のために店舗改装を行ったという(以上ロイターより)。これは逆に、優良店舗をさらに押し上げていこうとする「中長期的な視点」であり、マーケティング的な視点から見ると一種の投資と見える。売上高の方は、平成28年度1-3月期で、対前年比19億円23.0%の増加。新しい試みが功を奏しているように見受けられる。

マクドナルドの新しいマーケティング施策

まずは、新商品の導入。「クラブハウスバーガー」や「ロコモコバーガー」といった、これまでの同社の商品よりも、比較的「単価の高い期間限定」メニューが人気だったとのこと。

客数は7.0%増で5カ月連続、客単価は13.3%増で6カ月連続で、それぞれ前年を上回った(Sankei Bizより)。特に「Burger Love」シリーズの第3弾として、昨年人気だった「ロコモコバーガー」を期間限定で販売したのが好調だったようだ。

もう一点は、話題を醸成するキャンペーンの実施。まずは、「名前募集バーガー」というユニークなキャンペーンが目を引いた。北海道の食材を使った、「北海道産ほくほくポテトとチェダーチーズに焦がし醤油風味の特製オニオンソースが効いたジューシービーフバーガー」という商品のネーミングがあまりに長いため、「日本マクドナルド史上初」の名称募集を行ったところ、応募総数はなんと500万件を超えた。グランプリ受賞者には、バーガー10年分に相当する142万3,500円がプレゼントされる、というのも話題になっていた。

さらに話題を提供するキャンペーンといえば、先日発表された「裏メニュー」。3種類の具材を自由に選び、定番のバーガーメニューに加えられるサービス。これは、もはやファストフードの域を超える、まるでいきつけの和食屋さんで、自分だけの「まかないメニュー」を特別に作ってもらえるような感覚だ。インスタグラムやツイッターなどでの投稿で、クチコミによる拡散につながりそうなとても面白い企画である。

中小企業が学ぶこと

ここで注目したいのが、「基本戦略の転換」である。これまで日本マクドナルドは「100円バーガー」など価格訴求を中心にしてきた。しかし、今回は新商品導入と活性化、そして話題を作っていくプロモーションの実施という、「低価格路線ではない戦略で勝負をした点にある。どうしても、すぐに結果を出そうと値引きや値下げをしてしまう。価格での勝負は、営業利益を圧迫し、ブランドイメージの悪化にもつながりかねない。

このように、期間限定での新商品の発売や、名前募集といったお客様を巻き込むキャンペーンで注目を集めることで、売上増につなげたことを、我々中小企業も参考にすべきである。

そうはいうものの、ファストフード業界の競争が厳しいのは変わらない。ウエンディーズ・ジャパンがサントリーフーズから6月末に買収する、ファーストキッチンとのコラボ店「ファーストキッチン ウエンディーズ」では、双方の看板商品のハンバーガーもサンドイッチも食べることができる。外苑前と恵比寿にできた、「シェイクシャック」のような、やや高級なファストフードハンバーガー店も、すでに人気が出始めている。他の業界と同じく、既存のカテゴリーのハンバーガーどうしの直接的な競争だけでなく、ジャンルを超えた競争になっている。

これはもちろん、お客様の趣味嗜好が多様になっていることによって、選択肢が増えていることよる。企業側としては、市場に柔軟に対応しなければならない。そのためには、お客様の立場に立ち、お客様の目線で物事を考えることに尽きる。

お客様というのは、自分が欲しいものを知らない。別な言い方をすると、お客様が今は知らないけれど、教えてあげたら嬉しい「潜在的なニーズを発見できるかどうかがカギになる。

マクドナルドでは今回、新商品とキャンペーンで「話題」ができた。しかしこれは瞬間的なことかもしれない。あとは、お客様が長くマクドナルドを好きになるかどうかだ。この点を、これからも期待して、見ていきたい。

image by: Takashi Images / Shutterstock.com

 

理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』より一部抜粋

著者/理央 周(めぐる)
あのヒット商品はなぜ「ヒット」したのか?あのレストランの予約は、なぜいつも取れないのか?世の中で「売れているモノや人気者」はなぜヒットするのでしょうか?毎号実際の店舗や広告を取り上げ、その背景には、どんな「仕掛け」と「思考の枠組み」があるのかを、MBAのフレームワークとマーケティングの理論を使って解説していきます。1.「中小企業経営者・個人事業主」が売り上げを上げる 2.「広告マン・士業」クライアントを説得する 3.「営業マン」が売れない病から脱するためのメルマガです。
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