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特別対談 小林よしのり×ケント・ギルバート「日本よ、自分の領土は自分で守れ」

『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』などを代表作に持つ漫画家の小林よしのりさん。特に時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」では、漫画を通して今の社会に問題提起を続けています。そして、米国カリフォルニア州弁護士でありながら、日本のマスメディアでもコメンテーターとして人気のケント・ギルバートさん。ともに社会問題、政治問題に対して独自の意見を述べ続けてきたお二人が、日本の安全保障について熱く語り合うスペシャルトーク。お二人の有料メルマガ『小林よしのりライジング』『ケント・ギルバートの「引用・転載・拡散禁止!」』をご購読いただいている読者限定で公開する対談を、今回は特別にほんの一部だけお見せいたします。揃って出演したテレビ朝日の政治討論番組「朝まで生テレビ」で意気投合したというお二人。本対談の中で、「自分の国を守る」という、主権国家として当然のことを米国に任せきりの日本を痛烈に批判し、そして……。

自分の国土の領空も自由にとべないことを恥ずかしいとさえ思わない日本人

まぐまぐ:小林さんの最新著『ゴーマニズム宣言SPECIAL「民主主義という病い」』に描かれていましたが、小林さんとケントさんは『朝まで生テレビ』で会話する機会があって、そこで意気投合されたそうですね。

小林:あの『朝生』のとき、わしと同じ列に座っていた左翼の方々は、参院選では安保法制を廃止しようという方向に行ってしまう。そうなると、これは後退なんですね。民進党なんか護憲派になっちゃったでしょ。あれはもう退行現象ですよ。すっかりもう昔の社会党とかの勢力と一緒になってしまったから、これはもう全然ダメってことになるんですね。そのいっぽうでケントさんのいる保守陣営は、日米安保だけが最大限大切ってことになってて、自主防衛する気がないわけです。そこがわしとは全く合わないんです。わしは自主防衛が目標ですから。そうでなければ国家にならないと思ってますから、そもそも。だから……。

ケント独立国家じゃないんですよね。

小林:そう、独立国家じゃないんですよ。だから『朝生』終了後、楽屋に戻ってきたときに、ケントさんが、わしに対してリップサービスだったのかも知らんが……

ケント:(笑)。

小林:ケントさんが「この日本に米軍基地があること自体がおかしいんですよ」って言ったんですよ。それを聞いて「お、すごい」って思ったわけです、わしは。基本そうなんですよ。独立国家だとしたら、外国の基地がこの領土にあること自体が本来おかしい

ケント:おかしいですよね。それ恥ずかしいと思わない日本人がおかしい

小林:そう。だからこういう素晴らしい意見をね、ケントさんにはもういくらでも言ってもらいたいと(笑)。それを言わなきゃ、日本人はそれが恥ずかしいという感覚が無くなって来てるんですよ。この領土に米軍基地があって、制空権も握られてるようなものでね。

ケント:一番おいしいところをね、東京の真上とかね

小林:そうそう。だからそこをわざわざ日本の旅客機はぐるっと回ってね。

ケント:館山のほうを回っていって、東京に入ってくるんですよね。

小林:そうなんですよ。

ケント10分ぐらい余計にかかるんですよ、おかげさまで。

小林自分の国土の領空を飛べないなんて、こんな馬鹿な国はないですよ。それこそ第1次イラク戦争の後に、イラクの領空を完全にアメリカが制圧しちゃったでしょ。あのときと同じなんですよ、全く。非常に恥ずかしいことなんですよ。これは東京だけじゃなくて沖縄のほうも……。

ケント沖縄も那覇空港に入るためには、到着する前に早々と3000メートルに落とすんですよ。その上は全部アメリカの領空だから。

小林:そう。

ケント:観光客にとっては、島がよく見えるんでいいんでしょうけど(笑)。だけど、あんなに低くなるのは、普通ないよね。ただ、そうしないと嘉手納基地の邪魔になるの。嘉手納も、普天間も……。

小林そんな状態がおかしいっていう感覚が、もうなくなってるんですよ。それは左も右も同じで、これは非常に危ないと。トランプみたいなやつが現れたら、もう一巻の終わりですよね。だって米軍に依存してんのは、右も左もどっちもだから、そもそもが。

ケント:そうですね。

小林:そう考えると、わしにとっては右も左も同じ人間たちに見えるんですよ。要するに、米軍に依存して自分たちで国を守る気がない人間たちだから。もしトランプが大統領になって、もう米軍基地撤退だって言ったら、全員首つって死ぬしかないでしょ、そうなると。発狂しますよ、みんな。だから、わしは「いっそのことトランプが大統領になったほうがいいな」と思っちゃうぐらいのものですよ(笑)。

ケント:皆さんの考えをちょっと目覚めさせる効果というか、そういうのは出てますね。

小林:そうなんですよ。だから、皆うろたえているでしょ。保守の側もうろたえているんですよ。もしトランプになったらどうなるか、みたいなことでハラハラしているわけですよね。でもわしから見れば「そんなの最初から分かっていることじゃん」ってね。

