ところで当のフィリピンですが、仲裁裁判所の判決を無視して二国間協議に応じるよう求めていた中国側の提案を拒否しました。それはそうでしょう。勝った側がなぜ譲歩しなくてはならないのでしょうか。本来、譲歩するのは負けた側のはずです。
● フィリピン、中国側の条件付き対話要請を拒否 南シナ海問題で
中国は仲裁裁判所の裁定では勝てないと思っていたため、すでに事前から「判決書はただの紙屑」「アメリカのすべての艦隊が南シナ海に押し寄せても、中国はまったく怖くない」などと豪語していました。それはまるで1900年の義和団の乱(北清事変)当時、西太后が「万国に宣戦布告」したような唯我独尊の中華思想の現れでもありました。
しかし強硬姿勢の一方では、「インドも中国を支持している」などと国民に嘘を伝えていました。そのためインド政府は「事実とまったく違う」とわざわざ否定せざるを得ませんでした。また、台湾にも共闘を呼びかけましたが、これも拒否されました。
フィリピンのドゥテルテ大統領はベニグノ・アキノ前大統領よりも中国に融和的だと言われており、仲裁裁判所の判決でフィリピン側が勝利しても、中国と天然資源を共有する用意があると発言していました。
● 仲裁裁判所の南シナ海判決尊重を フィリピンが中国に呼びかけ
そうした態度を見て、中国側は仲裁裁判所の判決を棚上げするかわりに経済的な見返りを与えれば、フィリピンもなびくと思ったのでしょう。だから外野である日米は黙っていろ、あくまで当事者間の話し合いが大切だと主張していました。これは鳩山氏の発言ともぴったり重なります。
ところがその思惑は見事に外れてしまいました。フィリピンもあくまで仲裁裁判所の判決を尊重することを求めています。もちろん日米も同じ姿勢です。中国は今後もアメとムチでフィリピンに判決棚上げを誘いかけてくるでしょう。
しかし、フィリピンの態度が決まった以上、鳩山氏も中国に対して、友愛の精神をもって判決を受け入れるよう進言するべきです。もっとも、そうなると中国にとって鳩山氏の利用価値がなくなるため、ポイ捨てされる可能性がありますが。
『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋
著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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