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グーグルは人間になりたいのか? こんなにヤバい最新「人工知能」

世界的IT企業のグーグルは、現在、人工知能(AI)の開発に巨額の投資をおこなっています。2014年には、人工知能開発分野では先端をゆくDeepMind社を買収し、Google DeepMindとして、巨額な投資費用をつぎ込んでいます。同社が開発したコンピューター囲碁プログラム「AlphaGo」が、今年3月に行われたプロ棋士イ・セドル氏(九段)と対戦し、4勝1敗でプロを打ち負かしたことが話題になったばかり。この他にも様々な人工知能プロジェクトを進めているようですが、グーグルの人工知能は「人間らしさ」を追求したものであるようです。グーグルの人工知能事情をまとめて紹介します。

人工知能がアートを創作することは可能だった

人工知能(AI)はアートを生み出せるのか」—。

この壮大な疑問を証明するためにグーグルが6月より開始したのが新プロジェクト「Magenta(マジェンタ)」です。

先月5月19~22日に米国ノースカロライナ州ダーラムで開催された「Moogfest」という4日間のイベントで、グーグルはこの新プロジェクトの内容と成果を発表しました。

QUARTZによると、人工知能が、音楽、アート、ビデオなどのオリジナル作品を創り出す訓練ができるか挑戦するために、グーグルが開発したTensorFlowと呼ばれる機械学習エンジン」が使用されるとのこと。

人工知能なんだからオリジナルの曲なんて簡単につくれちゃうんじゃない?と思う人もいるかもしれませんが、これはかなり高度な挑戦とのことです。

どんなに先を行っている人工知能システムでも、アーティストやミュージシャンのスタイルを真似することには苦労するそうですし、まして新しいアイデアを人工知能が考え出すのは困難を極めるとのこと。

しかし、先日「Magenta」のグーグル・ブレーンチームが、人間の手をかりずに初めてコンピューターが作ったという曲を発表しました。

コンピューターが作ったメロディー、いかがですか? これを聞いたユーザーからも様々な反応が。

「ジャスティン・ビーバーよりもマシだね!」

「とってもクール!」

「何万通りもありそうな曲」

「すごくいいってわけじゃないけど、自分がやるより出来がいい」

「まだ全然ダメだけどこれからって感じだな」

MagentaのツールもオープンソースとしてGitHubにて利用可能になります。

数ヶ月後には、もっと複雑なメロディーラインを作り出すのでしょうか。

人間に残された最後の聖域「芸術」にまで踏み入れたグーグル。

人工知能で詩まで作っちゃったグーグル

人工知能による作曲について前述しましたが、グーグルのAIは「」も作ることに成功しています。

QUARTZによると、グーグルの研究チーム「Google Brain」は詩を作らせるために、3000冊近くのロマンス小説1500冊のファンタジー小説など、総計1万1千冊以上の本を読み込ませたそうです。

それで生み出されたのがこれです。

there is no one else in the world.(この世界には誰もいない)

there is no one else in sight.(視界には誰もいない)

they were the only ones who mattered.(彼らだけが私にとって重要なものだ)

they were the only ones left.(彼らだけが残った)

he had to be with me.(彼は私と一緒にいなければいけなかった)

she had to be with him.(彼女は彼と一緒にいなければならなかった)

i had to do this. (私はこれをやらなければいけなかった)

i wanted to kill him.(彼を殺してやりたいと思った)

i started to cry.(私は泣き始めた)

i turned to him.(私は彼の方を向いた)

なんだかとてもシリアスで、暗いですね。

i want to talk to you.”(あなたと話したい)

“i want to be with you.”(あなたと一緒にいたい)

“i don’t want to be with you.”(あなたとは一緒にいたくない)

i don’t want to be with you. (あなたとは一緒にいたくない)

she didn’t want to be with him.(彼女は彼と一緒にいたくなかった)

こちらは意味深。ロマンスな感じが漂います。

he was silent for a long moment.(彼は長い間黙っていた)

he was silent for a moment. (少しの間黙っていた)

it was quiet for a moment. (少しの間、そこは静かだった)

it was dark and cold. (暗くて冷たかった)

there was a pause. (一瞬の間があった)

it was my turn. (私の番だった)

これはなんとなく情景が浮かぶような気がする文章ですね。

一見するとミステリアスで奇妙な印象も受けますが、微妙なニュアンスをも表現し、人間の感情に訴えているようにも感じます。

もっと精度が上がれば、近い将来には「人工知能による詩集」を楽しめる日がやってくるかもしれませんね。

強化学習を通じて、人工知能が判断してルールを推測する「DQN」

コンピューター囲碁プログラム「AlphaGo」とはまた別に、Google DeepMindが開発に力を入れているのが、Deep Q-Network(DQN)