ケント:もう、全然分かってることですよね。

小林:つまり、アメリカ任せになっちゃってるわけです。「なんでアメリカがどう変わるかで、日本がウロウロしなきゃいけないの」っていうことなんですよ。

ケント:アメリカの今回の大統領選挙について、日本がこんなに異常な興味を持ってること自体も問題ですしね。それを待たなければいけないと思ってるっていうことは、やっぱりどっかで“恐縮してる”気持ちは、多少は残ってんのかなっていう気もしないでもないんですね。

小林:そうなんですよ。『朝生』でケントさんが言った”恐縮してる”って言葉がまさにそのまんまで、聞いておかしかったんだけど(笑)。全くそこはおかしいわけで、国家として成立してないんですよ。主権が要らないって言ってんだから。日本の国家主権を全部アメリカに任せるっていう状態になってしまってるから、これに慣れてしまうこと自体が恐ろしいんですよ。やっぱり自分の命で守るしかないんですよ、日本の領土は。

まぐまぐ:日本のそういうおかしな状態というのは、そもそもどうして生まれたんでしょうか。

ケント:それはアメリカが、GHQがそうさせたんですよ。アメリカが書いた憲法ですから。どっちかっていうと、マッカーサーの独断であの第9条が入ったわけですよ。ただ、アメリカ側の人たちは誰も恐らく、占領軍が引き上げてからもあの憲法を何十年も続けるとは、夢にも思ってなかったと思いますね。だってあり得ない話だからね。

小林:もう依存心が完全に出来上がってしまって……。

ケント:その一つの理由としては、第二次世界大戦の後に冷戦がすぐ始まっちゃったというのがあって。そこでアメリカ側としては、とにかく日本という国を抑えておかないといけないんで、自分たちでやるしかないね……ということだったんだと、たぶん思うんですよね。地政学的に考えて日本っていうのは、アメリカにとっての緩衝地帯なんですよ、中国との間のね。

小林:そうですね。

ケント:アメリカにとって日本が必要だったものですから、取りあえず占領軍は帰ったけれども安保条約で抑え続けるっていう形を取ったんだと思います。でも、だんだんと「これおかしいわ」っていうのがアメリカ側にも出てきたと思うんですよね。いつまでもアメリカが守ってやんないといけないのかって。トランプなんか、もろにそれを言ってしまっている。でも彼は、日本に基地があるのはアジア全体の安定を図るためということが、分ってないんですよね。勝手にアメリカが片務的な義務で守ってやってるだけの話だと、彼は思ってるようで、こんな勉強不足ってあるかいなっていう感じでね。

小林自国の利益っていうものに実は合致しているってことが、トランプはまだ分かってないと。

ケント:分かってないですよね。

小林:ただ損だけをしてるというふうに思ってるわけ。

ケント:だから彼は、割合・費用のことを言うわけですよ。で、「日本が全額払え」って言うわけでしょ。でも予算の割合をみてみると、日本の国土そのものを守るのにかかる費用に見合う金額を、日本は出しているんじゃないかなと思うんですけどね。まぁ、値段を付けるような話じゃないですけどね、『世界まるごとHOWマッチ』じゃないんだからさ(笑)。でも、大体そんな割合じゃないのかなって気がしますね。ですから、もし日本の憲法が改正されたら基地はなくなるのかっていうと、整理はされるでしょうけど無くなりはしないでしょうね。米軍基地は自衛隊の基地になって、そこにアメリカが来て、アジア全体のことを見るためにまだ居座るっていうか、居させていただくっていうか。

小林:だから、それだといいわけですよ。

ケントそれだったらいいんですよね。

小林:基本的に自衛隊の基地で、日本に主権があるということを前提にすればね。そして、そこから日米安保というものをもう一遍結び直す……とかっていうやり方だったら、いいんですよ。

ケント:僕は日米安保に、もっといろんな国を入れたほうがいいと思うんですよ。例えばオーストラリア……最近ちょっと変な思想が入ってきたんでアレだけど。あとフィリピン、ベトナム、マレーシア、シンガポール、できればインド。それでタイはオブザーバーにして、あと日本。……韓国には招待状だけ出しておいて、参加するかどうかはそっちの勝手にするで、放っておいて(笑)。これをNATOではなくて“APTO”っていうのかな、“アジアパシフィック条約機構”といったものを作っといて、その中でのアメリカの役割を果たすために日本の基地に展開すると。

小林:いいですね、そのぐらいだったら。

ケントイギリスにもドイツにもイタリアにも、アメリカの基地があるわけだから。それはNATOの仕事をするためでしょ。だから日本にも、そういうのがあってもいいんですよ。日本の主権を侵害しないからね。

小林:そう。それは全然構わないんですよ。

ケント:そういうところに持っていってもらいたいんで、最終的にはね。

小林:そうですね。

取材・文/まぐまぐ編集部 撮影/南山浩太朗

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2014年からブログや新聞、雑誌等で政治問題などの意見を発信するようになりました。思い切って本音や皮肉、冗談も書いてみたら、とても反応が良かったので、最近はすっかり楽しんでいます。しかし、テレビのコメンテーターをやってた時代に、私は日本のタブーを教わりました。不特定多数に向けた媒体で書ける話題には限界があります。有料メルマガであれば、そのような話題にも踏み込めます。読者の方からもテーマを募って、さらに本音の私をぶつけて行けたら良いなと考えています。

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