このDQNは「強化学習」というとても人間的な学習手法と「ディープラーニング(深層学習)」を組み合わせた人工知能です。

この強化学習とは、一連の行動を通じて報酬が最も多く得られるような方策を学習します。

そして、最近発表したのが、「アリ・サッカー」というバーチャルゲーム。

DQNがルールを判断して、ゲームをプレイします。

それがこちら。

アリ、サッカーボール、赤いゴールのあるコートという状況が置かれた中で、DQNが何をすべきかを考えて、ルールを推測しながら、プレイしているというのです。

人工知能が学習して、ゲームをプレイするとは、かなり高度ですね。

人工知能が見たものを考えながら絵に描く「Deep Dream」

以前にも話題にのぼりましたが、「Deep Dream」はご存知でしょうか?

これは簡単に言うと、人工知能に画像認識させ、今まで学習した膨大な画像を参考に、何が見えたか描かせる”というものです。

「画像処理アルゴリズム」の利用例として、オープンソースのプログラムコードとして公開されています。

なかなかエキセントリックで悪夢のような画像を生成します。

奇妙で独特なアート。

一度は試したくなりますね。 

グーグル製のメッセンジャーアプリ「Allo」が登場

2016年5月、グーグルは新しい形のメッセンジャーアプリ「ALLO」を発表

いままでにもスカイプやフェイスブックからメッセンジャーアプリが発表されていましたが、この「Allo」の最大の特徴は人工知能「Google Assistant」が組み込まれているところ。

具体的には自動応対機能「Smart Reply」が利用できます。チャットのコンテンツを読み込んで、相手の返信に最適なメッセージやスタンプなどの候補が出てくるというもの。

返答に合うものがあれば、それを選んで押せば完了。タイピング入力なしでも、簡単に返信できてしまいます。

image by: Google Blog

また、友人とのチャット中に、「今日のランチ、イタリアンはどうかな?」と入力すると、AIが突然会話に割り込み、最寄りのイタリアンレストランの一覧をサジェスチョンしてくれたりもします。

人間の心を読み取って、変わりにメッセージを作成してくれるとは!

人間の心を読む検索システム「ランクブレイン」

グーグルの検索にも新アルゴリズムランクブレイン(RankBrain)というAIシステムが使用されています。

これは自然言語のクエリを理解したり、検索結果をランク付けしたりするためのものですが、ユーザーの検索を学習し、読み解いていく優れた検索システムなのです。

Bloombergによれば、このランクブレインは、これまでグーグルののシステムが見たこともないクエリの15%を1日に処理しているそうです。この処理を毎日行うことで、AIはユーザーが本当は何を求めているのかを理解することを学習します。つまりは、人間の心を読むことが得意になるのです。

日常をサポートするAIスピーカー端末「グーグルホーム」

このように人間の心を読むことを人工知能に学習させてグーグル。

今度は日常をサポートする実用的な人工知能を作り出しました。

それがAIスピーカー端末「グーグルホーム」です。


これは、人間が話しかける内容を理解して、それに対応するスピーカー型の端末
だというのです。

レストランの予約、飛行機のチケットの購入、音楽再生、家電の操作なども可能だそうです。

グーグル、人工知能をストップできる「非常ボタン」開発

Business Insiderによると、人工知能開発をおこなうDeepMind社が、オックスフォード大学の科学者たちとの共同研究で、人工知能が人間によるコントロールを拒否、あるいは人間を害することを止めることのできる「非常ボタン(Big Red Button)」を開発したと発表しました(この研究結果の詳しい報告は、Safely Interruptible AgentsとしてPDFでまとめられています)。

これを開発した研究者たちは、人工知能が“いつも適切に動作するとは限らない”と話しています。

「リアルタイムで人間による監視の下、そのような人工知能が作動すれば、人間のオペレーターが、人工知能の有害な行動を阻止するための非常ボタンが必要だ。同じく、人工知能や環境にとっても有害な行動を阻止し、人工知能をより安全な状況に導く」(Safely Interruptible Agents

すでに、人間のオペレーターがいつでも安全に人工知能を止めることができるフレームワークはできあがっているとのこと。

人工知能の精度が上がるにつれて、少なからずとも、私たち人間は恐怖感を抱くようになりましたが、この「非常ボタン」が開発されたことで、少しは安心できますね。

以上、最新の人工知能事情を紹介しました。

グーグルがいかに「人間らしい」人工知能の開発に力を入れているかがわかりました。

半年後には、またさらに人々をアッと驚かせるような人工知能を生み出すに違いありません。

Image by: lightpoet / Shutterstock.com

Source by: QUARTZ , Business Insider , Google公式ブログ , engadget

文/MAG2 NEWS編集部

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